プレゼントされました。
「なまえ、今日は僕と一緒に出かけない?」
「白澤様と、ですか?」
きっかけは、そんな白澤様の些細な一言だった。
「わぁ…すごい、!」
EU地獄のショッピングモールに連れてこられた。
見渡す限りに物、物、物。
日本の地獄の高天ヶ原ショッピングモールとはまた違う雰囲気を持ったお店がいっぱい。
「ここだったら、EU地獄特産のお土産とかいっぱいありそうでしょ?」
「はい!桃太郎さん達のお土産選べますね」
辺りを見渡せばいろいろなお店がいっぱい。
心が躍った。
「じゃあ行こうか、なまえ」
「、はい!」
満面の笑みを浮かべて返事をすれば、白澤様はニコリと笑ってあたしの頭を撫でてくれた。
*****
「…何を買えば良いのかな」
やっぱり桃関連の方がいいのかな。
桃太郎だし。
「これなんかいいんじゃない?」
「…、」
ちょんちょんと肩を突かれて振り向く。
白澤様の手に持っているのは、パッケージに“kibidango of momotaroh”と大きく書かれた巨大な袋。
ちなみに日本語に直すと“桃太郎印のきびだんご”
「…桃太郎って、日本の昔話に出てくる主人公ですよね…?」
「うん、そうだよ」
何で外国で日本の物を買わないといけないの。
「、ふざけてないで真面目に考えてくださいよ」
「あはは〜ごめんごめん」
全く、この阿呆薬剤師が…。
溜息を吐いて、きびだんごを売り場に置いた。
後ろで、つまんないの〜とブツブツうるさいのは無視無視。
何を買えばいいかな。とキョロキョロとお店のウィンドウを覗く。
やっぱりここは、定番の物とかを買ったほうがいいかな。
と場所を移動したその時だった。
「─────、」
ふと、向かいの雑貨屋さんに目がいった。
ウィンドウに飾られている、髪飾りに釘付けになる。
「…、」
タタタっ、と小走りでウィンドウに近づいた。
キラキラと、桜の花びらが散りばめられた少し大きめの髪飾り。
────この髪飾り可愛いなぁ。
値札を見れば、15ユーロ。
日本円にすれば、およそ2000円くらいか。
「…、ダメダメ。今日は桃太郎さん達のお土産を買いに来たんだから。」
はぁ、と溜息を吐いた。
今度来た時に、まだ売っていたら買おう。
そうしよう。
髪飾りを、見つめながらもう一度ゆっくりと溜息を吐いた。
******
「…桃太郎さんへのお土産、買えてよかったですね」
「うん、僕も自分の物とかも買えたし良かった」
ホテルまでの帰り道、荷物は殆ど白澤様が持ってくれた。
そういう所は、本当に紳士。
付き人はあたしなんだから、あたしが持たなきゃならないのに。
「…あ、そうだ」
ふと白澤様が気づいたように道端で立ち止まった。
「白澤様?忘れ物とかですか?」
「ううん、ちょっとねなまえ。少し目を瞑っててくれる?」
「…はい、?」
白澤様に言われたようにゆっくりと目を閉じる。
何だろう、少しだけドキドキしながら待っていた。
ふわりと、髪に何かの感触がしてビクリと体を揺らした。
「…はい、もう開けていいよ」
「─────、ぇ」
目をパチっと開けて自分の髪の毛を触った。
シャランと、何かが揺れる音と手に感じたのは硬い感触。
ウィンドウにうつった自分に目をやる。
あれ、これもしかして。
「白澤様、これ」
「欲しかったんでしょ、その髪飾り」
似合ってるよ、それ。
ポスン、と頭に手を置かれて撫でられた。
「研究会が成功したのはなまえのおかげだし、それに色々お世話になってるからね。僕からのプレゼント」
「…、っ」
ドキン、と胸が高鳴った。
「、ありがとう…ございますっ」
「…どういたしまして、なまえ」
白澤様は、少しだけそっぽを向いて小さくそう呟いた。
プレゼントされました。
「そう言えば白澤様は何を買ったんですか?」
「え?さっきのきびだんご」
「…ちょっと、待ってください」
いったい誰にそのきびだんごあげるつもりですか。