そんなあたしは籠の鳥



「強情な女だな、すぐに良くなるから」

やめて、

「恨むんなら、俺たちじゃなくてお前を女に産んだ母親を恨めよ?」

やめて、助けて

「―――――所詮お前ら女なんて、そんな価値しかないんだから」

誰か、誰か助けて―――――




******


「――――っっ!!」

ガバッと勢いよく飛び起きた。
じっとりと汗で濡れる頬。
しめった額。
荒い息。

「・・・ゆめ、?」

またあの夢。
あの時の。

「久しぶりだなぁ、最近はなかったのに」

あの時の恐怖が蘇ってくる。
熱を帯びたあの吐息。
獣のようなあの瞳。
全てがあたしを恐怖へと導く。

「…、ほんっと勘弁してよねっ・・・」

もうやだ、助けて誰か。

「、はくたくさまぁ…」

無意識にあたしは、その名を呼んでいたのだった。








「――――ん、なまえさん!!」
「・・・、あ」

ボーっとひたすら一点を見つめていたら、大きな声で呼ばれた。
ふと浮遊していた意識が戻る。
目の前には怪訝そうに見つめる鬼灯様の顔。

「、あ…すみません何の話でしたっけ」
「阿鼻地獄の件ですけど…大丈夫ですか?顔色あまり良くないですよ」
「ちょっと昨日眠れなかったもので…大した事ないんで大丈夫ですよ」
「なら良いんですが…あまり無理はしないでくださいよ。何かあったら直ぐに言ってください」

あはは、と乾いた笑いを漏らしながら目の前の書類に視線を戻した。
いけないいけない、集中しなくては。
結局あの後眠れなかったせいで、余計ボーっとしてしまう。
こんなんじゃだめだ。仕事しなくちゃ。
はぁ、とため息を吐きながらゆっくりと立ち上がった。
瞬間ふらりと揺れる視界。
あれ、頭がぐるぐるする。

「っなまえさん!?」

あれ、あたし何やって―――
焦った様な鬼灯様の顔を最後に、あたしの意識はそこでぷつりと切れた。



そんなあたしは籠の鳥

暗い意識の中ふと思ったんだ。
いつまでたってもあたしは弱いまま。
過去に問われ続けるのだと。
まるで、籠の中で飼われ続ける鳥のように。


あたしはいつになれば、逃れられるのだろうか。

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