愛しい師匠 | ナノ


▼ 03.スパルタ教育

焼肉屋 寿寿苑。
食べ盛りの子供を呆れ顔で見つめる如月がいる。
遠慮を捨てて食べる菊地原と遠慮して食べる歌川。ため息をつくしかない。
これが出水や嵐山なら払いがいがあるというもの。
遠慮されなさすぎもされすぎも腹がたつ。

「菊地原、お前遠慮する気ねぇな?」
「しませんよ、そんなの」
「歌川、もっと食え。菊地原より食え。」
「いや、おれは」

完全に遠慮気味の歌川をみた如月は舌打ちをした。
食べていいのか悪いのか分からなくなりそうだ。
店員を呼び止めた如月の口から出た台詞に二人は固まる。
やることが大きすぎる如月に慣れるには、まだ先らしい。

「上カルビ10人前、あとレバー一人前と白ご飯。」
「・・・・・・太るよ」
「そんなに食べるんですか?」
「はぁ?どーせお前は食うだろ?
それに俺、まだ食ってねぇし」

菊地原と歌川は顔を見合わせて、心の中で突っ込みをいれた。
すでに5人前食べていたはずだが、それでも食べていないと言うのか。
二人して如月の体型確認に入る。
細く筋肉がついた体。背は170はあるだろう。
日頃から運動してないと成り立たない体型だ。
菊地原としては「口がでかいだけじゃないからまだいい」なのだが、歌川からしてみると「羨ましい」の一言。
スポーツしている歌川の体型は男としてかなりいいのだが、自分がいいと思っていないようだ。

「レバーって誰が食べるの?」
「俺?あんたら食わねぇ?」
「いや、いらないです。苦手で」
「くさいから嫌」
「居酒屋なら馬刺食うんだがな」

まだ19歳ではないのか、と聞きたくなる。
風間と同い年のわりには好みがおっさんくさい。
いくらになるのか考えながら、歌川は網に乗っかったカルビを自分の皿に乗せた。
4人で来て予算14000円。この様子だと普通に越していそうだ。
菊地原は気づけばデザートを注文していた。
そうこうしているうちに現役学生が腹を満たした。
しかし、まだ食べ続ける如月。現在20人前越え。米を食べているからいくらかプラスになるだろう。

「食べすぎ」
「あ?あんたらが食ってねぇんだろ?」
「いや、充分食べましたよ」

場の空気で食わされたに等しいのだが、歌川は爽やかに言った。
ジュースを飲みながら菊地原は「やっと帰れる」、と内心で呟いた。

「よし、帰りは走るか」
「え!?食後ですけど!?」
「はあ?食後で緊急任務来たらどうすんだ?
吐かない程度に走るぞ」
「横腹痛くなるよね、普通に」

走り出す歌川と如月に仕方がなく付き合うことにした菊地原。
走りながら思う。
乱暴という噂やきつい面をもつ彼女だが、やっぱりやりたい放題の人かもしれない。
改めて面倒な人だと認識した菊地原がいた。
prev / next

[ back ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -