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小学校は、当然土日はお休み。
でも、今日の授業参観日は違うの。土曜日にやるから、代わりに月曜日がお休み。

これって意味あるのかなあ?
お友達のお母さんは、レストランでパートやってるけど、お休み取れなかったって。美容師さんの子もそうよ。

って言ったら、ショーイチが答えてくれた。
「会社員だったら、土日が休みっていう場合が多いからね。でも、サービス業は週末が一番忙しいから抜けられないことが多いんじゃないかな」
「ふぅん…」

でも、ブルーベルのお母さんは、スーパーのレジ打ちだけどお休み取れたわ。
「ああ、それはね、土日や夜間だと、時給が上がることが多いから、稼ぎ時だと思って代わりに誰かが入ってくれたんだろうね」

よのなか、色々むずかしいわ。

「よくわかんないけど、ブルーベルは水泳で稼ぐからいいのよ」
「そうだね」

でも、そこでブルーベルちょっと考えちゃった。
「水泳って、どうやってお金稼ぐの?」
「学生は無給だよ。大人になって就職すれば、通常の仕事は免除で、活動費や遠征費を持ってもらえてお給料が出るっていう会社もあるみたいだよ」

ブルーベルは、にゅーって叫んだ。
「ちょっと!!それ、会社員をばかにするつもりないけど、gr8な夢持ってるブルーベルは、ハートブレイクよ!!」
「ブレイクしなくていいんじゃないかな。オリンピックで金メダルなら、何千万って貰えるから。水泳はひとりの選手が複数のメダルを狙える競技だから、いっぺんにすごい額になるんだよ」
「それ、先に言ってよーーーっ!!!ブルーベル、賞金貰いまくってやるわ!!」
「尤も、オリンピックって4年に1回しか無いから、それを考えるとうんと高給取りかって言ったら僕もわからないな」

・・・・・・・・・・。

「一応、オリンピックほどじゃないけど、賞金が出る大会もあるよ。そういうのを狙って出場する賞金稼ぎみたいな選手もいるよ」
「それも、先に言ってよーーーっ!!!」
「でも、オリンピックってほどじゃないっていったけど、うんと高額でもないんだよ。活動費や遠征費を差し引くと、これも僕はどうなるか、よくわからないんだよね……」
「うわあああん!!ショーイチ、ブルーベルを舞い上がらせるのと突き落とすのと、どっちにしたいのよばかーーーっ!!!」
「……どっちでも、ないよ」

ショーイチは、優しく笑った。
「一部のスポーツを除けば、プロとして高額の賞金を稼げるケースは少ないよ。…でもね、ブルーベルは素晴らしい才能を持ってる。何より、泳ぐのが大好きだっていう気持ちを持ってる。だからね、目先のお金のことに囚われて、大切なことを忘れて欲しくないんだよ」

……今のショーイチ、ちょっとカッコよかったわ。
一般受けするイケメンじゃなくたって、ショーイチはこういうとこ、すてきなのよ。

「にゅ…。ブルーベルだって、かねのもうじゃになりたいわけじゃないのよ。でも、お金って大事なのよ。愛さえあればお金なんてとか言ってるやつは、頭がお花畑すぎてバカよ。お金なくてどーやって家庭を築いていけるのよ。それに、お金がないと、老後を安心して過ごすこともできないのよ」
「結婚はともかく、老後まで考えてるんだね……」

だってだってだって。
ブルーベルはオリンピックの表彰台のてっぺんで、スターになるのが夢なのよ。
誰にでも出来ることじゃないわ。ブルーベルだから出来るのよ。

……でも、「けんじつな生き方」じゃないことくらい、知っているのよ。
ブルーベルが今は自信満々なだけで、何の保証もない世界へ、それこそ泳ぎ出すんだってことくらい……

「じゃあ、僕も堅実じゃない生き方で高給取りを狙ってみようかな」
「え???」

ブルーベルは、ぽかんとしてショーイチを見た。
「にゅ!どーしちゃったの!?けんじつのごんげみたいなショーイチが!!」
「権化?…かなあ。科学者を目指す時点で、既に堅実とは程遠いと思うんだけど」

ショーイチは、教えてくれた。
「これは、日本の場合なんだけど、研究者は運に恵まれなければ薄給なんだよ」
「にゅ?なんで?頭がいいエリートでしょ?」
「…オリンピックの表彰台のてっぺんは、何人?」
「当然ひとりよ。同じタイムでない限り。でも記録は百分の何秒っていうレベルまで出るから、同じなんてまず有り得ないわ」

そこまで言って、あ、ってブルーベルは気が付いた。
「教授とか准教授、とかいうのもそんなかんじ?」
「そういう事だよ。ピラミッドの頂点に上り詰める人間は少数なんだ。上のポストが空白にならない限り、下位の人間は上がれない。博士号を持っていても、同世代の会社員よりずっと少ない給料のまま、なんていうケースはいくらでもあるんだよ」
「……それでも、ショーイチは科学者になるのね」
「うん。日本ではそんな感じだから、優秀な大学院生は、どんどん海外に流れているのが実状だよ。実力主義の国はたくさんあるからね」
「そうなんだ…」

でも、ブルーベルは、深く考えなかった。だって、ショーイチならいっぱいすごい研究をして、すごい論文書いて、ブルーベルはよくわからない仕組みがあるんだろうけど、高給取りの科学者になるのに決まってるのよ。
ショーイチなら、必ずてっぺんの科学者で、退職金も貯金も“けんじつ”にガッポリよ。
お父さんもお母さんも何にも言わないけど、<長男>のショーイチは、ウエディングドレスに憧れてるばっかりのアキコと違って、自分の老後よりもお父さんやお母さんの老後まで、ちゃんと考えてるわ。

「将来、ブルーベルがどのくらいの収入になるのかまだわからないけど、僕の収入がしっかりしていれば、ブルーベルは大好きな水泳をずっと続けられるんじゃないかな」
「……にゅ?」

ちんもく、10秒。ブルーベル、真っ赤よ。

「にゅにゅーーーっ!!ショーイチ、それプロポーズみたいに聞こえるじゃないのーーーっ!!!」
「みたい、じゃなくて、僕は7年前、ちゃんと君にプロポーズしたんだけどな」
「…………」
「ブルーベル、学校に遅れるよ?」
「にゅ!?ちょっとーっ!ショーイチ早く言ってよーーーっ!!!」

ブルーベルは、ランドセルと、スイミングスクールのバッグを持って玄関から飛び出した。
……まだ、ほっぺたが、熱い。

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