01

今までスパナの私室だった部屋に正一の机を移動して、正一の私室だった部屋にスパナのベッドを移動。
つまり、ふたりに私室というものは無くなり、「勉強部屋」と「寝室」という区分になった。

「正一」
「…何?」
「ベッド、ウチとしては1mm の隙間もなくくっつけたい」

元からぎこちなかった正一の頬は赤らんで、黙ってスパナの言う通りにふたりのベッドをピッタリと並べるのを手伝った。

「ベッドの高さがおんなじだから、キングサイズのベッドっぽいよな。これでそういうサイズのシーツとか布団とかあれば完璧なんだけど」
「……スパナは、…欲しいの?」

正一が消え入るような声で言ったので、今度はスパナが黙った。
スパナは、寝室が二人の共用になって、しかも典型的なツインではなくキングサイズ的にベッドをくっつけるだけでもかなり嬉しかったので、布団云々は浮かれ気分のジョークだった。しかし、真面目な正一は真面目に受け取ったらしい。

……これは、言ってみてもいいのだろうか。

「うん。欲しい。夫婦みたいにしたい。当然に、ウチがダンナさんで正一がウチの可愛い奥さんだ」
「男で奥さんはないから!!」
「可愛いの方はアリなんだな。ってゆーかアリだから。恋人が可愛くないと思う男は不実だ」
「僕も男なんだけど!」
「No problem. 男でもウチには正一が世界で一番可愛いから」
「〜〜〜〜〜っ」

正一が、真っ赤になって言葉に詰まり、スパナはその染まった頬に触れた。
「熱いな」
「スパナが…色々言うからだよ」
「色々、全部真に受けてウチのこと意識するから、赤くなるんだろ?」
「どうせ、真に受けたよっ!」
「怒んないで。ウチは本気だから、全部真に受けて欲しい。ウチの気持ちを本気で受け取ってもらえるの嬉しいし、ウチはそういう正一が大好きだ」

大好きだと、スパナが笑いかけると、正一は伏し目がちに小さな声で、「…僕も、スパナが大好きだよ」と答えた。
そんな、素直で純なところが一層可愛い。対してスパナは、心が通い合う前の自分は、随分捻くれていたのだと思った。

「ウチ、以前は自分のこと、人付き合いは淡泊な奴だと思ってたんだよな。でも、それって間違いだったって潔く認めたい。まだ出会うべき人に出会ってなかっただけだったんだ。学校のロボット仲間には熱い友情を感じるし、正一のことは溺愛してる自信がある」
「で…?溺愛って、むやみに可愛がる感じの言葉なんだけど!?」
「それで合ってる。ウチその日本語のニュアンスは、ちゃんと把握してる。愛なら、溺れてたっていいだろ?そのくらい正一に夢中になってるウチは、幸せなばっかりだ」

スパナの甘い言葉と至近距離の甘い微笑に、正一は染まった顔のまま、どうしたらいいのかわからなくて、恋に不慣れなことを隠せずに、思わず目を閉じた。

「…誘ってるのか?」

目を瞑られたら、キスをしたくなるのに決まってる。
スパナは、正一を抱き寄せると、唇を塞いだ。

情熱を抑えきれない性急なキスに、正一が少し苦しげにくぐもった声を漏らした。でも、舌をねじ込んで、正一の口の中を味わい尽くしたい気持ちを、止めることが出来ない。
こういう時、スパナは正一を可愛いと思う一方で、自分は年下でまだ少年なのだと思う。

余裕などない。好きだと、欲しいと、正一にぶつけてしまう。
対して正一は、スパナの為すがままになるのに、こうして熱いキスを終えて唇を解放すると、年齢よりもあどけない顔は恍惚として、スパナがドキリとするほど色っぽい。その表情に、正一はうぶでも無意識であっても、確かにアダルトなのだとスパナは感じる。

正一が、どこまでもスパナに受容的なのも、それはスパナがまだ持つに至らない、優しい包容力の現れだなのだと思う。
スパナは正一の弟にはなれなかったし、正一もスパナの兄のように振る舞うことはなくなったけれども、スパナを慈しみ成長を見守る心は、いつもさりげなくスパナに寄り添ってくれているのだろう。

「ウチ、今の正一が好き過ぎて、大人になりたいのにタイミング逃しそうだ」
「え…?スパナは、日本の同じ年頃の子どもよりも、ずっと独立心もバイタリティもあって、大人っぽいと思うよ」
「だから、比較対象が“こども”で、“っぽい”のがせいぜいだろ?」
「あ…」

スパナの片腕に抱かれて、正一がピクンとからだを震わせた。Tシャツの上から正一の薄い胸元をまさぐれば、プツンと小さな尖りを感じる。カリ、と軽く布越しに引っ掻くと、正一はきゅっとスパナの袖を握った。

スパナは、その正一の仕種に、少し頬に熱を感じた。
「そういうの…、スゴク可愛いんだけど?」
「え…?」
「ウチがえっちぃの仕掛けてる張本人なのに、正一はウチを信じ切って、助けを求めてくっついてくる感じ」
「…………」

我に返ったらしい正一は、かーっと真っ赤になった。
「ご…ごめんっ!あの…僕、こういうの、何も知らなかったから…」
「謝らなくていい。だからウチを頼りにしてるんだろ?……知らないのなら、ウチが全部教えてやるよ」
「あ…ん…っ」

Tシャツをぐいと持ち上げて、スパナは内側に手を入れて正一の素肌に触れた。指の腹で撫でてみれば、乳首は硬さと弾力を持って勃ち上がっている。そっと摘んでやれば、正一は小さな声で喘いで、その控え目な様子に返ってスパナは煽られる。
……煽られる自分から、正一を守ってやりたくなる。

「優しくするように、努力する」

耳元で囁かれたスパナのことばに、正一の心臓はトクンと鳴った。
Tシャツをするりと脱がされたあとに、ふわりと浮遊感。お姫様抱っこで、大切にベッドに下ろされたのがわかった。

[ 59/100 ]

[*prev] [next#]
[図書室73]
[しおりを挟む]

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -