03

1月1日。

ブルーベルは、朝目覚めてカーテンを開けてみて、歓声を上げた。
「わあ…!ゆき!!」

昨日の夕方から、チラチラと降り始めたのは知っていたけれども、その後本降りになって積もったのだろう。
窓から見える木々にも白い雪は降り積もり、辺り一面の美しい銀世界だ。

「びゃくら〜ん!!いっぱい、ゆきーーーっ!!」
「Buon Anno, ブルーベル。綺麗に積もったね。年の初めのデートにはロマンチックじゃない?」

ブルーベルは、駆け下りてきた階段を踏み外しそうになって、ひょいと白蘭にキャッチされた。
「ろ…ろろろろまんちっく…!」
「オレはそのロマンチックとやらの為に、朝っぱらから雪かきだぜバーロー。.....Buon Anno,DEMPA」
「にゅにゅーっ!!年の初めから、Buon Anno(あけましておめでとう)はともかく、でんぱはよけいよっ!あんたこそBuon Annoでんぱーwwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!」

そして、イタリア的に食卓に並べられたのは、「コテキーノ」と「ザンポーネ」。
コテキーノとは豚の腸にひき肉を詰めたソーセージ。

「ざ…ザンポーネ、ってなに…」

気の所為でなければ
「どうぶつの、あしっぽいわ…」
「……足っぽい、じゃなくて、足なんだよ……」

デイジーが、どろ〜んと言った。
「豚足にひき肉を詰めたやつ…。見た目は少しアレだけど、ゼラチン質のプリプリした食感はなんとも言えないおいしさ……」
「いやあああーーー!!!あんたがかいせつすると、ホラーっぽくてたべられなくなるじゃないのーーー!!!」
「ホラーではありません。伝統的なお正月料理なのですから、しっかり食べて入江正一とのデートに臨みなさい」

ブルーベルは、ズバリ正一とのデート指摘と見た目アレな豚足の前で、くらんと眩暈を起こした。
でも、眩暈を起こしている場合ではない。こんなに綺麗に雪が積もった日のデートははじめてなのだから、気合いを入れて可愛い服とブーツをチョイスしたい。

「乙女の気合いの時」
「トリカブトもよけいなこといわないぃぃぃ!!!」

そして部屋に戻って服のチョイス。
ブルーベルが選んだのは、真っ白なファー生地のワンピ風コート。大きめの襟には取り外し可能なバラの花束のコサージュがワンポイントについていて、いつものブルーベルならくまのブローチでも付けたくなるところだけれども、敢えて優雅に白いバラの花。
ブーツはアイスブルーのボアブーツ。

「にゅ…いっそぜんぶしろにしたかったけど、ブルーベルのかみのけがあお!だから、これがいいかもしれないわ」

そして、重要なものに気付いた。…年賀状。
「な…、なんだか、わたしづらいかんじよ…」

クリスマスカードは、直接会ってクリスマスプレゼントに添えたから、何ら問題はなかったのだ。
年賀状だけ、小さく折り畳むこともなく、ぺらんと渡すのが、どうも落ち着かない。

「ブルーベル。貴女の王子様が迎えに来ていますよ」
「にゅーっ桔梗ーっ!!ふつうに、入江が来たって言えばいいでしょーっ!!」

白いファーコートを着てアイスブルーのボアブーツを履いたブルーベルは、今度は階段を踏み外さないように、トコトコと階段を降りた。
正一は、ブルーベルと目が合うと、にこりと笑った。

「Buon Anno.」(あけましておめでとう)
ブルーベルも、ほっぺた赤いわみんなじろじろみないでよ!!と思いながら、小さな声でBuon Annoと答えた。

「こ…、これあげるわっ!!」
ブルーベルが差し出したカードを、正一は受け取った。

「ありがとう。僕も君に」
「にゅ?」

赤い印字。ジャパニーズ・年賀状。

「どの言語にしようか迷ったんだけど、日本語は君はよく知らないだろうし、イタリア語も英語も、話す方は出来ても読めるかどうか分からないし…」
「ブルーベルがよみかきじょうずじゃないのは、ブルーベルがばかだからじゃないわよっ!!ブルーベルはちっちゃくても、すいえいいのち!!なんだからねーーーっ!!!」
「うん。水泳が一番なんだろうから、君が生まれた国の言葉がいいかなって思ったんだ」

English bluebell.
その名の通り、愛らしいベルの形をした、いい香りでイギリスの春を告げる花。

英語…読めるかな、と思いつつ、ブルーベルからも年賀状を手渡した。
裏を返して、正一がクスリと微笑ましげに笑う。

「どーしてわらうのよーっ!!ブルーベル、うねうねのひらがな、がんばってゲシュタルト崩壊よーーーっ!!」
「うん。頑張って練習してくれたんだあって、嬉しかったんだよ」

ブルーベルも、頬を火照らせながら、年賀状の文面を読んでみた。

「…………」
「アハハハ、ブルーベル真っ赤だね。正チャンてばどんな情熱的な愛を叫んじゃったの?」
「叫んでませんっ!!」

と正一は叫ぶと、ブルーベルの手を引いて外に出た。

「……雪景色に、合わせてくれたんだね」
正一は微笑した。

「雪の妖精みたいだね」
「…………」

新しいコートとブーツと、選んだ理由に気付いてくれたのだと、ブルーベルは頬を赤くした。
「ご…ごうかくてんよ!!!」
「うん、よく似合うよ」

ブルーベルは、さっき貰った正一からの年賀状を見て、もっと真っ赤になった。
とりあえず、"Happy New Year!"はわかる。そして、

……"I love you."

にゅーっ!とブルーベルは叫んだ。
「こ…!ここここれって!かんたんにいっちゃだめなのよっ!?」
「簡単じゃないよ」

正一は、少し照れた表情で笑った。
「“唯一で特別”なんだから、僕は君にしか言わないよ。…それ以外の言葉も」

それ以外のことば、は…
「ブルーベル、ちっちゃいから、読めない」

せっかく、きっとドキドキするすてきなことばをもらえたのに。
ブルーベルは、かなしくなった。…自分は小さなこどもだから、わからない。

正一が、呟いた。

「.....I want to be with you again this year.」

ブルーベルは、真っ赤になった。
話しことばなら、意味は分かるから。

(僕は今年も君と一緒にいたいよ)

「どーしてよーっ!!だいたいおなじいみなのに、“ことしもなかよくしてね”よりも、なんだかおとなのよゆうにきこえちゃうわっ!!どーしてよーっ!!」
「どうしてかな…“I want to be with you.”って、“Will you marry me ?”と同じニュアンスか、添えられる言葉だからかな」
「…………」

ブルーベルは叫んだ。
「にゅにゅーーーっ!!入江のくせにころしもんくおもわせぶりーーーっ!!!」
「あはは、思わせ振りに聞こえたならごめんね」

ブルーベルは、トクンと心臓が跳ねて、正一をを見上げた。
入江…いつもの「ごめんね」とちがう…

正一は身をかがめて、染まったブルーベルの耳元で囁いた。





 I love you.(あいしているよ)

 I want to be with you forever.(一緒にいたいよ、いつまでも)

 Will you marry me when you grow up?(大人になったら結婚してくれるかい?)





〜Fin.〜

 

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