女好きの葬式

雲がザアザアという音を集めていた。それはついさっきまでの話。
今では集められた音より、部屋の方がはるかに五月蝿い。不慮の事故により、リーダーの許可なしに無断で死んだククールの葬式真っ盛りだ。シリアスに悲しみに包まれればいいものを、死んでなお問題を起こすククールだった。恋人のユウコはあることに追われていた。ククールの借金に。
まさかあれだけ借金をしていたとは、エイトですら分からなかった。しかも皆バニーガール。ユウコが怒らないのが不思議なぐらいに光景だけで腹が立つ。

「なんで借金返す前に死んだのよ」
「ククールに貸した1000ゴールドを返してよ!!」
「あーもう、皆さん。
死体に叫んだらいかがですか」
「え、ユウコちゃん、酷い」

死体になってすら怒鳴られるククール。生きて死ぬまで怒鳴られ続け、恋人からの扱いまで酷い。エイトは今だけ同情して手を合わせた。今だけ。
こうして死体になってすら怒鳴られるククールを見るはめになる。ゼシカは始めては泣いていたのだが、今では同情を通り越して憐れみに近い目をしている。ヤンガスなんか初めから寝ている。ククールが死んだことはどうでもよかったようだ。
ユウコは死体を睨み付け、舌打ちをした。これが悲しみを紛らわせるためなのか、本気でククールをウザがっているのか、分からない。

「はぁ、私にお金を落として死になさいよ」
「ちょっと、ユウコちゃん。
本音が丸出し過ぎて悲しいわ。」

現在法皇ニノはこいつの葬式が必要か、不思議になる。こいつの葬式するぐらいなら、賄賂を渡してくるやつらの葬式をした方がマシだ。
皆が騒がしい葬式にいるなか、騒がしい人が五月蝿い扉の開け方をして乱入してきた。しかも、ニノがいるときに入ってはいけない人が。

「メラゾーマ!!」
「あ〜はいはいミラーシールド!!」

エイトがミラーシールドを片手に、ククールの死体の前に立った。弾かれたメラゾーマを、放った本人は華麗に避け、メラゾーマは天井を焼いた。その避け方すら腹が立つ。ククールと言えばお馴染み、マルチェロである。腐女子なら何か別の妄想をしそうだ。ユウコは一番来てはいけない人が来たことに、ククールの死体を、いや棺桶を盾にした。なぜ来たのかまったく分からなかった。

「貴様に借りを返す前に死ぬな!!
ジャハガロスの前で待たせるな!!」
「ジャハガロス……あ、やだ私ったら。
ククールが結婚式の話をしたからジャハガロスとか忘れてた」

ククールとの結婚式相談で、3DSの追加イベントを忘れ去られていた。ユウコは懐かしいなと呟いた。下らないことで忘れ去られたマルチェロは、ゆっくりレイピアを下ろした。代わりに出てきたのは、世界樹の葉。

「……く、ククール。
起きなさいよ、起きなさい!!
私、金寄越せとか言ったけどあなたの身の危険の方が先よ!?
気づけばバニーガールたちいないし!!」
「葬式に持ち出してはいけないものじゃないかな、世界樹の葉。」
「生き返らんか、貴様!!」

ユウコはとりあえずマルチェロの気迫に負けて叫んだ。生き返るなら良いじゃないか、と思うのだが理由はすぐにわかる。世界樹の葉を口に突っ込まれたククール。まず口に入れれば効くのか、分からないのだがそんなククールは咳をして立ち上がった。そしてマルチェロを殴ろうとした。

「兄貴、ひでー
つかニノさーん。マルチェロを捕まえましょうよ……はぁ」
「……く、ククールあんたなにしてるのよ」

ゼシカは嫌な予感がしてククールを睨み付けた。巻き込まれるようにユウコも睨まれた。マルチェロはククールを冷静に睨み付け、胸ぐらを掴み冷ややかに笑みを浮かべる。それを見たエイトは感づいてしまい、槍を持ち出した。二人とも始末する必要があるらしい。

「貴様が死んだと聞いたときに、まさかと思ったのだ。
借金から逃げるには好都合だと……」
「いや……ゼシカ、可愛い顔で睨むなよ。
槍を持ち出すのは、よくないぜエイト……」
「貴様、言い逃れする気か?
罪から私を逃がさなかった借りを、返しに来たんだが」
「それは借りを返しに来たとは言わない!!
だってユウコちゃんと結婚したら借金邪魔だから、死ねばチャラにならないかなって」

ユウコは満面の笑みでキメラの翼を準備した。共犯者だ。マルチェロ、貴様が来たから台無しだよ。と言いたいのだが怖いからやめた。ククールもルーラの準備をした。騙されたゼシカとエイトは、ククールの葬式を実際のものにしようと戦闘体勢に入る。一般人ニノを巻き込む気だ。

「ユウコちゃん、逃げようか。
愛してるぜ、マイハニー」
「ああ借金が付き添ってくるのか」
「「じゃ、バイバーイ、ルーラ!!」」

ルーラは壁を突き破れない。
どうするのか。どこかの誰かの仕業ですでに天井が焼けていた。
マルチェロが共犯者だったのかどうか、それはあなたが考える話。
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