02

ブルーベルの学校では、授業参観は、別名「くさい日」って呼ばれてる…

「下の階ほどくさいんだよねー」
「お母さんたちが若いから、気合い入ってるんじゃないのー?って、若くないうちのお母さんが言ってた」

つまり、化粧臭いのよ。学校の下の階に行くほど、低学年で、お母さんたちも若めなの。
子どもの学校に来るのに気合い入れて香水なの?それとも、化粧水とかクリームとかファンデーションとか、そういうのに元々に香料が入っちゃってるの?
じゃなかったら、今流行りのニオイがウリの柔軟剤?アレって、適量にしなきゃダメよ。倍量使ってるひととかいるらしいけど、やめて欲しいわ。

「香水でも柔軟剤でも、本人にはいい匂いでもさー、誰にでもいい匂いなんて存在しないのよ。撒き散らすのを、“香害”ってゆーの」
おともだち、詳しい。
「あたしのお母さんが教えてくれたの。若くないから全然気合い入ってないけど、その分いろいろ物知りなんだよね」
「ブルーベルのお母さんだって、若くないと思うけど?」

だって、アキコおねえちゃんが、ブルーベルよりも12歳も年上なんだもん。
ショーイチだって、ブルーベルより……

(君が大人になったら、僕の花嫁さんになってくれないかな)
(にゅーっ!ショーイチ、ちゅうりんじょうでぷろぽーずなんて、ろまんちっくじゃないわっ!!)

ショーイチは、もう大人になっちゃった…
ちっちゃいブルーベルを、置いて。ブルーベル、12歳になったけど、大学生から見たら、やっぱりずいぶんちっちゃいままよ。…きっと。

「あと、下の階に行くほど、名前がよめないんだよ」
「何で?」
「名簿の名前が、下に行くほどキラキラ輝いちゃってるから」
「…………」

ブルーベル…青い目のいかにも外国人っぽいカタカナのまんまでよかったわ。
こせきにいれるとき、「青鐘」とか「釣鐘草」って漢字で書いてブルーベルって読ませるとか、されなくてしんそこよかったわ…

フツー、プライバシーほごとかいって、名簿なんて出回らないわ。
でも、授業参観のときは、教室の入口に名簿が置いてあって、授業を参観出る人、PTA総会に出る人、校長先生のお話を聞く人、そのあとクラスこんだんかいに出る人、それをおかあさんたちが○をつけるようになってるの。

ちなみに、授業は見ても、PTA総会に出る人はがくんと減るんだって。よくわかんないけど、減るってことはつまんないのね。校長先生のお話がつまんないのも、いつものことよ。

でも、ブルーベルのお母さんは、それに参加しないと次のクラスこんだんかいに出られないから。
クラスこんだんかいは、参加人数少ないから、担任の先生に自分のこどもの様子を聞いたり、「うちの子こんなんなんですけど、ほかのおうちはどうですか?」的な、上品な井戸端会議な感じになってるらしい。

ブルーベルのおかあさんは、クラスこんだんかいまで、いつも残るの。
……ブルーベルのこと、心配だから。

ブルーベルは青い髪のことで幼稚園でいじめられたし、小学校に入ってからも、低学年のうちは色々言われたから、キレたブルーベルは、黒板消し持ってとびかかったことがあるのよ。
バフバフ叩きまくって、「あんたこそしらがーーー!!!」って叫んでやって、ちょっとした問題になったわ。

でも、「ちょっとした」だけよ。
ブルーベルはよく知らないんだけど、おとうさんでもおかあさんでもなくて、ショーイチがまた何か言ってくれたみたいなの。……それも、担任の先生じゃなくて、教頭先生に。

そーしたら、イジメ、ぴったりやんだわ。
ショーイチまたボイスレコーダー持ち込んだの?ってきいたら、使ってないよ、って笑ってた。

「何にでも逆らえない力関係っていうものがあってね、担任がダメなら教頭、教頭がダメでも校長、校長が役立たずなら教育委員会、それも頼りにならなければ政治家まで話を持っていけばいいんだよ。ここまで行けば誰も逆らえない」
「………………………………………」

ショーイチ…。やっぱり、正義の味方なのかあくどいのかわからないわ……
でも、ショーイチはどっちでもいいよって、「必ず僕がブルーベルを守るよ」って笑ってくれるの。ブルーベルには、優しくてあったかいまんまなの。

