02

「まけたいの?」
「そういうわけじゃ…ないんだけど」
「はっきりしないわねー。ブルーベルは、まけるなんてゆるせないわ。しょうらいは、オリンピックのひょうしょうだいよ。てっぺんよ。ほかはぜんいんブルーベルにひざまずけばいいのよ」
「女王様みたいだね…」
「じょおうじゃなくて、にんぎょひめよ。ブルーベルは、だれよりもはやくおよぐのよ」
「へえ…。泳ぐの、好きなんだ」

ブルーベルは、ふふんって笑った。
「だいすきよ。でも、すきなだけじゃだめよ。しょうりしなきゃ、いみがないわ。さんかすることにいぎがある、なんておおうそよ。まけてもいいやつは、やめればいいのよ。かちたいやつだけがたたかって、そのなかでかつからいみがあるのよ」
「……負けたひとの、努力は無駄なの?」
「ムダじゃないって、そのひとがおもえればムダじゃないんじゃないの?ただ、ブルーベルが、かたなきゃきがすまないだけよ。てっぺんじゃないブルーベルなんて、ブルーベルがゆるせないわ」
「そう」
「はんのううすっ!!」

くす、ってその子が笑った。
この子が笑ったの、初めて見たかも。

…アレ?

ちょっと。どーして、ブルーベルほっぺたあついのよ!?

「にゅにゅーーーっ!!なにがおかしいのよっ!」
「おかしくないよ。水泳で、オリンピックの表彰台って、すてきな夢だなあって思ったんだ」
「そーよ。すてきだなんて、あたりまえだのくらっかーよ」

でも、ブルーベルは気が付いた。
「あんた、あたまかんけいないゆめが、あるんじゃないの?」
「え…?」

その子のお顔が、かーっと赤くなった。
「…ある…けど…」
「なによ。ブルーベルはいったわよ。あんたもいいなさいよ」
「でも…ダメだと思うから…」
「ダメかどーかなんて、やってみなきゃわかんないでしょっ?…で、なによ」

その子は、ブルーベルがイライラするくらい迷って、やっと小さな声で言った。

「……ミュージシャン」
「…………………………………」

ブルーベル。黙っちゃった。
この、もそもそしゃべる感じの子が、ミュージシャン!?

「ギターとか?」
「……歌えたらいいなって…」
「ボーカル?」
「……うん」
「…………………………………」

似合わない!!かなり似合わないわっ!!!

「あはは…似合わないよね」
「に、にあわないとか、ブルーベルはまだなにもいってないわよっ!…ってゆーか!」

ブルーベルは、ビシィ!ってゆびさした。
「うたってみなさいよ」
「え…?」
「ブルーベルがおきゃくさんだい1ごうになってあげるわ。かんしゃしてよね」
「あの…はずかしいんだけど……」
「はずかしいいいいいーーーー!?」

ブルーベルは、自慢の青い髪を、きーってかきむしりたくなった。

「だれにもきかせないんなら、ボーカルじゃないでしょーーーっ!!!」
「ただの夢なんだけど…。ダメっぽいから、言ってみたの君が初めてだし」

……そうなんだ。
初めて、教えてくれたのが、ブルーベルなんだ。

アレ…?
やっぱりブルーベルのほっぺた…

「あかくなんかならないわよっ!ブルーベルがすきないろは、あお!!なのよっ!!!」
「そう。綺麗な青い髪だもんね」
「…………………………………」

ブルーベル、やっぱり真っ赤だわ!って思いながら叫んだ。
「にゅにゅーーーっ!!くらいメガネのくせに、ころしもんくーーー!!!」
「うん…。暗いメガネだよね……」
「そっち!?べつにくらくていいじゃないのっ!あかるいやつばっかりだったら、せかいのテンションたかすぎてウザいわよっ!!」
「そうなの?」
「そうよっ!とにかく、うた!うたいなさいよっ!!めいれいよっ!!!」

ブルーベルが、お姫様じゃなくて女王様な感じに叫ぶと、その子は困って、うんと恥ずかしそうな顔をしたけど、一呼吸置いて、歌い出した。

……びっくり、した。

きれいな、声…

賛美歌だった。
キリスト教系の幼稚園だったから、こどもにはこども用の賛美歌の本があったけど、その歌は、礼拝の時に先生やお母さん達…おとなが歌う曲。

「えっと…。長かったかな…。4番まである曲だから、全部歌ったんだけど……」

ブルーベルは、声をかけられて、歌が終わったことに気付いた。
……もう少し、聞いていたかったなって、ブルーベルは思った。
 

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