01

泣いちゃった。
僕は、君が好きで好きで、だから食べちゃったのに。

そう。食べちゃいたいほど可愛い、っていう感じ。
柔らかそうなほっぺなんて、つんつんって指でつつきたくなるよね。そしたら本当にぷにぷに柔らかくって、当然にキスしたくなるよ。

(正チャンってば色白だから、照れるとピンク色になってかっわいー♪)

(全身真っ白な白蘭サンに言われたくないです!)

(どうして真っ白って知ってるの?僕、君の前で脱いだことあったっけ?ないんだったら今ここで脱いじゃってもいいけど)

(ぬ、脱がないで下さいーーー!!!)

(アハハハッ、あとさ、全身じゃないんだよ。僕の髪は銀色の美髪ね♪)

(自分で美髪って…いえ、いいです…)

正チャンは、自分の赤茶の癖っ毛はあまり好きじゃないみたい。
僕はふわさらな紅茶色の正チャンの髪の毛、好きなのになあ。

君はね、きっと全部全部柔らかいの。マシマロみたいに。柔らかくって甘いんだよ。
だから、僕は君が大好きで大好きで、君の柔らかさも甘さも、独り占めして食べちゃいたかったんだよ。

だからね、まずはキスから。
ほら、やっぱり君は柔らかくって甘いの。唇も、口の中も、不慣れな舌も吐息も。

正チャン、ファーストキスでしょ?
嬉しいなあ。秘密の真っ白な雪の野原を見つけて、始めの足跡を付けるみたいで。
その野原は、秘密だから僕のものだよ。ほかのヤツは知らなくていいの。
僕が見つけた真っ白な雪はね、冷たくないんだよ。あったかくってふんわり優しいんだよ。

(やめて、やめて…やめて、白蘭サン…っ)

ねえ、どうしてそんなに拒むの?どうして怯えているの?
裸の君は、とっても可愛くて綺麗なのに。

君は、女の子らしくないとか子どもっぽいとか、コンプレックスいっぱいみたいだけど、そんなの要らないよ?正チャン。

白くって、あったかくって、すべすべした君の肌は、どこもかしこも撫でてあげたい。
愛撫って素敵な言い方だよね。愛してるから、可愛い可愛いって、いっぱい撫でてあげたいし、いっぱい気持ちよくさせてあげたいんだ。

おっぱい小さいとか、そんなの気にしなくていいんだよ?
膨らみを僕の手に包み込んで優しく揉んであげると、やっぱりマシマロみたいなふわふわのフニフニ。

(イヤ…!ど…してこんなこと…)

(やめて、やめて…!)

どうしてなんて、君のことが大好きだからだよ?正チャン。
僕は、いつもいつも、何度も何度も伝えていたのに。
なのに、君ってば、僕がどんなに好きだよ好きだよ好きだよって数え切れないほど言っても信じてくれない。

言葉で足りないんだったら、行動で伝えるしかないじゃない?まあ、僕は言葉が君に伝わって、晴れて恋人同士になれたら、結局同じことしちゃうんだけど。

ねえ、僕だって足りなかったんだよ。
僕たち、お互いに誰よりも傍にいるのに、どうして友達止まりなの?どうして君は、頑なに親友です!って言い張るの?

柔らかい白いほっぺがピンク色になるんだから、君もきっと僕のことが好きなんだって思ってたけど、「きっと」なんていう心細さは、僕に似合わないと思わない?
「きっと」を「絶対」にしたかったんだよ。

ふらふら気ままな足取りで、時には鉄砲玉みたいに好き勝手に飛んでく僕のこと、君はいつも叱ったよね。ダメですよ!って。
でも、さいごには必ず許してくれる君。

(本当、仕方がないなあ、白蘭サンは)

ダメなことはダメって正チャンは僕を叱るけど、でも決して僕を見捨てることはしないんだ。

(僕は、白蘭サンを責める側になりたくないんです)

こんなにも、僕を愛してくれるひとはいないよ。
こんなにも、僕が愛したひとはいないよ。

正チャン、君だけでいいんだ。

だから、順序が違っちゃっても別にいいよね?
普通、恋人同士になってからセックスだけど、先にセックスで君を食べちゃって、親友じゃなくて恋人にしちゃえばそれでいいよね?

イヤ、やめて、って言う声が、愛撫を続けていくうちに、少しずつ小さくなって、途切れていく正チャン。
そうだよね、気持ちいいよね、素直な可愛い正チャン。

僕、こういうテクは自信有るんだ。…なんて言わないよ。ほかの女を過去の僕が何人落としたかなんて今更どうでもいいんだからさ。

ただ、挿れるときだけは、処女の正チャンはまだ気持ちよくなれないよね。
でも、ちょっとの我慢だからね。何度もシてるうちに、僕も正チャンも一緒に気持ちよくなれるんだよ。それってすごく素敵だよね。

