02
うるっさい。
おとこのくせに、いつまでメソメソしてんのよ。
あと、ソイツのママン。あんたもうるっさいわよ。
きーきーサルみたいにわめきちらしてんじゃないわよ。
でも…やだな。
また、ブルーベルのおかあさんがよびだされるの。
ごめんなさい、っていわないブルーベルのかわりに、おかあさんが、ほんとうにもうしわけないっていうおかおで、「もうしわけございません」ってあたまをさげるのよ。
そんなこと、しなくていいのに。
いえにかえってから、ブルーベルにかくれてなかなくたっていいのに。
……ないちゃうのは、ブルーベルが「こまったこ」……ひょっとしたら「わるいこ」にそだっちゃったって、かなしいからなのかな…
ブルーベル、わるいこ?
あいつのかおなぐって、ひっかきまくったのは、「わるい」ことなのかもしれない、けど。
ブルーベルをけなしたあいつのほうが、さきにわるくって、げんいんをつくって、ブルーベルをきずつけて……
……すっごくくやしいけど、ブルーベルはばかみたいにきずついたのよ。
あおい、かみのけ。
あおいめ。
「ヘンないろ。おまえホントはひろわれたヤツだろ」
これでも、ブルーベルはがまんしなきゃいけなかったの?
がまんできなかったブルーベルは、わるいこ?
おかあさん。おねがい。
もう、「もうしわけございませんでした」っていわないでよ。
だって、あやまるのは、こっちがわるかった、っていういみなのよ。
「ブルーベル!」
……びっくりした。
だって、きたのはおかあさんじゃなかったから。
「どーして、ショーイチ?」
ショーイチは、ブルーベルのおにいちゃん。
…だけど、おにいちゃんって、よんでない。
よびたくないから、よばないの。
「ああ、今日は母さんが出かけていて、僕が電話を取ったんだよ」
そういえば、ショーイチはにちようびも「ぶんかさい」だったから、げつようびのきょうは「だいきゅう」っていうおやすみだったんだわ。
……きょうは、おかあさんのかわりに、ショーイチがあやまるのかな。
ショーイチは、やさしいから、なにかっていうと「ごめんね」っていうんだもの。
「何があったんだい?話してご覧」
「…………」
「僕はブルーベルを信じるよ。君は、僕に嘘を吐かないんだから。全部本当のことだって信じるよ」
かがみこんで、めせんのたかさをあわせてくれる、やさしい「おにいちゃん」。
ショーイチはすきだけど、「ごめんなさい」とおなじくらい「おにいちゃん」っていってあげない。
でも、ショーイチがしんじてくれるっていうから、ブルーベルはいままであったことを、ぜんぶはなした。
ブルーベルのあおいかみのけ、ヘンっていわれつづけてること。
めもあおいから、おかあさんのこどもじゃないっていわれてること。
だから、ゆるせなくって、おもいきりなぐって、ちがでるまで、ねこみたいにひっかいてやったこと。
「まえは、なぐっただけ。ひっかいて、はなぢがでるまでやりかえしたのは、はじめてよ。でも、ブルーベルをいじめたのはそっちがさきなのに、なぐられたって、なくのよ。せんせいは、なぐっちゃダメだし、なかせちゃダメっていうのよ」
そこで、またアイツのママンがきーきーさわいだ。
ブルーベルがらんぼうでわるいっていってる。
「静かにしてくれませんか。僕は今、この子と話をしているんです」
ショーイチが、そのママンに、おおきなこえじゃないけどピシッといったから、ブルーベルはびっくりした。うるさいあっちのママンもおどろいたかおしてだまった。
「それだけ?」
「おかあさんが、ごめんなさいってあやまりにきたのは、たぶん5かいくらい。でも、ブルーベルは、まいにちいじわるなこといわれてるわ。いっぱい、まいにちがまんしてるわ。きょうは、ソイツをぶんなぐってひっかいたけど、ソイツだけじゃないのよ。そいつの“おともだち”も、むれてブルーベルにひどいことをいうのよ」
……なくもんか。
ブルーベルは、あいつみたいに「ひきょうもの」にはならないんだから。
なくのは、ズルイわ。
ないただけで、「わるくない」「かわいそう」になるのは、ブルーベルはイヤなのよ。
「でも、ブルーベルには、あんなやつは、“おともだち”じゃないよ…」
こえが、ふるえる。ないちゃ、ダメなのに。
「……おとなだって、キライなやつとは、なかよくしてないじゃないの!なのに、せんせいは、“みんなおともだち”で“みんなとなかよくしようね”って、“むりなんだい”をおしつけるのよ!!ブルーベルばっかり“ごめんね”っていいなさいっていうのよ!!」
さけんで。
ブルーベル…ないちゃった……
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