15.女友達とスイーツ 2/2

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スイーツパラダイスに行ったことがない。スイーツパラダイスは軽食もあるそうだが、ここは完全にスイーツしかなかった。経営方針に口が出せる身なら、軽食の存在をおすだろう。好き嫌いも問題ではなく、口直しにちょうどいい点から。
そもそも好きでないものは興味も関心も向かないせいか、スイーツを見ても名前すら分からなかった。ショートケーキ、レアチーズケーキ、モンブランに、これはタルトだろうか。あまり自信がないので口には出さなかった。シュークリーム一個だけでよい。

「そう言えば、ワンちゃん元気?」
「あなた、その歳でソレはないでしょ。私より年上じゃない。」
「おぉ、この容姿だから歳を間違われるけど、初めて分かってもらえた。」
「中身が原因の大半を占めてるわよ、絶対。
あの犬なら元気よ。今は、うちの番犬。それより気になるんだけど、あなた、つけられてない?」

軍人ではないが、どうやらマーティルダは監視されている様子が窺えた。しかも好意的ではない相手から。
それを聞いた彼女は溜め息をついた。慣れたことのようだ。そして事情を話してくれた。
ごく一般的という言い方しかないが、そこの貴族に生まれた彼女は傍から見ると貴族らしからぬ行動が多かった。宝石、芸術、ダンスに目を向けず、庭で泥遊びをして来るような彼女に、気が狂ってしまったのは母だった。その後、母は出来そこないと娘を称して自殺。父は病気で余命わずかな身。俗にいう貧乏貴族だろうと一族の女当主になる彼女を快く思わない親戚が多いようで、嫌がらせや無理やりに近い求婚の迫られたりと苦労しているようだ。

「私は好きな人と結婚したいの!!カサンドラだってそうでしょ?好きでもない人なんて嫌。薔薇なんて持ってきてくれたら最高」
「夢見ちゃんだな。薔薇なんか食べれないじゃない。このご時世で好きな人と結婚なんて夢のまた夢。男の方がロマンチストが多いんだから、女は現実主義でいかないと」
「でも、夢はタダだからいくら見てもいいのよ。恋、したことあるならわかるでしょ?」
「あいにく、私は恋には余計に現実主義でね。まっすぐ突き進む人がうらやましいわ。それに、あくまで私は被保護者だから。」
「よくわかんないけど、つまんないよ。はい、苺あげる」

ショートケーキの苺を口に入れられながら、カサンドラは内心で笑った。
この小娘、何が出来そこないだ。自分が監視中の連中から被害に遭わないために敢えて話しかけた上に、スイーツの食べ放題に連れて来たんだ。やり手じゃないか。
同時に見抜けなかった貴族の下っ端連中に呆れかえった。マーティルダを敵に回すと、正当防衛と言わんばかりにやり返される日が来るだろう。根が純粋だからこそ友人関係なら良いものが築けそうだ。
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