不安と理解
本家に帰ってきてはや一週間、やっと体も慣れてきました
「はーつかれた」
ついこの前江戸時代にいたって考えると不思議だよなー
「あ、しおりー今から総会だからお前も出席しろ」
ひょこっと顔を出す父さん
「え、なんで私も!?」
「もう一度改めてお前のことを紹介しようと思ってよ。」
「わかった今行くー」
私は片付けを一時中断させて広間へと向かった
「改めて、鯉子が奴良組に帰ってきた。だが名前は今までと同じしおりと呼んで欲しいらしい。みんないいな?」
「「「「へい」」」」
父さんの紹介にみんなが頷く中一人だけ納得していないような顔をしている奴がいた
「二代目!今までコイツは否定してたのになんでまた急に!本当にこいつが鯉子だっていう確証はあるんですかい!?」
一つ目・・・
「ああん?何か文句あるのかい。ていうかどっからどう見てもそうだろ」
「しかし!!」
ブーブー文句言っている一つ目にイラッとくる
「あら一つ目いつだか総大将の気に入っていた茶碗を割ったことが「わーわー!!」
一つ目は必死に私の言葉を遮る
「いやあーあはは、やっぱりこの方は鯉子だった。久しぶりだな鯉子!」
冷や汗を掻きながら笑いかけてくる一つ目、少し気持ち悪い
「・・・まあ今日はそのことの報告だけだ。あとはみんな大いに騒げ!」
やっぱり一番の目的は宴会かよ、私は重い頭を抱えながら広間を出た
誰もいない縁側に私は一人腰掛けた
「・・・ハァ」
父さんを助けたことでこれからの物語がどんどん変わっていく・・・。
その時私はどうすればいい?私の知らない物語が繰り出されていくのではないか。
私のせいで死ぬはずのなかった人が死んでしまったり、私の自分勝手な行動で世界を変えてしまった。第一私はここにいてもいい存在なのか
「何をそんなに悩んでいるんじゃ」
「!?」
突然後ろから声をかけられて振り返る
「・・・ぬら」
そこには若かりし頃のぬらりひょんの姿があった
「自分がやったことは本当に良かったことなのかなって思ってさ」
「鯉伴のことか?」
ぬらりひょんは私の隣に座って盃を出す
「それもだけどね、自分は本当にここにいてもいいのかな」
「なにをそんな馬鹿なこと聞いておる、お主は家族じゃぞ。」
「だって私が鯉子じゃなかったらここには置いてくれていないでしょう?」
私は微笑しながら月を眺める
「鯉子だから・・・か、それは鯉伴に聞いてみたらどうじゃ?なあ鯉伴」
「え!?」
ぬらりひょんが横目で柱を見る
「なんでい親父気づいてたのか」
「当たり前じゃろ、伊達にお前よりは生きてないわ」
ニヤっと笑ってぬらが盃の酒を飲む
「・・・いつからいたの?」
「オメェさんがため息を吐いたあたりから」
「最初からじゃん・・・」
鯉伴はフッと笑うと私の隣に座った
「別にオメェが鯉子だからじゃねぇよ、お前が家族だからだ。仮にお前が鯉子じゃなくてもオレはお前を家族として迎え入れていた。・・・お前が鯉子なのはただの偶然だろ?必然じゃねぇ。だからそんなこと考えてねぇで子供は子供らしくしてろ」
「・・・そっか。ありがとう父さん」
私が笑いかけると父さんは「あぁ・・・」と、一言つぶやいて部屋に戻っていった
「そういえばなんでぬらは若い頃の姿に戻ってるの?」
「あぁ・・・ワシは今で言ういけめんじゃから女がよってこないようにじじいの姿になっておるんじゃ」
「自分で言わないでよ」
しかもいけめんって・・・
「それに・・・」
ぬらりひょんが少し溜めてから話し始める
「ワシがこの姿になるのは珱姫の前だけじゃ。珱姫を裏切るわけにはいかんからのう」
「・・・私がいなくなったあとも珱は幸せだったんだね。ねぇぬら」
私はぬらりひょんに向きなおす
「珱を愛してくれてありがとう」
「!!・・・あぁ」
「ぬらまた無銭飲食したでしょおおおおお!!」
「わ、悪かった!!!あやまる、謝るから妖刀振り回すのだけはやめろ!!!」
「問答無用!今日という今日は絶対に許さないんだからね!」
「ぎゃああああああ!!」
それから数日後、いつもと変わりない生活が奴良組本家で見られましたとさ
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