02

ペットは家族になる子なのだからと、そしてデイジーが控え目に飼いたい様子だったので、白蘭は正一とブルーベルと、4人でそこを訪れた。

「どうぶつあいごセンター?」

どうぶつ、は分かる。正一が、漢字で書いた。
『動物愛護センター』

あいする、の愛。まもる、の護。
「ペットショップとどうちがうの?」

正一は少し黙った後、答えた。
「……無料だよ。飼えなくなった飼い主が持ち込んだ犬や猫が多いから…。次の飼い主を待ってる」
「そう…なんだ。きっとなついてたのに、かわいそうだね」

白蘭が、犬と猫を飼いたいから引き取りたいと職員に言うと、建物の奥に通された。
鉄扉がギィと開いて、その向こうは照明が抑えられ薄暗いのが、ブルーベルは不思議だと思った。

「ねえ、どうしてこのこたち、おりのなかなの?」
「……逃げ出さないように…からかな」
「ふぅん。さっきのいりぐちがあるから、ここにとじこめたってにげないとおもうけどなあ」

ブルーベルはとことこと歩いた。
「どのこもかわいいわ。びゃくらん。ぜんぶつれてっちゃおうよ。ねこやしきみたいになってたのしいわ」
「……それは、ダメだよ。僕たちが責任を持ってお世話出来る数は、限られているからね」
「ん〜…。そうだね。ブルーベルたちいがいにも、にゃんこをかいたいって、ここにくるひともいるもんね」

そして、ブルーベルは1匹の猫の前で足を止めた。
「入江っぽい。このこにするわ」
「…………」

その猫は、赤茶の縞猫で、緑の目。
正一は、遠い目になった。
「僕…全体的な色はともかく、縞模様じゃないんだけど」
「ぜんたいてきに、いりえっぽいのよ」

痩せた猫だ。毛並みも乱れている。寝癖の正一かもしれない。
でも…

「ブルーベル、もしかしたら、この猫は結構年を取っていて、長生きしてくれないかもしれない。それでもいいかい?」
「だったら、ブルーベルがつれていってあげたほうがいいわ。きっとほかのひとは、ながいきしてくれそうなねこをえらんでつれていくでしょ?」
「…そう。ブルーベルはやさしいね」

ブルーベルには、分からなかった。
正一は確かに笑ってくれたのに、一瞬悲しそうに見えたような気がして。

「ぼくチン…このねこ」

一同、沈黙した。
ややグレイッシュな白い猫。しっぽがふさっとした、長毛種風味。

「白蘭様っぽいから…」

やっぱりそういう理由なのか……

そういう訳で、猫2匹は決定。
次は犬。

「ながいいぬ、いるわ」
「えぇと、ブルーベル。普通、あれって足が短い犬って言わない?」

正一と同じことを尋ねた白蘭にも、ブルーベルは自信を持って答えた。
「ながいいぬよ」

白蘭も、ここでブルーベルが癇癪を起こすのは避けたいと思った。もう、長い犬でいいと思う。

「ミニチュアダックスフントの…多分純血種だね。今は、値段が下がっているらしいから」
「どうしてですか?」
「流行って言うのかな。今は敢えて違う犬種と掛け合わせた犬の方が高く売れるから」

1匹は、こげ茶色のミニチュアダックスフントで決定。
そして、デイジーがじーっと見ているのは、クリーム色の子犬。

「ぼくチン…この犬…」
「あ〜、この子は大型犬だね」
「どうして?今はちっちゃいわ」
「足が太いからね。大きく育つと思うよ」

……おおきいいぬ。

「ブルーベル、のってみたい!」

……言うと思った。

「ブルーベル…犬は、馬と違うんだよ。背中に何かを乗せるのには向いていないんだ。背骨が痛んで、動けなくなってしまうこともあるんだよ」
「そうなんだ…」

小さい犬も好きだが、大きな犬に跨がって走ってみたいと思っていたブルーベルはしょぼんとした。
「うん…ブルーベル、のらない…」

そして、引き取られる猫2匹と犬2頭が決まって、キャリーに入れると車に乗り込んだ。走り出した車の中で、ブルーベルが声をかける。
「ごめんね、こんなせまいところにいれちゃって。おやしきについたら、だしてあげるからね」

車のハンドルを握り、珍しく安全運転をしながら、白蘭が言った。
「正チャン。どうして、嘘をついたの」
「……白蘭サンも、黙っていたじゃありませんか」

ブルーベルもデイジーも、何のことかと思った。
「びゃくらん、入江、うそってなに?」
「あそこの動物たちはね、3日か…1週間か、そのくらいしか生きていられないんだよ」

ブルーベルは、一瞬、白蘭が何を言ったのか、分からなかった。

「ど…して…?」
「あそこはね、人間から“要らない”って言われた動物が持ち込まれる場所だからだよ。面倒を見られる数も場所も限られているからね、少し待って、引き取り手がなければ殺されるんだよ」

…そんなの、ちっとも、あいしてない。まもってない。
かいぬしを、まってるんじゃない。ころされるのを、またされてる……

「びゃくらん!もどって、もどってよ!!」
「…戻って、どうするんだい?」
「ぜんぶ、うちにつれてってよ!ころされるくらいなら、いぬやしきとねこやしきになるほうが、ずっといいわ!!」
「全部連れていっても、あそこには、毎日次の犬や猫が連れ込まれる。切りが無いよ」
「…………」

ブルーベルのつぶらな青い瞳に涙が溢れて、うわあああん、と大きな声で泣き出した。
「いらないこじゃない…どのこも、かわいかったよ。なにもわるいこと、してないよ!なのに、どうしてしななきゃならないの!?」
「人間が、身勝手だからだよ」

白蘭の答えは短く、それ以外の事実はなく、ブルーベルは泣くしか無かった。

「…ブルーベル」
正一は、そっとブルーベルの髪を撫でた。

「ブルーベルと同じように、心を痛めている人達はいてね、あそこから犬や猫を助け出して、何十匹や…団体によっては何百匹も引き取って、面倒を見てあげている人達もいるんだよ。一所懸命里親さがしをしている人達もいる。あのセンターの人達も、平気で殺しているわけじゃない。持ち込んできた人達には、飼い続けるように、里親を捜すように、説得し続けているんだよ」

静かに、正一は続けた。
「ブルーベルとデイジーもね、出来る限りのことをしたんだよ。小さい命を…4匹、確かに守ったんだよ。だから、これからこの子たちを、精一杯かわいがってあげようね」

ブルーベルは、小さく頷いて、正一に抱き寄せられて泣いた。
泣きながら、祈った。


……どうか、残された命を、助けてくれるひとたちが、あらわれますように……








〜Fin.〜

 -----------

※ 次項あとがきになります。

[ 97/102 ]

[*prev] [next#]
[図書室63]
[しおりを挟む]


×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -