第3話 尻尾のある幽霊騒動 1/4
兜を取られたカインは、自分の兜に果物が入れられたことに悲しんだ。使い道が明らかに違う。果物を入れる袋がなかったために、レイナとセシルが容赦なくカインの兜を奪ったのだ。フリオニールは、自分のマントを貸してやればよかったと思った。
お腹を空かせて帰宅した四人は、疲労で料理を作る気が失せており、果物を丸かじりすることにした。疲れたからと言って、何も食べない方が体に悪い。
丸かじりしながら、四人は今後について話し始めた。彼女が言うには、ここから行けるクリスタルがある二ヶ所は、廃墟らしい。本人がいうには何もないとのこと。ただ、セシルは気になっていたことがある。

「クリスタルはまだその廃墟にあるの?」
「え。あぁ、あるんじゃないか。クリスタルルームを開けられるのは各賢者だけだから。
あくまで人の心に影響されて闇に染まったにすぎない。持ち出されたり、壊されたりはしていないはず。
七賢者がいない今は、クリスタルルームの出入りは自由化しているだろうけど」
「なら、その二ヶ所ならクリスタルが見れる。
ガイアの町でクリスタルが見たいなんて言ったら、怪しまれるけど廃墟なら大丈夫だね」
「どういうことだ、セシル」
「僕たちの世界ではクリスタルは壊されたり、持ち出されたり、したけどこの世界ではそれがない理由が分からないんだ。
利用価値のないクリスタルなのか、それとも闇に堕ちたクリスタル自体が目的なのか」

言われてみれば、クリスタルほどの魔力のある物質を、悪用しようとする連中の話は聞かない。あくまで光のために戦うという奴らばかりだ。
しかし、レイナは話を戻した。

「目的は七賢者を探すこと。
あんたらが、クリスタルに関することを気にする必要はない」

巻き込みたくないからそういうのか。セシルはストレートに言われてしまい、少し落ち込んだようだ。それを見たカインが助け船を出した。

「フッ……各賢者に対応したクリスタルルームということは、最後の七賢者が生きていれば、そのクリスタルルームだけは開かないんじゃないか」
「わざと各地のクリスタルルームに行くわけか。
とはいうが、行きたくないな、ガーデンプレイスランド」

カインの話に納得したレイナは、一人で先に話を進め出した。あくまで七賢者を探す目的は、帰るためにしてもらいたい彼女の心情はわかる。ただ、フリオニールがこの世界のことに首を突っ込みたいらしい。セシルも同意見だった。このまま無事に元の世界に帰れても後味が悪い。自分たちだけ無事というのは罪悪感が沸く。元の世界で自分たちのために、死んだり、傷ついた人には申し訳ないが、放ってしまうのは嫌だ。自己満足にしか過ぎないのだろうが、そうしたかった。
芯だけ残った林檎を置いて、フリオニールが話を先に進める。

「なんで行きたくないんだって?」
「さ、最近、廃墟の一つガーデンプレイスランドで幽霊騒動があったんだ。
廃墟とはいえ、危ないから定期的に見回りがあるんだ。その見回りに行った人たちが、幽霊を見たって騒いでて。
財布を無くて帰ってきてた。
幽霊には尻尾があるというやつもいれば、羊みたいな二足歩行とかいうやつもいて」
「幽霊、怖いんだな」
「こ、怖くない!そんなもの怖くないさ。
盗みができるってことは物体があるはずだし」

そう言いながら小さくなるレイナ。実は内心フリオニールも怖かった。物体があれば退治や撃退ができるが、もし本当に幽霊だったら、どうやって撃退すればいいか分からない。物体のない幽霊にテレポやデジョンは効くのだろうか。
怯える二人を見ながら、セシルとカインは、あることを思い出した。この世界にもあるのだろうか、ピンクの尻尾。
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