01

 
ふと目を開けると傍にシロツメクサ。
そこは誰もいない広い野原で、離れたところに池と森が見える。

ブルーベルと入江がいるのは、大きな木の下。
そこに座って、何となくお喋りをして、ブルーベルが作ってきたお弁当を食べて、寝っ転がってまたお喋りをしてて…

どんなお話でどこで途切れたのか、覚えていないわ。
だって、入江と話すことは、別にロマンチックなことじゃないんだもの。何気ない話、とでもいうの?

そう言えば、ブルーベルが話して、入江が聞いてくれてることの方が、ずっと多いわ。ブルーベルのお話は、学校のお話や水泳のお話。いくらでもあるもの。
入江はあまり自分の話はしないけど、黙ってばかりじゃなくて、ブルーベルのお話にはちゃんと相槌を打ってそこから話を繋げてくれるから、ブルーベルが黙らない限りは、お話はずっと続くの。

そんな感じなのに、時々入江がにっこりして、さりげなくロマンチックな事を言うものだから、ブルーベルは不意打ち食らって、にゅーーーっ!って叫んでしまうのよ。
殺し文句は嫌いじゃないけど、不意打ちは、何だかズルイわ。

でも…言われなくなってしまったら、ブルーベルはきっと寂しくなって、不安になって、かなしくなって、ブルーベルの方から訊いてしまいそうだわ。

(入江は、ブルーベルのこと、すき…?)

だから、ブルーベルは本当は、入江のころしもんくが、好…

「にゅにゅーーーっ!!」

ブルーベルは、頭を抱えて叫んじゃった。
今、何だかとっても恥ずかしいことを考えてしまったような気がする…けれど、これは深いこと考えたくないわ。
だって、お顔が真っ赤になってしまうもの。今よりも、もっと、もっと。

「…まだ、寝てるのね」

入江は、ブルーベルの隣に仰向けに寝たまんま。
緩やかな風が、ほんの少しだけ、紅茶色の髪を揺らす。

あ…。入江は、赤茶色、って言われる方が、すき…?

寝っ転がっちゃって、眼鏡、歪まないのかしら?
無いとほとんど見えないからって、大切にしている癖に。

ブルーベルほどじゃないけど、多分東洋人にしては色白の肌。いくらインドア派だからって、たまには外に出なさいよ。
……あ、でも、ブルーベルとデートの時は、結構いっしょに外に出てくれてる気がするわ。

ひげ剃り必要なの?っていう感じにほっぺたは滑らかに見えて、何だかムカツクわ。
ブルーベルは、つるんって綺麗なお肌だから無問題だけど、美肌すぎる男もどうかと思うのよ。
だって、大概の女の子は、自分より美肌の彼氏って複雑じゃない?

でも、ちょっと得した気分。
眠っている時の入江は、いつもより、少しあどけなく見えるのよ。ブルーベルの方がずっと子どもだから、ちょっとだけ差が縮まったような気がして。

得した気分だけど、こうやってウッカリ眠った時には、損しちゃったとも思うの。
だって、デートの時間は、いつもあっという間に過ぎてしまうのに。居眠りをしていて、その時間を縮めてしまうだなんて、痛恨だわ。

ねえ。入江。そろそろ起きてよ。
ブルーベルを放って置いたまま、時間を過ごしてしまわないで。

……起こしても、いいのかな。
ぐっすり眠ってるように見えるから、ちょっと迷っちゃう。

(入江…)

声をかけようとして、ためらった。
このままに、して置いてあげたい気もして。

でも、ブルーベルだけ待っているのは、寂しいわ。
膝を抱えて青い空を見上げていたら、…思い付いちゃった。

いつもなら、できないけど。
だって、15歳のブルーベルからするのは、ちょっとまだ早いかなって、はずかしいんだもの。

「…隙有りだわ。入江」

そっと、身をかがめて。

そっとそっと、入江の唇に、…キス。



「……ブルーベル」

入江が呟いて、ふわって睫毛が開いて、至近距離に緑の瞳。

にこって、柔らかく笑って。
「すきだよ、ブルーベル」

ブルーベルが、かっちんって動けないでいたら、入江の両手がブルーベルのほっぺたを包み込んで、ゆっくりと引き寄せた。
見つめ合っていられなくって目を閉じたら、ブルーベルの唇に、優しく入江の唇を感じた。

「すきだよ」
「さ、さっきもきいたわ!」
「嬉しかったんだよ」

くすって、入江が笑った。ずるいわ!おとなのよゆう!っていう感じで。
それに、それにっ

「いつから、おきてたのよっ」
「ついさっきだよ。君の髪の毛が、さらって僕の頬にかかったから」

入江の手が、ブルーベルの長い髪をそっと掬い取って、ブルーベルは不覚!って思った。

「…ずっと、切らないで欲しいな」
「髪?」
「うん。とても綺麗で…」

入江が、起き上がってブルーベルを抱き寄せてくれた。

「今みたいに、君がキスしてくれたら、眠っていてもわかるからね」
「…………」

にゅにゅーーーっ!ってブルーベルは叫んだ。

「入江のいじわるーーーっ」
「どうして?僕は嬉しかったんだよ」





……そんなに嬉しいって笑ってくれるのなら。


また、キスしてあげても、いいわ。


ちょっと、勇気が出たときに。





〜Fin.〜

 

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