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ロボット大会で、すてきな女の子と出会った。
国際大会だから、すごくレベルが高い。こういう機械系は上に行けば行くほど男が多くて、だからその小柄な女の子はとても人目を引いた。

……ううん。ただ、ウチが一目惚れしたって、だからその子にばかり目で追うようになってしまっただけかもしれない。

ウチの憧れの技術大国・日本代表の女の子。
ウチの仲間は、お前は日本産なら何でもいいのか?緑茶でもチャブダイでもメガネでも、とか失礼なこと言ったけど、ウチの目に映るその子は、とてもとても、可愛かったんだ。

紅茶色の髪もグリーンアイズも、確かにウチが憧れた黒髪に黒い瞳じゃなかったけど、ウチにはその子が世界に一輪だけのヤマトナデシコ。
可愛くて、それでいて芯の強い撫子の花。

ウチの方から、すごくドキドキしながら日本語で声をかけたら、その子はびっくりしてたけど、ウチが親日家なのとお互い技術屋なのとで、案外すぐに友達認定してもらえたみたいで嬉しかった。

(トーナメントの左右に分かれてるから、日本とイタリアが当たるのは決勝だね)
(決勝で待ってるよ、スパナ)

ウチ、このときの正一(って、名前教えて貰えた)の言葉と笑顔に、一発で胸を撃ち抜かれた。
だって、すごい。正一は世界大会に出て来られたから御の字とか、とりあえずは一勝とか、そんな子じゃなかったんだ。
必ず決勝に行くし優勝するって思って、この大会に来たんだ。

緊張するとおなかが痛くなるらしいけど、強い決意と強さを持つサムライガール正一に、ウチは恋してるんだって思った。
メカばっかりだったウチ、運命の初恋。

でも、ウチにとっては運命でも、正一にとって運命かどうかは分からないから、ウチは今までたいして信じてもいなかった神様に祈った。

(あのこが、振り向いてくれますように)

でも、ウチはすぐに気付いてしまった。
だってウチ、姿を見かければ遠くても正一のこと見つめてたから。

正一は、日本のチームメイトの男子のひとりと話すとき、とても嬉しそうな顔をするんだって。笑うときは、他の誰にも向けない、はにかんだ笑顔を向けるんだ…って。

ウチ、失恋。
でも諦め切れなくて、もう1年先に、きっと正一ならまた世界の舞台に出てくるんだって信じて、紅茶色の髪と緑の瞳の面影を思い続けてた。

そして、ウチの願いは叶って、再会した正一はウチのことを覚えていてくれた。

(今年も僕が勝つよ?スパナ)

今年も強気な正一の宣戦布告。
去年は決勝で負けたウチ、今回こそ勝って正一にカッコいいとこ見せたい。

でも、ウチは気になることがあった。

(正一、去年日本のリーダーっぽかった奴、今年はいないのか?)

(あ…先輩は、もう大学受験の為に引退しちゃったから…。でも、優秀なひとだから、どこの大学でも受かると思うよ)

正一は笑顔だけど、それはどこか無理をしていて、ウチは分かってしまった。
正一も、失恋したんだ…って。そして、優秀な後輩の正一は、そのセンパイにあとを託されて、恋する心はひとことも告げられなかったんだろうって…

(あのこが、振り向いてくれますように)

そう願ったウチだけど、自分にチャンスが巡ってきたなんて、喜ぶことは出来なかった。
正一は悲しかったんだし、今もウチが掘り返したから切ない気持ちを思い出させてしまったんだって思ったら、ウチは本当に可哀想なことをしてしまったんだって、後悔した。

ウチは、もういちど神様に祈った。

(あのこが、心から、わらってくれますように)

正一とは3年連続で決勝で当たって3連続で負けて、カッコいいとこ見せられなかったウチ。だから、やっぱり振り向いてもらえなかったのかな…なんて。
ちょっとでも思ったウチ、諦めが悪くって、でも簡単に諦め切れないくらい、1年に1度しか会えなくても想い続けていられるくらい、一所懸命に恋してたと思う。

(スパナは、来年からどうするの?)

(…イタリアは、高校は19歳までだから。次どうするかはこれから考えるよ)

その頃にはマフィアの技術屋になっていたウチ、大嘘吐き。
でも、神様はひとつ、ウチの祈りを聞いていてくれた。

(そうなんだ。でも、スパナなら、いつか世界で活躍するようになって、また会えるかも知れないね)

アメリカの大学に進学するって言った正一は、これからの未来に夢を膨らませていて、本当に嬉しそうに笑ってくれたから。

(あのこが、心から、わらってくれますように)

この願いだけは、叶ったのかな。
そして、ウチは、この正一の笑顔をこの恋のさいごの記憶として…


(あのこが、幸せになってくれますように…)





そうして、長い時が過ぎた。
ウチはひたすらメカ弄りで、恋をすることはなかった。
ウチは見かけはどうやら女受けするみたいで、モーションかけられて何となく付き合ったことはあるけど、キスしていてもセックスしていても胸が高鳴ることはなくて、薄情で悪い男だったと思う。

ジェッソファミリーっていう新興マフィアが勢力を拡大しているって聞いても、ウチはどうとも思わなかった。
どう戦うかなんて、それはボスやその側近と、炎やらリングやら匣やら使える奴らが決めることだ。技術屋のウチは、そのどれでもないんだから。

ただ、技術屋の視点で、そのジェッソがほかのマフィアと違って軍隊みたいな手を使ってくるなあって感じたから、抗争というよりも戦争を想定した兵器の開発の方に方向転換した方がいいのかな、くらいに思った程度だ。

マフィアは戦争屋じゃないんだし、ジッリョネロはジェッソに負けて、ユニ姫を人質に取られて、一切逆らえない形で吸収合併された。
まあ、そんなもんだよな、とウチはミルフィオーレと名前を変えたファミリーに従うことにした。


「…君には、Bランクの地位を与える。各部隊の隊長クラスでもCランクの者がいるくらいだから、君の任務はそのくらいにミルフィオーレの機密で、君はその研究開発で必ず成果を上げなければならない。そうでないなら始末される。…そういう立場だと理解して構わない」

ウチは、はっとした。この声、は…


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