エロ本のあの子。


*原作。副長総受け。


最初にそれを見つけたのは、山崎だった。


その日、山崎は小銭を隊服に忍ばせて屯所内を闊歩していた。
最初は自販機で飲み物を買う予定だったが、その内久しぶりに奮発してエロ本でも買おうかなという気になり、近くのエロ本売り場(といっても自販機だが)にやって来ていた。
彼女のいない我が身を慰めてくれるのは、もはや誰とも知らないエロ本の中の美女だけという事実にも、今はもの悲しささえ感じなかった。
「どれにしよっかな〜・・・」
言うほどマニアックな性癖を持っている訳ではないので、ノーマルな本があったらいいなと思いつつ物色。
その時・・・
「え・・・?」
見つけたのは一冊のエロ本。
需要があるかどうかは分からないが、月刊マヨビームなる奇抜なタイトル。
真ん中には、たゆんとした大きな胸を携えた美女が。
キリリとした瞳に、煙草をくわえた口元、そしてエロスさえ感じるセーラー服。
「でも、この人って・・・」
髪は長い。胸はある。
だけど、これは・・・
「ふ、副長だああああ!!」
思わず誰もいないのに叫んでしまい、慌てて口を押さえる。
(え?どういうこと?副長の妹さんとかお姉さん?いや、でもあの人って確か複雑な家庭に生まれてたから違うかな・・・だとしたら誰なの!?副長なの!?女体化した副長なの!?)
パニックになりつつ、じっと見つめる。
え・・・エロい・・・。
購読心をくすぐる妖艶な副長(仮)に山崎は喉を鳴らした。
これはエロ本、なのだ。
きっと中身は子供が閲覧できないような内容になっているに違いない。
表紙の副長(仮)が色んな男に触られたり、普段は見れない女の子のエデンの園を露出させているのかもしれない。
もしくは、タイトル通りマヨネーズという名の液体にまみれた副長(仮)がくんずほぐれつ・・・
「のわぁあぁぁあ!!」
危険な妄想に鼻血が飛び散り、気が付けば山崎の手には例のエロ本が握られていた。
「早速、見なくちゃ・・・!」
そう言って、そそくさとその場を後にする山崎を物陰から誰かが見ていた。
「ど、どうしたんだ。山崎の奴は・・・・」
心配そうに彼を見ていたのは近藤だった。
偶然にも、鼻血を飛ばしてエロ本を買う山崎を見てしまったのだろう。
「ははっ、アイツも男だなあ。どんな本を買ったんだろう」
そう言いながら自販機に近づく近藤が、月刊マヨビームを見つけるのにそう時間は掛からなかった。

数日後、屯所では瞬く間に月刊マヨビームの噂が流れた。
増刷されたにも関わらず、月刊マヨビームは凄い勢いで姿を消していき、隊士達は回し読みをしてその本を味わい尽くしていた。
最初は土方に似てるからという理由でネタ程度に読んでいたものも、見終わった後は本物の土方を見ただけでムラムラしてしまう位に効果は絶大だった。
更には誰かが、この本を屯所外の者に貸し出したらしく、マヨビームブームは屯所以外の場所でも爆発的なヒットを起こしていた。
そしてその本は、ついに万事屋の家主の手に渡る・・・

「は?何?エロ本?」
「そうそう!!今話題の月刊マヨビーム!!知らないの?銀さん」
いつものように飲み屋で飲んでいた銀時に、その話題を持ち掛けたのは長谷川だった。
「知らねぇよ。つーか、何?そのタイトル。どっからマヨビーム出すんだよ」
「いやぁ、これが中々良くてさぁ!!副長さんいるでしょ?真選組のさ。あの人にそっくりな女優さんでさ!」
「キモいわっ!!何であいつそっくりな女がでるエロ本を読んでんだよ長谷川さん!!」
「騙されたと思って見てみてよ!!屯所内でしか売ってないのを3倍の値段で譲って貰ったんだ。暫く貸してあげるから是非とも読んでよ!!」
「分かったよ・・・」
渋々といった風に、銀時は本を受け取った。
この時点で、取り返しのつかない事になってしまっているのに銀時は気づいていなかった。


最近屯所内の様子がおかしい。
土方は紫煙を燻らせながら、町内を沖田と共に歩いていた。
土方の目下の悩みは周りの人の自分に対する反応だった。
妙に熱っぽい視線を向けられたり、何故か風呂場で胸元を触られたり、「あん?」と睨みをきかせたら「あ、喘いだ・・・」などと謎の反応をされたり。
最近は近藤さえもが、
「と、トシって最近綺麗になったよな・・・」
などと宣う始末。
それだけならまだ良かったが、最近ではこうして巡回しているだけで何故か男がチラチラとこちらを熱っぽい瞳で見てくるのだ。
「なんだってんだよ・・・」
肩を落として歩いていると、前方から銀時がやって来た。
彼もまた、同じような視線で見てくる。
遂に堪忍袋の緒が切れた土方は、気兼ねなく銀時の胸ぐらを掴んで詰め寄った。
「てめぇ、何俺の事見てんだっ!!殺されてぇのか・・・って、んぁ!?な、なに、何しやがる!?」
突如、銀時に胸元、股間をまさぐられ思わず真っ赤になって掴んでいた手を離した。
「土方君がさぁ・・・こんなにえっちぃな子だったなんて、俺知らなかったよ・・・」
蕩けた目でフラフラと土方に近寄る銀時に、土方は唖然とした表情で見つめ返す。
「な、何のこと・・・」
「土方君ってさぁ、こぉんなにやらしくて可愛い子だったんだね・・・・」
そう呟いた銀時は、土方に月刊マヨビームを見せ付けた。
「ななななな、何だこの本!?俺じゃねぇって!!こんなの撮影した覚えは・・・や、嘘・・・そんな破廉恥な格好してる・・・あ、やだ・・・え、嘘だろ・・・?こんなえっちな・・・」
真っ赤になりながらも、本から目を逸らさずにいる土方の様子に耐えきれなくなった銀時はその場で覆い被さった。
「土方ああああ!!ムラムラするぅぅぅ!!」
「ぎゃあああ!!ここ公道ぅぅ!!」
そんな様子を眺めていた沖田は、口の端を上げてほくそ笑んだ。
(土方さんの写真をちょっとコラって編集しただけのエロ本でここまで稼げるとは・・・これからも俺の小遣い稼ぎに協力して下さいね、土方さん♪)
その後、土方は局中法度に月刊マヨビームを買った者は切腹と新しく取り付け、暫くは事態が収まったように見えたが、今回を機に土方に惚れた男は多くいたようだった。

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