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「捨てなくてよかった♪」

エレガントな、どっかのお嬢様みたいなブラウスやワンピース。膝丈のスカート。

正確には、捨てようと思ったのに捨てられなかった服。
この世界の正チャンには、今までのセクシーモードな服を着たって色仕掛けは通用しないみたいだし、正チャンが好きなのは清楚な感じなのかなあ?って買い揃えた服。

正チャンに失恋しちゃったんだって思い込んだ僕は、元のセクシーモードに戻ったんだけど、恋と一緒にこの服も全部捨てちゃえって思ったのに、失恋しても僕の片想いだけは残っていて、どうしても捨てられなかったんだ。

香水も、同じフローラル系でも官能的なのが僕はお気に入りだったんだけど、ふわって優しい感じの香水に変えてみた。
これも、正チャンはこっちの方が好きかなあって。

靴もそう。
一番美脚に見えるヒールの高さって知ってる?
まあ、足の長さにも寄るけど、大雑把に言えば7cm辺り。

でも、その7cmヒールを履くと、正チャンより明らかに背が高く見えちゃうから、3cmヒールのパンプスを探したの。
その4cmの違いが、案外違ってて、僕の乙女心なんだよ?

それに、3cmパンプスで僕が満足するおしゃれなものって、なかなか無いの。
いくつもショップを見て回って、僕が満足する靴をやっと探し出して、これって正チャン好きなかあ?って考え込んで。

今にして思えば、ヒールの高さで変わる背丈はともかく、靴のデザインまで見てくれるような正チャンじゃないんだけど。

本当、僕は一所懸命だったんだよ?
正チャンに好きになってもらいたくって。でも、何だか正チャンは僕が頑張っても僕の方を見てくれなくて、だからせめて振り向いて欲しくって、切ない気持ちでいっぱい努力して…

でも、今の僕は幸せ。

正チャンが、僕に会えなくなるのは寂しいって、本当の気持ちを教えてくれたから。
いっぱい緊張しながら、それでも僕を抱き締めて、キスして、好きですって言ってくれたから。
傍にいて欲しいって、真面目な正チャンが言うんだから、ひょっとしてプロポーズ級なのかな?ってドキドキすることばをくれたから。

ほかの世界の正チャンなら、もっと簡単にすぐに照れまくってくれて、それが嬉しくって堪らない僕は、突進する勢いで飛び付いてむぎゅーってして、ダイスキ♪っていっぱい言って、正チャンの真っ赤なほっぺたにキスしてたんだけど。

この世界の僕たちは違う。
正チャンは落ち着いた紳士な感じの男の子で、僕のことを好きになってくれても、僕がダイブして抱き付くような雰囲気にはならなかった。

それでも、大学で出会うと、「おはようございます、白蘭サン」って、優しく笑ってくれる。
僕は、そんな正チャンにドキンとして、僕じゃないみたいにおとなしく「おはよ、正チャン」って応えるの。

そっと、手を繋いでもらって歩くのも、すき。

僕は、恋多き女のイメージと、誰の手にも落ちないっていうイメージと、どっちも持っていたから、僕が正チャンを選んで、正チャンの恋人になっちゃったのは、周囲にはすっごく意外に思われたみたい。

女友達には、「あんな、いかにも真面目そうなショーイチをそそのかして、すぐポイするんじゃないでしょうね!?」なんて、思い切り疑いのまなざしで言われたし。
「そそのかすって何!?僕は本気で正チャンにFall in loveなのに、ポイするわけないでしょ!僕には正チャンだけでいいし、正チャンとずーっと一緒にいたいのっ!!」

…って応えたら、白蘭あんた何か悪いものでも食べたの?って言われた……
僕って、どんだけ同性からは悪女イメージ?
男のひとからは、高嶺の花って輝いちゃって見えてるらしいのに、女の子の目は厳しい。

でも、これからは、女友達ともいっぱい話が合うと思うんだ。
だって、好きなひとの為に努力しちゃう気持ちは、きっと女の子なら解ってくれるでしょ?

そして、男の子たちは…

僕、講義室に正チャンを見つけて声をかけようと思ったんだけど、ボーイズトークが聞こえてきたものだから、慌てて物陰に隠れちゃった。

「ショーイチお前ーーー!!羨ましすぎる!!!」
「うん…僕も、何だか畏れ多いとか思ったんだけど」

ちょっと正チャン!畏れ多いとか何その祟りがありそうな感じ!!

「まあ、確かに白蘭さんを彼女にするとか、あまりにも畏れ多い感じだよな。女神のオーラじゃん?告れる奴の神経ってどんだけ太いんだよ。ザ・ジャパニーズ・しめ縄か?ショーイチも含めて」

女神?うんうん。それなら、素敵な響き♪

「女神…も、言われてみればそんな感じかもしれないけど」

…けど、っていうことは、違うの正チャン!

「何だか、綺麗すぎて、二次元かと思った」
「……………………………」←全

ちょっと!正チャンーーー!!僕って正チャンが好きなゲームキャラ!?

「あ〜、気持ちは分かる。テレビかディスプレイの向こう側な感じ?」
「別世界だから、そもそも自分の彼女にするとか、日常的な発想が出ないんだよな」
「浮かぶような奴は、同じくらい向こう側のセレブなイケメンなんだよ」
「実際、白蘭さんモデルだもんなあ。ゲーマーだって分かったら親しみが湧いたけど、憧れすぎて、女友達って言っていいのかわからないんだよな」

……僕、何だかしょんぼりしてきちゃった。
僕の方は、みんなのこと、楽しい時間を過ごせるゲーム仲間で、お友達って思ってたんだけどな…


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