01

ザンザスが、その母娘に出会ったのは、何年前のことだっただろうか。

「家光。お前はロリコンか?中学生と事実婚か?」← 一応配慮してイタリア語
「ちげーよ!!奈々は23だー!!」← こっちもイタリア語

その後、毎年夏になると、遠目に沢田一家を見かけることがあった。
「すげぇな…東洋の女は年を取らねえのか?」

相変わらず、家光の妻は女子中学生のように若いを通り越してあどけなく、そして純粋な朗らかさを持っていて、ザンザスは思っていた。
デレデレしやがって家光うぜえ。

家光の妻は年齢を止めているかのようであったが、そのひとり娘の方は、少しずつ成長しているらしく、今年は小学生に見える…と廊下の窓から親子を眺めてザンザスはその場を離れた。

不快だった。
事情は知っている。
沢田母娘は、娘の綱吉が「夏休み」に入ると、「おじいちゃんの家」に遊びに来るのだ。そして、遊びに来た数日間、「いつも仕事で忙しい」父親もしくは夫、と出会える設定なのだ。

沢田母娘が、どうして屋敷に滞在するかというと、まさかこの一般人の母子を、チェデフ本部に連れて行く訳にはいかないからだ。
ボンゴレ\世は、これも「家光の上司」であるおじいちゃん、という設定であるので、母子が遊びに来るなら\世の屋敷が一番無難なのだ。

……暑い、とザンザスは思った。
だが、日本の夏のような湿気が纏わり付く暑さとは違う。木陰で芝生の上に転がっているのは悪くない。

そして、そろそろと、伺うような様子の足音が近付いてくるのにも気付いていた。
かといって、ザンザスは何もしなかった。まず、歩幅が狭い。子どもだ。そして、何ら殺意どころか敵意も感じない。

「おにいちゃん…だいじょうぶ?具合悪い?」

おにいちゃんって誰だよ。…オレか。遠慮がちの気配の日本語だ。
ザンザスが薄目を開けると、沢田夫妻が連れていた女児が目に入った。

家光は妻の名しか口にしなかったが、あとでこの少女の名を知った。

……沢田綱吉。
幼いながらも、日本に渡ったボンゴレT世の血を引く、直系のボンゴレ・オブ・ザ・ブラッド。
その父家光と共に、ザンザスにとっては忌々しい血を持つ少女。

「…お前、歳いくつだ」
「ツッ君は11歳だよ」
「…………」

日本の学校制度では、小学校高学年だ。幻聴じゃないのか。
「小学2年とか3年とかじゃねえのか」
「ううん…ツッ君小さくでダメツナだけど6年生だよ」
「…………………………………」

こんなに幼い6年生がアリなのが日本か、そういや家光の嫁は中学生に見えたと思い出した。そして、少女は…綱吉は、しょんぼりとダメツナと自分で言ったのが、何となくザンザスには気に掛かった。

「お前をダメツナ呼わばりする奴は、性格のいい奴か?それともいじめっ子とかいう奴か?」
「……。性格はよく分かんないけど…。ツッ君のこといじめる。でも、ツッ君はだめな子だから、本当のことしか言ってないよ…」

何がダメなのかよく分からないが、随分お人好しの子どもだと、ザンザスは眉間に皺を刻んだ。
それが意地悪というレベルならば、真に受けるのも馬鹿馬鹿しい。聞き流しておけばいいのだ。

……否、オレはダメだな。絶対にかっ消す。

「本当だろうが嘘だろうが関係ねえ。お前に優しくする奴はいねえのか?」

…優しい。
そんな言葉を口にしたのは記憶を遡っても前例が無いと、ザンザスの眉間の皺が増えた。

「いる…。お母さんとか、ちょっとしかいないけど、おともだちとか…」
「だったら、そっちを信じていろ」

ザンザスは立ち上がると、服についた草を軽く払った。
「てめえを悪く言う奴の事を本気にするな。お前に…」

(優しい)

「お前に優しくする奴の言うことを信じろ」

少女のライトブラウンの瞳が、ザンザスを見上げた。
そんなことは、思い付きもしなかった…という顔だ。

「ああ、家光の野郎はお前を何ていう?」

少女が、目に見えてしょんぼりとした。
「ダメな子ほど可愛いって言う……」

ザンザスは思った。家光いっぺん氏ね。

「日本語ってことばは、始めよりも終わりの方が大事だ。始めの部分は無視して“可愛い”の分だけ信じておけ」

少女のしょんぼりが、消えた。つぶらな瞳がザンザスを見上げて笑った。

「お兄ちゃん…、優しいね」
「…………」
「優しいから、ツッ君信じるね」

ザンザスは、不覚にもこんな小娘に意表を突かれたと、不機嫌になった。
「オレが優しいなんざ、初耳だな」
「じゃあ、みんながおにいちゃんのこと、ちゃんと知らないからだよ」

幼い笑顔の、幼い言葉。
ザンザスの本性を知っているからこそ、誰も彼もザンザスを怖れるか崇拝するか、どちらかしかないものを。

だが、ザンザスはこの少女の誤解をいちいち解いてやることもないと思った。
どうせ、年に1度、家光に会いに来るだけの少女だ。放っておけばいい。

背を向けて歩き出したザンザスに、少女が叫んだ。
「ねえ、おにいちゃんは、だぁれ?」
「...XANXUS」

余計なことだと思いながら、純粋な少女相手に、言ってやりたくなった。

「お前が、おじいちゃんとか呼んでいるジジイの息子だとよ。…一応な」


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