02

そういうわけで、かっこつけじゃなく、あけましておめでとうございます、でいってみる。

「あ、長いなコノヤローって思うんだったら、ございますを取っ払っちゃって、“あけましておめでとう”だけでもいいんだよ♪」
「そーゆーことは、はやくいってよびゃくらん!!ブルーベルはね!いま“ございます”の“ま”でくせんしてたのよっ!!」
「愛の試練の時」
「トリカブトよけいなこといわないーーーっ!!!」

しかし、確かに愛の試練。
ブルーベルは何回も、罫線のある紙に「あけましておめでとう」をうねうねとくりかえした。
紙に罫線が付いているのは、その方がせめて文字の並びだけでも、うねうねにならずにまっすぐにする為だ。

あけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとうあけましておめでとう(ry

「びゃくらん…」
「どうしたの?」

ブルーベルは、ぜーはー息をしながら言った。
「ブルーベル、ゲシュタルト崩壊おこしそうよ…」(注1)
「ゲシュタルト崩壊、は漢字で言えるんだね。とりあえず、外国人の女の子が一所懸命書くのなら、このレベルでいいんじゃないかな」

少しはうねうねがましになってきた辺りで、「あけましておめでとう」はクリアということにする。

「びゃくらん。これだけじゃたりないんでしょ?」
「んー、別にこれだけでもいいんだけど、ちょっと素っ気ないかもしれないね。ひとことメッセージを添えた方がいいかもね」

添え文のおさらい。

旧年中はお世話になりました。
本年も宜しくお願いします。

「平成○○年元旦」など日付を入れる。

「は、お、…に、なりました。…も、…しく、お…い、します???」
「あ、これはね」

〜ひらがな〜

きゅうねんちゅうはおせわになりました。
ほんねんもよろしくおねがいします。

・・・・・・・・・・。

「ちょっと!ブルーベルって、どのへん入江におせわになったのっ!?」
「世話かけまくりじゃねーか電波。お前のオコサマな感じとワガママ全開のキャラクターで、どんだけ入江が折れてやったんだ?殆ど子守りじゃねーかよ」
「うっさいそっちこそでんぱーーー!!!ブルーベルは、ワガママなのがキュートなのよっ!!<小悪魔女子>はモテるのよっ!!」
「何で、小悪魔女子は漢字で言えるんだよ。ってゆーか、小悪魔ってのは、恋愛でそういう駆け引きが出来る女のテクニックだぜ。お前は、白蘭様と桔梗と入江に甘やかされてるだけのワガママ娘だろーが」
「…………」

ブルーベルは、黙った。
言い返せなかった。

兄のように可愛がってくれる白蘭。落ち着いていて面倒をみてくれる桔梗。

(ごめんね)

入江は、なにもわるくないのに。
ブルーベルがわるいときまで、あやまってゆるしてくれる、入江……

優雅な手さばきで、ティーセットの皿が飛んで、ザクロの眉間にガッとヒットした。
「何すんだ桔梗ー!!眉間って急所じゃねえか!!」
「急所にくらう貴方が間抜けなのです。貴方も大人なら、少しは大人らしい言葉を選びなさい」

ブーメランの如くリターンしてきた皿を華麗にキャッチして、桔梗は何事もなくティーセットを片付けにゆき、ザクロもいってーなぁとぼやきながら席を立った。

ブルーベルは、うるっとした目をぐいと乱暴に袖でぬぐった。

「…ブルーベル、おせわになりまくりました、ってかくわ」
「えっと、ブルーベル、そこまで書かなくてもいいんじゃないかな」

白蘭は、ブルーベルの頭をぽんぽんした。
「ブルーベルと正チャンはね、お世話になったとかお世話したとか、そういう関係じゃないんだよ。恋人同士はね、ふたりで幸せにいっしょにいられれば、それでいいんだよ」

ブルーベルに、落雷した。
「こ…こここここ、こい、びと…!」
「アレ?当たり前だと思ってたんだけど」

確かに、それで合っている。
正一からも、恋人だよと言って貰っている。自分も、そうだと思っている。

「で、でもほかのひとにいわれるのは、なんだかズガーンっていうかんじなのよ!!!」
「そういうもん?まあ、正チャンはブルーベルといる時、とっても優しいお顔で笑っていたから、……僕はあんな風に笑いかけて貰ったことないから、正チャンにとってブルーベルはとっても特別で、大切な女の子なんだよ」

ブルーベルは、赤くなった。

……だって。
ゆいいつの、とくべつを、ブルーベルがあげて、入江もくれたんだもの。

「去年の事まで書くと長くなっちゃうし、今年どうするかに絞った方がいいんじゃないかな」
「……ことし?」
「本年、っていうのと同じ意味。でも、本年っていうと、お堅い感じになっちゃうから、ことし、の方が仲良しな感じでいいんじゃないかな」
「…………」

なかよし。

「ちょっとびゃくらん…!こ、ここここいびと、くらいズガーンよ!!」
「アレ?そうなの?でも、今年も恋人でいて下さい、って来年以降が保証されてないっぽい雰囲気がしない?」

そんな気がする…!却下。

「でもさ、今年もなかよしでいようね、だったら未来がある感じがしない?」
「するけど!おもいきりハズカシーかんじがするのってきのせい!?」

恥ずかしいので、取りあえず脇に置いておく。
ブルーベルは考えた。

「…ことしもなかよくしてね」
「あ、それいいんじゃない?ナチュラルだし、文字数も少ないから、ブルーベルも書きやすいんじゃないかな」

採用。

ブルーベルは、うねうねと書き始めた。
「なかよくしてね、の“な”に、すでにプチさついをかんじるわ…!」
「そうだねえ。日本の小学生でも書きづらい字らしいし」
「……しょうがくせい。」

ブルーベルは叫んだ。
「ジャッポーネのしょうがくせいに、ぜったいかってやるわ!!!」

負けず嫌いブルーベル。

ことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてねことしもなかよくしてね(ry

ブルーベルは、ペンを持つ手が、ぷるぷると震えた。
「びゃくらん…!やっぱり…ゲシュタルト崩壊しそうよ…」
「んじゃ、本格的何の字か分かんなくなっちゃう前に、これでオッケーってことにしない?」

そして、年賀状は出来上がった。


『あけましておめでとう

 ことしもなかよくしてね。』


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注1:簡単に言うと、同じ文字の集合を見ていると(たとえば、ああああああ×100とかそれ以上とか)、アレ?「あ」ってこんな形だっけ?何の文字だっけ??とわけわかんなくなってくる現象のこと。
 

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