U 「ハートとデート」 不思議高校生正一×小さいブルーベル 01
「かんぺきよ、ブルーベル…!」
もう1かい、かがみのまえで、くるんってまわってみた。
きょうきてるのは、ケープコート。
ブルーベルといったら、あお!だし、あとはかわいいパステルカラーがすきなブルーベルだけど、このコートはちょっとちがうの。
あえて、おちついたブラウンのケープコートよ。
すこしあかるめのブラウンで、ふちにはこげちゃいろの、ふわふわのファーがついてるの。じょうひんかわいいかんじよ。
ブーツもおそろいのふんいきをだしたくて、びゃくらんをひっぱりまわしてさがしちゃったわ。
これもブラウンのブーツ。ブーツのなかも、うえのかざりのぶぶんも、ベージュなのがやっぱりじょうひん!だわ。
「きょうも、びしょうじょよ。ブルーベルかんぺきっ!」
「アホかよ電波。そのモフモフで森に出ていったら、あっという間に雪くっついて雪まみれになんぞ」
「うるっさあぁぁい!!きょうは、そりあそびじゃないのよっ!」
「デートの時」
「トリカブト、ズバリいわないぃぃ!!!」
でもよ〜、とダルダルしたかんじに、ザクロのでんぱ。
「おまえ、何ヶ月入江と会ってねーんだよ。アイツ日本人だろ。しょっちゅうイタリアに来れるかよ」
「きょりは、かんけいないのよっ!入江は、じかんもきょりもかんけいない、ふしぎこうこうせいなんだからっ!!」
「なんだそりゃ。ワガママもいい加減にしねえと、入江もオコサマのお守りに飽きるぜ」
「…………」
ブルーベル、だまっちゃった。
さいごにあったの…11がつ。もう、3かげつ…あえてないわ。
ブルーベルは、なんども、もりに入江をさがしにいったのよ。なんども、なまえをよんだのよ。
でも…、入江は、きてくれなかった。
もりには、はっぱがおちるきと、ふゆでもそのまんまのきがあるの。おちるのは、「こうようじゅ」っていうんだって、入江がおしえてくれた。
どうしてかしらないけど……、入江は、はっぱがおちはじめると、あえるかいすうがへっていった。
入江はふしぎなひとで、ブルーベルがあえるのは、いつももりのなかだった。
入江のめは、もりのみどりににてる……
いまは、もりがみどりじゃないから、あえないの?
それとも…
ザクロがいったみたいに、ブルーベルがちっちゃいこどもから、入江はしかたなくいっしょにいてくれたの?
わらってくれてたけど、ホントは、ワガママなブルーベルなんか、きらい…?
ブルーベルは、いつもなら、むっかーってなって、ザクロずがいこつむくぞごるぁーーー!!!っていいかえすんだけど、きょうは、なんにもいえなかった。
だからって、びゃくらんか桔梗に、うわあああん!!ザクロのでんぱがいじめるーーーっ!!!ってダイブもしなかった。
なんにもいえなくなったブルーベルは、ただだまって、バレンタインデーのチョコがはいったバッグをもって、ぽてぽてドアにむかってあるいた。
うしろで、桔梗にゴッてこぶしをいれられたザクロが、いってぇなにすんだバーローっていってるのきこえたけど、どーでもよかった。
だって、ブルーベルも、たまにはザクロもただしいかもしれないっておもったんだもの。
入江は、こうこうせいはこどもだよ、っていってたけどうそよ。ブルーベルには、こうこうせいはおとななのよ。
おとなは、こどものいうことなんか、ほんきにしないの。
びゃくらんや桔梗がブルーベルにやさしくって、おこらないのは、ブルーベルがいうことややることを、ほんきにしてないから、はらもたたないのよ。
そういうの、ホントは「やさしい」のとも、ちょっとちがうの。
ちっちゃいこだからって、「おおめにみてくれてる」だけよ。
……ホントは、だれも、ブルーベルのことなんか、すきじゃないかもしれない。
ドアのむこうにでたら、なみだがぽろんってゆきにひとつぶ。
ふかいゆき。おきにいりのブーツはゆきがくっつきやすくて、すぐにゆきだらけになる。
「…ねえ…ブルーベル…」
「にゅーーーっ!?」
ブルーベル、とびあがっちゃったわ。いつのまにか、はいごれいみたいに、ぬーっとデイジーがたってた。
「ぼくチン…、入江はブルーベルのこと、すきだとおもう…」
「な、なんでよ」
「トリカブトが、時をつげてたから…。入江は、ブルーベルにあいにきてくれるよ…」
それだけいうと、デイジーはどろ〜んとしたおかおのまま、おやしきにもどっていった…
……トリカブト、なんていってたっけ?
「…デートのとき…?」
ブルーベル、じぶんでつぶやいてみて、にゅーってまっかになって、もりにむかってかけだした。
<ぼふっ!!>
「にゅにゅーっ!!ころぶの、これでなんかいめよーーーっ」
せっかくの、おきにいりのモフモフふわふわのコートとブーツが、ゆきだらけでファーもボアもボソボソよ。
バッグも…
ブルーベル、なかをあけてたしかめてみた。
……チョコのはこは、つぶれてないわ。
「なかみ、だいじょうぶかな…」
われてたら、やだわ。
わたすまえに、ハートブレイクよ。ハートのチョコレートなだけに。
それに、けっこうもりのおくまではいっちゃった。おてんきはいいけど、ゆきがつもってて、みちがはっきりしなくなってきた。
「にゅ…。もどれるかな…」
ふりかえれば、つづいているブルーベルのあしあとが、ちいさくて、たよりなくみえた。
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[図書室69]
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