01

ブルーベルは、海の底にある「海の民の国」の王女様なの。王女は、ブルーベルを入れて6人。ブルーベルが末っ子よ。

海の民には、決まり事があるの。
それは、海の中から出ちゃいけないっていうことと、人間に姿を見られたらいけないっていうこと。

でも、15歳になったら、海の上の世界を見に行ってもいいの。
ちゃぷんって覗きに行くだけよ。全部海から出るのはダメ。

ブルーベルは一番ちいさいから、15歳になるのは一番遅かったわ。
姉様たちのことはだいすきだったけど、それだけは不満よ。

だって、ブルーベルが一番泳ぐのが上手なのに。一番速いのに。
それって、「一人前」ってことじゃないの?どうして、こどもあつかい?

海の上って、どんな世界なのかなあ?
姉様たちは、遠くに見えた人間たちの街と、お城が綺麗って言ってたわ。それって、海の宮殿よりもきれい?

青いお空が綺麗って言ってたわ。見てみたい。それって、青い海よりもきれい?

星空。こればっかりは、全然想像がつかない。
暗い暗いお空に、小さい明かりがいっぱいって、どんなふうなのかなあ?

楽しみにしながら、でも、どうしてまだなのよぅって不満に思いながら、ブルーベルは15歳の誕生日が来るのを待っていたの。

そして、やっとやっと、その日が来た。
ブルーベルは、びゅんって泳いで、ざぶっと水面から顔を出した。

……空。
「にゅー…。あおじゃないわ」

そう言えば、姉様たちが、お空は晴れてる時や曇っている時、雨が降ってる時…って、いっぱいあるっていってたっけ。
「せっかく、ブルーベルがデビューした日なのに、つまんない」

遠くに、丘に沿って人間たちの街が見える。一番高いところが、人間たちのお城なのかな?
「ふぅん…悪くないわ。海のお城の方が、きれいかもしれないけど」

ブルーベルは、そんなに感動しなかった。
あんまり期待しすぎてたのかな。それとも、青いお空や、星空だったら、きれいって思えたのかしら。

でも、ちゃぷちゃぷって、浅いところまで泳いでいって、「砂浜」っていうのを見たいなって思った。白い砂がさらさらで、これも綺麗って姉様が言っていたから。
ただ、そのまま向かって言ったら、水の中では無敵の人魚でも、陸に打ち上げられて動けなくなっちゃう。

海の民は、海から出ちゃいけないっていわれているけど、それは単に、いちど打ち上げられたらそこから動けなくなって、死んでしまうからかも知れないわね。

だから、ブルーベルは岩場の方に向かった。そっちの方から覗こうかなって思って。

「あ…」

岩場のところで、誰かの声が聞こえた。ブルーベルの声じゃないのよ。人間だわ。
海の民は、人間に姿を見られちゃいけないのに。

「誰よ。頭蓋骨剥くぞ」
ブルーベルがずいっと体半分だけ岩場に乗り上げて睨んでやったら、相手は…子どもは、びっくりした目でこっちを見てる。

…ブルーベルより年下だわね。
泳ぎが上手なようには見えないわ。もやしっぽくて。
緑の目だけは、きれいかもしれないけど。

「あんた、誰?」
「…イリエ。ショーイチ…」

ブルーベルは、イリエって名乗ったその子を、改めてじーっと見た。ぶさいくっぽいけど、ブルーベルよりちっちゃいし、ちょっとは言葉を選んであげるわ。

「あんまり、将来イケメンに育ちそうな気はしないわね」
「うん…まあ……」

そうかも、とその子は、困ったように笑った。

「その、目にくっつけてる変なやつは何よ」
「ふふっ、変じゃないよ」

さっきは微妙にハートブレイクかもっていう顔をして笑っていたくせに、この時は明るい笑顔だった。

「眼鏡っていうんだよ。僕は、殆ど目が見えないんだけど、これを付けてるとよく見えるようになるんだ」
「にゅ…ふしぎだわ。海の国にはない魔法のアイテムなのね」
「魔法じゃないよ。科学…かな、医療かな。そんな道具」
「ちょっとあんた。チビのくせに、宇宙語しゃべるんじゃないわよ」
「ごめんね」

ちょっとムカついたけど、その子がすぐに謝ったから、いつまでもブルーベルだけ怒ってるのは、「おとなげない」わ。
でも…

「君の名前は?」
「あんたが知る必要はないけど、さいごに教えてあげてもいいわ」

ブルーベルは、イリエのほそっこい手首を、ぐいっと引っ張った。

「あたしは、人魚姫のブルーベル。ついてないわね、イリエ。海の民は、人間に姿を見られちゃいけないの。見られたから、殺さなきゃ」


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