第7話 ガイアの銭湯 1/2
ガイアの町に来た理由は情報収集ということもある。もう一つの理由は、レイナの家の小さな風呂では全員分は不可能だったからだ。家主を優先にしても、湯船の状態は後半になるにつれ良くない。しかも、後半組は時間が日を跨ぐこともある。だから、ガイアの町にある銭湯に来ていた。
厄介な男たち抜きに、ゆっくり湯船に浸かれることができるレイナは、心置き無くのんびりする。おばちゃんたちの噂話も聞けるし一石二鳥だな、と思う。

「あら、レイナちゃん。久しぶりね。
銭湯に来るなんて何年ぶりかしら」
「そんな経ってましたか?」

独り暮らしであまり町にも来なかった彼女は、当然銭湯など風呂の故障でもない限り来ない。意識したことはないので、何年ぶりかなどもっと分からない。
「そういえば『審判者』の連中が、この前ガイアの町に来たのよ」
「え、アイツらが?」
「そうそう。クリスタルルームはどこだ!!って偉そうに。
だから、知らないって言ってやったわ。」

クリスタルを壊しにまわっている奴らは『審判者』のようだ。ガイアの町にも現れたということは、他の町や村にもいるかもしれない。
一方男性陣は、フリオニールが完全にお父さんと化していた。固形石鹸を投げて遊びだしたバッツとジタンを押さえる。その固形石鹸が次にスコールの頭に激突した。そして、スコールは全力で固形石鹸を投げ返す。むしろ、彼は止める側にまわってもらいたい。その固形石鹸を踏んだラグナは、またしても頭から転けた。
楽しそうな五人を見て、湯船に浸かりながらセシルは、自分の子供もそうであればいいなと、思う。実は現在、ローザが妊娠中なのである。出来れば自分の子供にも、これだけ仲良くできる友人が出来たら良いと思っているのだ。そして、ちょっと老けたかな、とは思わないようにした。

「お主ら、騒がしいの」

横に足の悪そうな老人がやって来た。セシルは老人に頭を下げる。仲間のせいだから連帯責任で怒られても仕方がない。

「旅でもしておるのか?」
「はい。」
「ふむ、昔はよく旅をしたものだ。」
「昔は?」
「この体で今、旅ができるとでも?」

怒られた。
カインは、髪を束ねてセシルの横にやって来る。老人に絡まれているところを助ける訳でもなく、黙って座る。
老人らしいと言えばそうなるが、カインは巻き込まれたようだ。驚いたように老人が言う。

「その筋肉、あんた、竜騎士か」
「ああ、そうだが」
「・・・・・・竜騎士の生き残りか?」

それを聞いた二人は、互いに顔を見合わせた。どうやらこの世界の竜騎士は絶滅でもしたらしい。
二人が黙っていると、老人は首を振った。勝手に聞いてはまずいことを聞いた、と解釈していれたようだ。老人は足を手で擦りながら湯船からあがり、二人に頭を下げて去っていった。
筋肉一つで竜騎士と見抜かれるとは、むしろそこに驚きたいのだが。

「竜騎士は絶滅したのか。」
「らしいね。」
「レイナは疑問に感じなかったのか?」
「逆に絶滅した竜騎士が来たから、僕たちが異世界から来た人だとすんなり受け入れてくれたんじゃないのか?」

カインが次の言葉を探しているうちに、バッツに後ろから叩かれた。束ねた髪にいたずらを仕掛けようとでもいうのか。女みたいだ、と言われたカインとセシルは、二人で彼の額に爪を立てておいた。男が女と言われるのは嬉しいものではない。
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