01

ブルーベルが入園したときから、その子はもう幼稚園にいた。
あとから、名札の色で、年長さんなんだってわかった。

別に、気になった…訳じゃないわ。
だって、「違う」やつって、イヤでも目に入らない?

だって、ブルーベル自身がそうだもん。
ガイジンだから青い目なのはそんなもんだけど、青い髪は染めてるミュージシャンくらいしかいないんだろうし、地毛のブルーベルはうんと目立ってたと思う。

「おまえ、そめてんのかー?ヘンないろ」
「うまれつきよっ!ブルーベルのうつくしさがわかんないあんたのあたまがヘンなんでしょずがいこつむくぞごるぁーーー!!!」

ブルーベルは負けない!
何言われたって絶対にロングヘアよ!って思ってた。

実際、堂々としてたら、お友達…っていうか、遊び相手は確保したわ。
例えば、ナントカ戦隊ごっこをしてる男の子たち。コドモの癖に、結構いっちょ前に男で売ってて、「おんなとなんかあそばねーよ」とか、意地悪なんだか気障っちいんだか、そーゆータイプ。

「にゅっ!ブルーベルのほうが、ずっとずっとつよいのよっ!!とうっ!!!」

どがしゃああああ!!!

男を従えるのは、女の子をそうするよりずっと簡単よ。
単純だもの。「アイツの方が強い」って思わせたら、ブルーベルが格上よ。

その点、女の子はちょっと厄介だわ。
基本、女の子は「横並び」が建前なのよ。力関係は、水面下の複雑なバトルが必要で、陰湿なモノが大っ嫌いなブルーベルには性に合わないわ。

「にゅっ!はてろーーーっ!!!」

どっかーん。

ふっ。ブルーベル、ドッジボールでも無双よ。
サッカーでオーバーヘッドやったときには、すげー!!!って言われたわ。
「あたりまえだのくらっかーよ。あたしをだれだとおもってんの?」

ブルーベルは、青い髪で強くて目立ちまくりだったわ。
……でも、あの子は、弱っちくてひっそりしてるのに、目立ってた。

赤茶の癖っ毛に、緑の目。あと、何人か他にも見かけるけど、メガネ。

基本、誰とも遊んでない。友達の輪に交ざるのは、先生に「ほら、みんなと遊ぼうね」とか「お外で遊ぼうね」って手を引かれてくる時くらい。
その子はおとなしく先生についてくるし、うんとイヤそうな顔をしてる訳でもないんだけど、あんまり気が進まないんだなーっていうのくらいはブルーベルにも分かった。

「ちょっと。あんた」
「…………」
「にゅーっ!むししてんじゃないわよヘタレっ!」

ビシィ!!って指差してやったら、その子は初めて、少し驚いた顔でブルーベルを見た。
無視したんじゃなくて、本当に自分に声をかけられたのが分からなかった、っていう顔。

「イヤならイヤってハッキリいいなさいよ」
「…………」
「せんせいも、なにイジワルしてんの?そいつ、ぜんぜんまざりたそうじゃないよ。たのしそうじゃないよ。イジメ?」

先生は、にこにこスマイル0円で言った。
「みんなで仲良く遊んだ方が方が楽しいでしょう?」
「たのしいかどうかは、あんたがきめることじゃないわよ。そこのメガネがじぶんできめるのよ」

先生、困った顔。
で、先生もその子も黙っちゃったから、ブルーベルはイラッとしちゃった。

「いーわよっ!だったら、しばらくブルーベルがそいつのめんどうみてあげるわ。それでいーでしょ?」

ブルーベル、その子の手を握ってずんずん歩いた。
きっと、この子はあんまり人がいないところがいいんだろうなあって、園舎の裏に連れてった。

「みるからに、よわっちくて、どんくさそうだわ」
「…………」
「せんたいものやったら、けりくらっていっぱつでふっとぶわ」
「…………」
「ドッジボールはいちばんはじめにあんたがやられるわ」
「…………」
「サッカーでは、はんたいにボールがまわってこないわ」
「…………」

ブルーベル、結構ずけずけ言ったんだけど、その子は怒らなかった。
「うん…。そうだと思う…。僕、何でもダメだから」
「…………」

ちょっと。何よコレ。先生よりも、ブルーベルがこの子をいじめてるみたいじゃないの。
でも、ブルーベルは、初めてこの子と話をしたのに、この子って目立つなあと思ってた理由を探してみた。

「……あんた、ときどき、ぶあついほん、よんでるでしょ」
「あ…その本はPTA図書で、幼稚園がおとなに貸し出ししてる本なんだ。先生に聞いたら、読んでもいいよって言われたから」
「…………」

ブルーベル、にゅにゅーーーっ!!て叫んだ。
「なによー!あんた、メチャクチャあたまいいんじゃないのよー!!なんでもダメとか、イヤミったらしいこといってんじゃないわよ!!あんたなんか、“めいもんこう”にいって、“いちりゅうだいがく”にいって、“こっかいっしゅ”にごうかくしたら、じんせいかちぐみじゃないのーーー!!!」
「えっと…。国家一種とか、よく知ってるね……」

その子は、困ったように笑った。
「僕は、読書は好きだけど、それが頭がいいっていうことなのかどうかは分からないし、国家一種の公務員で勝ち組になることが夢な訳じゃないんだ」

ブルーベル、むーって眉を寄せた。これは、全然分からないわ。おとなの本と同じくらい分からないわ。
 

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