細い足を開かせると、君は愛撫でとろけた顔を忘れて、また脅えきった顔をする。
やめて、やめて、って弱々しく訴える声は哀願のよう。

大丈夫だよ、正チャン。
これから、たっぷり僕が君を可愛がってあげるんだから。

柔らかい君の中に入り込むと、初めてらしい君の締め付け。でも、キツいのに柔らかくって優しいのは、本当君らしいよ。

大好き。愛してるよ、正チャン。
僕も、初めての君にはもっと優しくしてあげたかったのに、僕らしくもなく余裕がなくって、ちょっと荒っぽくなっちゃったかも知れない。
あ…でも、僕らしいのかな?だって、僕は君に夢中なんだから。
僕は、君と初めてひとつになれて、一糸纏わぬ裸でありのままに君を抱き締められるなんて、夢よりも幸せなんだから。

僕、すっごく、気持ちよかった。
早漏?っていうくらい早くイッちゃったのがちょっと恥ずかしいけど、そのくらい、僕が君に夢中になってたってことだよ。それに、君は早いとか遅いとか知らないだろうし、短く終わった方が痛いのも早く終わって、処女の君にはその方がいいよね?

僕は、引き抜いて、よかったよ正チャン、って気持ちよかったのを伝えてあげた。
そして、柔らかな頬にキス。

でも、僕が正チャンの隣に横になって、ロマンチックに抱き寄せてあげようとしたときだった。

ぐい、って僕が思ってもみなかった…多分、正チャンの全力で、僕の腕と胸を押し返して、くるんって僕に小さな背中を向けてしまった。

「どうしたの?正チャン」

正チャンは、応えてくれなかった。
代わりに、か細い体は震えて…ひっく、ひっく、ってしゃくり上げ始めた。

僕は、困惑した。
「ねえ、どうして泣いちゃうの?」

正チャンは、本当は声を上げて泣きたかったのだけは分かった。
でも、正チャンはその声を必死に押し殺そうとする。それでも時折泣き声は漏れて、そんな正チャンは、とても可哀想な子に見えた。

とても、恋人に初めて抱かれた女の子には、見えなかった。

(イヤ…!やめて、やめて、やめて…白蘭、さん…っ)

悲鳴さえ、僕は可愛いと思ったのに。
正チャンが言う「親友」なんていう言葉は建前で、お互いに一番傍にいた僕たちは、きっと両想いなんだから、イヤっていうのもやめてっていうのも、シャイな君らしい言葉だと思ったのに。

なのに…。僕に抱き寄せられることを拒んで、ひとり泣き続ける正チャンは、やっと恋人同士として僕と心を通わせたって思っているようには見えなかった。

「ね…正チャン」

僕は、背中からなら拒みようもないだなんて、急に自信がないことを考えて、そっと正チャンを抱き締めた。

「幸せだって思うのは…僕だけなの?」

声に出してみて、僕は自分の心臓がどくんって重苦しく鳴ったのがわかった。
もし、本当にそうだったら…こわいって、僕は怯えてた。

だって、今僕が言った通りなら、僕が正チャンにしたことは、恋人のセックスじゃなくて、レイプなんだ。

「イヤだ…。そんなの、イヤだよ。違うって言ってよ」

まだ、泣き続ける正チャンを、ぎゅって抱き締めた。
こんな時でも、正チャンの体は柔らかくって可愛いななんて思ってしまう。

「好きだよ、正チャン。好きだから、抱いたんだよ。好きで、大好きで、でも正チャンは僕を親友だからって、僕の気持ちを受け取ってくれなくって…だから、君の全部を抱いたら、僕の気持ちが伝わるって思ったんだ」

長い間、抱き締めていた。
正チャンは、しゃくり上げるのが少しずつ収まってきて、くすんって鼻を鳴らす程度になっても、黙ったままだった。

「ね…正チャン」

その沈黙に、堪えられなくなったのは、やっぱり僕の方だった。

(正チャン、ごめんね)

そう言いかけて、僕は言わなかった。
ごめんねって、便利な言葉だけど、取りあえず謝っておけばいいっていうの、今の僕にはダメだったんだ。言いたくなかったんだ。

だって、「ごめんね」って言えば、僕が悪かったことになる。僕は、正チャンに悪いことをしたことになる。
僕が、正チャンを大好きで、正チャンが可愛くて仕方がなくて、だから抱いたっていうことが、悪かったんだって、罪だったんだっていうことになるんだ。

代わりに、僕は言った。
「許してよ…正チャン」

どんな時でも、君は僕を許してくれたんだ。
たくさん叱っても、それは僕を責める言葉とは違ったんだ。

「これからも…僕の一番近くにいてよ…」

正チャンは、応えてくれないまま。
まるで、心の扉を閉じてしまったかのように。

僕は、部屋の照明を落として、呟いた。
「おやすみ…正チャン」

もういちど、そっと正チャンを背中から抱き締めて、くっついた。
香水をつけている訳でもないのに、正チャンの肌はほんのり甘い匂いがするような気がする。

甘くて、柔らかい正チャン。
泣いてしまったのは、きっと処女を失った体の痛みじゃなくて、心が傷付いたからなんだ。
一見気が強そうで、でもワガママで奔放な僕を包み込んでくれていた正チャンは、心も柔らかくて。

僕の気持ちは、君の心を傷付けるばかりだったの?正チャン…



 

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