私は派遣鬼付き人!


そもそもあたしが極楽満月で働くことになったきっかけは鬼灯様の一言だった。

「大変申し訳ありませんなまえさん。しばらくの間、天国の桃源郷に行ってもらえませんか?」

よく言えば異動、悪く言えば左遷。
あれ、あたしなんか問題なんか起こしたっけ?
なんて考えながら、半分パニックになって鬼灯様に食ってかかった。

「っあたし何かしましたか!?もしかしてこの前の現世出張のプレゼンで失態とかっ、」
「あぁ、いえ、ただのヘルプです」
「へ、ヘルプ?」
「いやねぇ、桃源郷の白澤さんから仕事のサポートをする付き人の申請が来てるんですよ。丁度今の時期桃の収穫などで忙しいし。本当はあんな白豚の所になんか女性を送りたくないんですけどね、なんせ今はこちらも人手不足なもんで。んで、丁度大きな仕事を終わらせててしばらく暇なあなたに声をかけたんですよ」

ハァっと大きくため息を吐いた鬼灯様にこちらまで溜息を吐いた。

「…一応あなたの意見を尊重しますが、なまえさん。行ってくれないですか?」
「は、はぁ。私でよければ」



そして、冒頭に戻る。
あんな会話をしてからかれこれ十数年。

「…はぁ、疲れた」
「すいませーん、風邪のお薬くださいなー!」
「あ、はーい!」

未だ、地獄の方からのお声はなく極楽満月での生活の日々を、それなりに楽しんで過ごしています。

「お客さん?いいよ、なまえ疲れたでしょ。僕が出るから」
「あ、白澤様」

それも、この上司との生活が楽しいのかもしれませんが。

「あ、こんにちは〜君可愛いねぇ!今度僕と遊ばなーい?」
「……。」



前言撤回。
やっぱり、ちっとも楽しくないです。



私は彼の鬼付き人。

「白澤様!!また真昼間から女の子ナンパして!!」
「うわっなまえ!!ちょ、」
「女の子困ってるじゃないですか!!ったく、少しは仕事の事も考えて…、」
「あ、もしかしてヤキモチ?」
「…退職届出してもいいですか?」
「え゛…っい、今やめられたら物凄く困る!!ごめんっ気をつけるからここにいて!!」


うちの上司は相当な女好きです。

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