02

「あ…」
森の向こうに、灯りが見える。そして、人々の賑わいが聞こえる。

森を抜けた、と思ったら、ブルーベルは正一に手を引かれて、屋台がたくさん建ち並ぶ道に立っていた。
そこには、たくさんの人々が行き交って、特に若い女の人は浴衣姿が多いようだ。

「ここ…どこ?」
「花火大会は、お祭りなんだよ。花火を見るのにいい場所をとるために、早朝からそこで陣取りをしたまま動かない人達も多いんだけど、ブルーベルと一緒に来るのなら、お祭りも楽しみたいと思って」
「にゅ。たべものいっぱい」

ブルーベルは、日本の屋台は初めてだ。いっぱいありすぎて迷っちゃうな…と思っていると、ふと気付いた。

「おとこのひとって、ゆかた少ないね。入江は日本人でしょ。どうしてゆかたきないの?」
「僕もそうだけど、持っている男の人が少ないからじゃないのかな。一般的に、女性の方がおしゃれだろうから」

正一は苦笑した。
「和服は慣れないと着付けが難しいし、下手だと簡単に気崩れてしまうし、気崩れたときに自分じゃ直せないから、なかなか大変なんだよ」
「つまり、入江はやっぱりおしゃれじゃなくて、おべんきょうとゲームいがいはぶきようなのね」
「うん、まあ…そうだね…」

正一は困って笑いつつも気付いた。
「ブルーベルは、綺麗に着付けてあるんだね。美容室でも行ったの?」
「ちがうわ。なんでもできちゃう桔梗がやったのよ」
「…………」

着付ける為には、脱がなければならない。

「べ、べつにいいでしょーっ!シャワーだって、ブルーベルだけじゃきれいにあらえないから、桔梗にてつだってもらってるもん!」
「……そうなんだ」

にゅーっ!!入江、おもいきりふくざつなおかおをしてるわ!

「ブルーベル」
「な、ななななに?」
「ブルーベルは、僕と一緒にシャワーでも平気?」

・・・・・・・・・・。

「へいきなわけないでしょーっ!桔梗はね、ブルーベルのおにいちゃんとおとうさんとおかあさんが、がったいしたみたいなかんじなのよ!だからシャワーもきつけもいいのっ!」

……合体。

「入江!どーしてわらってるのよっ」
「……安心したんだよ」
「どーして、あんしんするのよ」
「君がね、僕は平気じゃないって言ったから。僕も、着付けが出来たとしても、君の着付けは無理だよ。シャワーはもっと無理だよ。僕の方が、困ってしまうから」

ブルーベルは、かーっと赤くなった。
「どうして、こまるの。ブルーベルは、こどもよ」
「困るよ。恋人だから」

ブルーベルは、いつもの「入江のくせにころしもんくーーー!!!」…が出なかった。
そして、跳ねる胸をどうにかしようと、懸命に別の話題を探した。

「KIMONOの半ズボンヴァージョンみたいもあるけど」
「ああ、あれはね、甚平って言って、確かに和服の一種だよ。最近は女の人も着るけど、本来は男の人と子どもの部屋着だったものなんだ」
「あれなら、入江もかんたんにきられるんじゃない?」
「…………」

正一が黙ったので、ブルーベルは不思議に思って見上げた。
「すきじゃないの?」
「まあ…、そうだね。涼しそうではあるけど」

正一は、聞き返した。
「アレを、白蘭サンや桔梗が着てたらどう思う?デイジーでもいいんだけど」

・・・・・・・・・・。

ブルーベルは、脳内に甚平の白蘭と桔梗とデイジーを思い浮かべた。
「ありえない!ありえないわっ!!ありうるとしたら、よっぱらいのザクロくらいよ!」
「うん…僕も、心からそう思うよ。それから、甚平抜きで、半ズボンってどう思う?デイジーはともかく、白蘭サンと桔梗」

ブルーベルは、再び思い浮かべてみた。
「いまいち…どころじゃないわ。いまひゃくくらいでもNGよ。びゃくらんはちょうぜつイケメンじゃなくなるし、ききょうもびれいじゃなくなるわ」
「まあ、あのふたりには、普通に似合わないよね。あと、現実問題として、あれって普通に男の人のすね毛がバッチリだしね」

ブルーベルは、どっぎゃあぁぁんとショックを受けた。

「にゅーっ!!いやあああーーー!!!」
「海水浴の時に見ているはずだけど?」
「あれとは、なにかがちがうのよ!!!」
「…っていう反応をされると思ったから、僕も甚平や短パンは避けたんだよね。…ブルーベル、大丈夫?…大丈夫じゃ、なさそうだね」

正一は、女の子って難しいなあと思いながら、ぐらんとしているブルーベルを支えた。
とりあえず、別の話題を探そう。
「いっぱい屋台が出てるから、何か食べてみる?」

そうよ…ブルーベルは、屋台でなにかおいしいものをたべたいっておもっていたのよ。
ブルーベルは、きょろきょろと辺りを見渡した。

「あの、くるんってまるくするの、なに?」
「ああ、たこ焼きだよ。買ってみようか」

正一は、1パック買った。
「どうして、ひとつだけ?」
「10個入っているんだよ。色んな屋台を回るなら、どれでも半分こにした方がいいよ。…あ、楊枝1本だ。2本って言えばよかったな」

ブルーベルは、再びがーんとショックを受けた。

……かんせつきす!!


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