そういうショーイチって、かっこよくて、すてき…なの。

・・・・・・・・・・。

「にゅにゅーーーっ!!」
「ちょっと、ブルーベルどーしたの?先生来たよ」

今日は、給食がないからお弁当持参で、5時間目が授業参観。
お弁当は、アキコおねーちゃんが作ってくれたわ。

……おかあさんが、熱出しちゃったから。
だから、おかあさんはせっかくパートのお仕事のお休み取れたのに、授業参観には来られないの。

べつに、いいわ。
下の階に行くほど化粧くさくて、名簿の名前がキラキラしてけど、上の階に行くほど、来てくれるおかあさんたちは少なくなっていくのよ。
ブルーベルのお母さんみたいに、子どもが大きくなってくると、外に働きに出るお母さんが増えるんだって。

…ほら、ショーイチ。お金は大事なのよ。うちは、アキコおねーちゃんは公立高校に行ったけど、大学は本命じゃない私立大学になっちゃったし、そもそも天才ショーイチが私立の中高一貫名門校よ。それにプラスして、ブルーベルはスイミングスクールに通ってるもの。全部全部、お金がかかるのよ。

だから、授業参観におかあさんやおとうさんが来ないっていう子、いっぱいいるわ。
小学校さいごの授業参観だからって、別にいいのよ。おねえちゃんが、中学になるとお母さん達ほとんど誰も来ないわよって言ってたけど、…いいの。

大事なのは、今お熱出してるお母さんが元気になってくれることで、これから大きくなっていくブルーベルが、お母さんに心配をかけないような中学生になって、高校生になって、水泳もちゃんと頑張っていくことなんだから。

でも。5時間目は、だるーんと過ごした。
授業参観って、いつもの様子を親に見せてあげるものじゃないの?先生のよそゆき感が満々よ。授業も、普段には有り得な〜い感じに丁寧。

それにね、いつもは早く手をあげる頭のいい子を当ててさっさと授業を進める癖に、今日だけは手をあげる順番に関係無く、クラス全員にまんべんな〜く当たるように、お勉強苦手な子から指名するの。出来る子の才能や努力する子の熱意を無視しちゃってるのよ。
こーゆーの、ブルーベルはキライ。

いかにもタイクツですーって、ブルーベルはほおづえ付いて、だるるんってしてたんだけど、開けっ放しの教室の後ろの戸をくぐって、誰かが入って来た気配がした。
それって、すぐわかるわ。両親のどっちかが来てくれるってわかってる子は、みんなそっちを見るんだし、来てくれなくてもだれだれのお母さんってどんな?っていう興味があってわざわざ見る子もいるから。

「そちら空いていますか」

授業を邪魔しないように、静かな、男のひとの、声…

ブルーベル、思わずぐるんって振り返っちゃった。

(…ショーイチーーー!!!)

池の鯉みたいにブルーベルがお口ぱくぱくしちゃったら、スーツ姿のショーイチはにっこり笑った。
ブルーベルはもっかい前…というよりも机を見て、黙ってパニック。

そ…言えば、ショーイチ、土曜日は大学お休みだったわ。
あ…あんなスーツって、ショーイチ持ってたっけ???ブルーベル、おとこのひとのスーツってよくわかんないけど、何だか見るからに高級感あふれてるかんじなのは、わかるのよ。あれに比べたら、学校の先生のスーツなんて、ペラペラよ。

は…ハッキリ言って、似合ってるわ。知的な男にはひっすアイテムのメガネとのコンボが最強よ。何だか、反則な感じよ。
だ、だけどショーイチが反則でも、と、ととととにかく、ブルーベル、ほおづえでだるるんはダメだわ。
それに、ショーイチが見に来てくれたなら、1回くらいはいいとこ見せなきゃなんないのよ!!

ブルーベル、算数なんて滅べばいいのにとかいつも思ってるけど、とにかくあんまり難しくないところで手をあげて当ててもらった。
……ふー。先生、いつもブルーベルには何もきたいしてないと思うけど、今日だけは「出来るだけ全員に当てる」ルールが役に立ったわ。

そして、授業終了のチャイム。
ブルーベルはうんとホッとして……でも、嬉しくって、ほっぺた赤くなったの。

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