01

「入江!!」

屋敷に着くなり、小脇に小さな本を抱えたブルーベルが突進してきた。珍しい、と正一は思った。何度もデートしている割には、ブルーベルは恥ずかしがり屋で、素直じゃない態度を取ってしまうことも多いからだ。

「どうしたんだい?」
「入江って何座!?」

殆ど叫ぶように訊かれて、正一はしばらくの沈黙のあと、答えた。

「……知らないんだけど」
「にゅーっ!びゃくらんが言ったとおりっ!どーして!日本の男は、血液型は知ってても、星座を知らないことが多いのっ!?非常識だわっ!!」
「どうしてって…」

日常生活に、全く必要無いからだ。
かつて何となく知っていたのだが、記憶力のよい正一にしては、すっぽりと抜け落ちてしまった。

「えぇと、誕生日で決まるんだろう?僕は12月3日生まれだよ」
ふむ、とブルーベルは本を見た。どうやらその本は星座占いの本であるらしい。

「うわあああん!!射手座サイテーーーッ!!ブルーベルとの相性さいあくーーーっ!!ブルーベルは魚座なのにーーーっ!」
「……そうなんだ」
「ブルーベルは、にんぎょ!みたいにはやく泳げるんだから、魚座にきまってるでしょーーーっ!!」
「……決まってるんだ」

ブルーベルは踵を返すと、ちょうどやって来た白蘭に飛び付いた。
「わああああん!!入江射手座だったーっ!!」
「アハハハ、そう言えばそうだね」

正一は、何が何だわからない。

「でも僕、ブルーベルと相性が悪いなんて、思ったことないんだけど」
「…………」

ブルーベルは、白蘭に貼り付いたままだ。だが、白蘭はブルーベルの頭をよしよしと撫でながら笑った。
「ほら、正チャンはブルーベルをいつもエスコートしてくれるロマンチストで、同じくロマンチック大好きなブルーベルと相性がいいでしょ?人生を懸けるほど一途に相手を愛しちゃうブルーベルと、情熱的な正チャンは相性バッチリでしょ?」
「バッチリじゃないわっ!射手座は、ねらったあいてをうちおとす、“恋多き人”っていうサイアクなんだからーーーっ!!」
「でもさあ、実際の正チャンは、恋多き人じゃないでしょ?ブルーベルを撃ち落として、そっからは一途でしょ?」
「撃ち落とすとか、ゲーム的な言い方はやめて下さいよっ!白蘭サンじゃあるまいし!!」

…ちら、とブルーベルは正一を振り返った。
口調で何となく分かったが、白蘭に腹を立てていると言うよりも、やや恥ずかしがっている気配で顔が少し赤らんでいる。
そして、正一も気付いた。ブルーベルの頬は赤くて、別に正一を最低最悪と思っている訳ではなさそうだ。

「正チャン、正チャン」
可笑しそうに白蘭が笑った。
「日本ではさあ、よく“何型?”って血液型を訊かれるじゃない?イタリアでは、それが生まれ星座なんだよ」

成程、と正一は納得した。
「4種類しかない血液型で性格を分類するなんて、非科学的ですけどね。でも、解明されていないだけかも知れません。ちなみに、僕は残念なくらいにA型だと思っています」
「あ、僕はAB型ね♪」
「そうですか、何となく、変わった人だなと思うと、左利きかAB型で不思議に思ったことはあります。…ああ、変わった人というのは、ユニークという印象です。白蘭サン以外は」
「アレ?僕は??」
「自分の胸に聞いて下さい」

正一は、ブルーベルに訊いてみた。
「ブルーベルの血液型は何だい?」
「そんなの知ってる訳ないでしょ。知ってんのは輸血する人くらいでしょ」

……まあ、現実的ではある。
日本でも、自分の血液型を知っていても、医学的な面ではさほど意味はない。知っていたところで、実際に輸血が必要な場面ではその場で正しい検査をされるからだ。

例外的に知っておいた方がよいケースもある。
それは、Rhマイナスの場合だ。輸血する際には稀少であるし、手術の場合以外でも、妊娠で胎児と血液型が違うのはリスクが高い。

「それで、その星座占いというのは、当たっているものなんですか?」
「天秤座のびゃくらんは、かなりあたってるわ」

〜特徴〜

聞き上手
八方美人
妙なマニアックさ
一貫性がない
誰にでも受け入れてもらいやすいタイプ

「ああ…白蘭サンって、人の話を聞いてないようで、案外聞いてますよね。それでガッチリ相手の心を掴んで甘言のネタにしますよね。ゲームへのこだわりは、かなりマニアックですよね。そしてズルしますよね。一貫性のない気紛れの権化ですよね。そのくせ、他人受けが良くて愛されまくりの人気者です。それで当然でしょ♪みたいな感じなのが僕としてはムカつきますが」
「正チャン…君、本当に僕の親友?」
「親友として、理解者でありたいと思います」

〜特徴その2〜

美形
色香
センス良し
バランス感覚良し
愛され上手
リア充でも浮気者

「異存ありません」
「ちょっと正チャン!君今、世界中の天秤座を敵に回したと思うんだよ!?」
「敵に回していません。浮気者と程遠い天秤座の人はいくらでもいます。白蘭サンが浮気しなければいいだけです。八方美人も、誰にでも愛想が悪いよりはかなりマシです。これからは誠実に生きて下さい」
「正チャン!僕って誠実だと思わない?記憶を受け取ってからは、かなり誠実に生きてるんだってば!!」
「ええ。ユニさんとγの間に割り込むのを趣味にしている程度に誠実ですね」
「入江…びゃくらんが、orz ってなってるわ。ちょっとはてかげんしてあげてくれる?」
「そうだね。白蘭サンも世の中の誠実な天秤座の人を見習って、改心するかもしれないし」
「入江…フォローになってないわ……」


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