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「今日は、どこに行こうか」
「…映画」

ブルーベルは、かなりどきんどきんとしながら、どうしてこんなにちっちゃい声になっちゃうのよ!と自分で思いつつも、やはり小さい声でしか言えなかった。

「ろ…ロマンチックな、感じの」

正一は、隣のブルーベルを見下ろして、ブルーベルが俯きがちなのも頬が赤いのも見て、きっと勇気を出してくれたのであろう事は理解した。

「今まで、僕と君とのデートって、ロマンチックじゃなかった?」
「そ、そういう訳じゃないのっ」

先日、正一がブルーベルの為に作ってくれたという曲を、公園でギターで弾き語りをして貰っただなんて、これはかなりロマンチックだと誰もが思うのではないだろうか。

ただ、何となく背伸びをしてみたかったのだ。そして、自分は正一との恋しか知らないのだけれども、他の恋人たちはどんな恋をしているのだろう…?ということも、知りたかったのだ。

「ん…じゃあ、恋愛映画なのかな」

ブルーベルと映画を観たのは、過去に何回かある。アニメ、アクション、SF映画辺りだ。
正一の感想…というよりもブルーベルの反応なのだが、アニメは楽しめたようだ。でも、それ以外は楽しめたとしても一部に留まる。
ブルーベルの年齢では、派手なアクションシーンやコミカルな笑いの部分は楽しくても、細かいニュアンスまではよく分かっていないようだ。

恋愛映画となれば、普通はバトルモードにはならないのだし、本当に楽しめるのだろうか……と正一は思ったのだが、ブルーベルが見たいと言っている以上そうしてあげるのがいいのだろうと、スマホで検索した。

「これ辺りかな…ロマンチックかどうかは僕も見てみないと分からないんだけど、恋愛メインらしいよ」
「にゅ。だったらそれでいい」

という訳で映画館へGO。
休日だが、案外空いていてよかったと、正一は思った。
ブルーベルの前の席に、大柄な男が座ったことがあり、もーあったまきた、アイツの頭をぶち抜きたいわ…!とキレたことがあるからだ。

そして、見えやすそうな席をゲットして、上映開始。

正一は、正直外したかな、と思いながら映画を観ていた。
主に、男女4人を巡る恋物語なのだが、理系正一としては無駄が多すぎる。

主人公の女性は一途であるようだ。だが、本命の男はそうでもなくて、心変わりをしてしまう。
それでも、主人公はその男が好きで諦め切れない。正一としては、不実な男などやめておいて、次の恋と今度こそ誠実な男に巡り会うのを待てばいいのに、と思ってしまう。
こういう流れになると、一途も未練がましく鬱陶しい感じに思えてくる。

(あ…でも、分からないでもないか)

恋愛ではないけれども、正一が愛し尽くした親友は、「無かったこと」になったとはいえ、不実の権化だった。
それでも想い続けたんだから、僕も鬱陶しい感じに愚かだったんだろうか?

映画の恋愛関係は、諸事情でくっついたり別れたり、モブキャラまで出て来て忙しい。
まあ、恋愛をメインにして映画を作るのなら、揉め事だらけにしないと2時間の作品にはならない。

それよりも正一が焦ったのは、モヤモヤと詳細な描写は誤魔化されていたものの、ベッドシーンかそれに近いものが複数回登場したことだ。
それから、キスが濃厚だ。イタリアの街角ではしばしば見る光景ではあるが、大きなスクリーンにアップになるのは迫力が違う。

やっぱり、こういうのはブルーベルには早かったのではないかと、ちらりとブルーベルを見ると、暗いので顔色まではよく分からないが、案の定フリーズ。
だが、主人公が一途なだけに、想う男と心通うラストシーンは、かなりロマンチックだったと思う。


……上映終了。


正一は、ブルーベルに何と声をかければいいのか迷った。
ズバリ「大丈夫?」と気遣うのも、何か変だ。
同じくズバリ「ロマンチックだった?」というのも躊躇われる。
普通に「面白かった?」というのも、映画の内容からしてズレていると思う。

正一は、映画の内容には触れないことにした。
「ランチにしようか?」
「……うん」

今まで見た映画だと、ブルーベルはどこどこが面白かったねとか、あそこのバトルはカッコ良かったとか、賑やかに感想をいうのだけれども、今日は正一に手を引かれて黙ったままだ。

「何食べたい?」
「何でもいい…」

これも、ハッキリ言うブルーベルには珍しい…やっぱり早かったかと、でもそう言うとブルーベルがきっと傷付くので、正一がさりげなくリードするのがよいのだろう。

「じゃあ、次の通りのバールに行こうか」

BARと書く程度に、喫茶店と飲み屋を兼ねているが、食事も出来る。
飲み物だけなら立ち飲みする人が多いが、ここは割高でものんびり座席で。

パニーノを食べながら、正一がにこりと笑った。
「美味しいね」
「…うん。おいしい…」

ぱく、とブルーベルも食べたのだけれども、やはり声は小さいままで、頬は熱いままで、ブルーベルは正一を見返すことが出来なかった。


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