14th:自分で見つけた答え

あれから落ち着いた時には昼過ぎで、学校に行くと言えばお父様に止められた。

「落ち着いたにしても、1日ぐらいは安静してなさい」

お父様にそう言われたんじゃ仕方ない。とすんなり受け入れる自分になんだか変な気分だったりする。
まあ元気だった希美はそのまま学校に行ったのだが。

「シンジくん、せっかくだから街を一緒に周ってみないかい?こちらに来てからどこに何があるかなどある程度の範囲は知っておいた方がいいだろう?」
「あ、は、はい」

シンジは大人しく音羽の父親について行く。

「あれ、カヲルは?」
「僕は行かないよ」
「ああ、カヲルくんは音羽の側に居て欲しい」
「へ?」

カヲルと音羽の父親はお互い笑みを向けている。
別に嫌な意味ではないのだが、なんというか別の企みを感じるのだが。

「じぃ、車を出してくれ」
「畏まりました旦那様」

パタン。と閉じられる扉は無機質なものだった。
だがそれが合図とでも言うように音羽の中で緊張感が一気に増した。
自覚した途端にこの展開はついて行けない。

「音羽?」
「っ!?」

ドクンと一気に心臓の跳ねる音がする。
先程の自分の行動を思い出してはなんて事をしたのだと思ってしまう。

「な、なに?」
「緊張しているのかい?なんだか体が固まってるみたいだ」
「う…っ」

まったくこの男はどうもこう観察力に長けているのか。

「いや、ほら、あんな事の後だからなんか気まずいと言うか…」
「ああ、それなら気にしなくていい。精神状態があまり良くなかったしね」
「なんか追い打ちかけられた気分になるのはなんでだろう」

なんだか身構えてた自分がバカらしくなってぽすんとベッドに倒れる。
白い天井を眺め、ボーっとしているとなんだかここ最近こんなゆっくりと時を過ごした事がないなと思いを浸らせる。
隣でもぽすんと音がし、なんとなくそちらに視線を向けるとカヲルがこちらを眺めていた。

「っ、な、何…?」

あまりにも不意打ちな顔の近さでまた心臓の音が大きくなる。

「別に何もないよ、音羽を見たかっただけ」
「そ、そう…」

昨日までなんとも思っていなかった言葉。
カヲルが平気で恥ずかしい言葉を出すのはわかっていたから。
のに、今。
気持ちが熱くなって仕方ない。

音羽はごろんと寝返りをうちカヲルに背を向けて心臓の音を収めようとした。

「音羽…」

呼ばれる声が聞こえて、返事を返そうとすれば目の端に腕が伸びてくるのが見え、そのまま抱き締められた。

「かっカヲル!?」
「ん?」
「ははは、離してっ」
「どうして?さっきは普通に抱き締め合っていたのに」
「そそそ、それはっ」

色々と昂ぶっていたなんてとても言えない。
黙っていればカヲルが気にするのなんてわかっているはずなのに黙る他なかった。

「ねえ、音羽。どうして?」

顔が見えない。
声と
体温が背中にある。
緊張してしまうのに
その緊張に慣れてきてしまったのか、少し落ち着きもしていた。

「もう、いいよ…」

目を閉じてカヲルの体温を感じていればうとうとと眠気が襲う。

「音羽」
「んー…?」
「寝るのかい?」
「ん…」

1分程すると聞こえてくる寝息。
カヲルはくすりと笑えば起こさないように音羽を自分の方へと向かせた。

「……」

ふに。と音羽の唇に触れる。
衝動だった。
我慢できなくて、どうしても抑えられなかった。
嫌われるかななんて思ったけれど音羽はむしろ受け入れ、拒絶の意思はまったく見られなかった。

「…知りたいな…」

この気持ちはなんなのか。
また口付けをしたらわかるのだろうか。
そう思えば試したくなるもので
そっと音羽の唇に自分のそれを重ねる。

「…」

わかるどころかまた口付けたい衝動に駆られる。
こんなもの知らない。
この気持ちはなんなのか。

「音羽、教えて…」

彼女はあの時笑いながら聞いてもいいのよと言った。
さっきも聞こうとしたのだが邪魔が途中で入ってしまったのだ。

「君にしか感じない、この気持ちは何だろう…」

そっと音羽の頬に触れる。
そしてまた口付けて

ぎゅっと抱き寄せた。

「幸せだと感じるのに、物足りない」

触れても触れても。
満たされるのに満たされない。
音羽の頬へと口付ければピクリと揺れる身体。
それがなんだか嬉しくて軽く舐めては甘噛みをするように遊んだ。

「、ん…ぅ」

小さく洩れた声にゾクリとした感覚が背筋を這う。
この感覚は本能的にどういったものなのかわかる。
となればこの感覚に陥る感情の原因。

「…これが?」

まさか。
今まで悩まされていた感情がこんな一言で済むものなのだろうか。

『初恋』

先程の音羽の言葉が鮮明に蘇る。
そして胸にストンと落ちてきた。
つまり

納得した。という事。

「…っ」

カヲルは口元を自分の手で覆い隠す。


彼以上に
彼女が愛しいと

思ってしまった。








その気持ちがこんなに激しいものとは思わなかった。






to be continue.
2016.09.07.

[ 15/29 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -