02

「ねえ、びゃくらん。ブルーベル、どんなふくをきてったらいいとおもう?」
「いつもデートに着ていってる、可愛い服でいいんじゃない?まあ、ブルーベルの服は全部可愛いんだけどね。…どうしたの?」

ブルーベルの横顔は真剣で、そしてブルーベルには珍しく、自信がない様子だ。
「……入江のがっこうなら、おとなばっかりよ。でも、ブルーベル…。かわいいふくはいっぱいもってるけど、おとなっぽいふくは、もってないもん」

なるほど、と白蘭は納得した。
ブルーベルにしてみれば、中学生も高校生も大人なのだ。その大人がたくさんの場所に、正一とデート。

今までは、ふたりがデートだと思っていればデートだった。
でも、正一と年が近い人間がたくさんいる場所では、デートらしく見えないことを、ブルーベルは気にしているのだ。

「今まで通りでいいんじゃない?」
白蘭は、ぽふぽふとブルーベルの髪に触れた。

「誰がどんな風に見ていようと、何を言おうと、正チャン自身がブルーベルを恋人だって言ってくれてて、花嫁さんになってって水晶の指輪をくれたんだろう?だから、いつもの可愛いブルーベルでいいんだよ」
「……うん」
「正チャンの気持ち、信じてあげようよ」
「……うん」

入江の、きもち…


(大好きだよ)

(僕の、ブルーベル)

「にゅにゅーーーっ!」

真っ赤になって誤作動したブルーベルに、白蘭はあははと笑った。
「…ね?正チャンの気持ちなら、ブルーベルが一番よく知ってるでしょ?」


当日、ブルーベルが選んだのは、まだ正一に見せたことがなかったワンピース。
薄水色で、袖と裾周りに白い花の刺繍が施してあり、更にひらひらと惜しみなく白いレースで縁取られている。首元にも、同じレース素材のリボン。

一緒に選んでくれた桔梗曰く
「アンティークドールのようですねハハン」
という一品。
桔梗の目が入っているのだから、絶対に外してはいないと思うのだけれども、

「入江…どう思うかな…。でも、入江って、ブルーベルが何着ていっても似合うって言うし…」
「お前、ハズカシー奴だな電波。独り言まで惚気かよ」
「ザクロうるさあぁぁい!!!」

そして、いつも通り、約束の時間より20分早く正一は来てくれた。
「やあ、ブルーベル。新しい服なんだね」

正一は、皆の前で言うのは躊躇われて、軽く屈んでブルーベルの耳元で小さく言った。

(お人形さんみたいで可愛いよ)

「よい褒め言葉ですね入江正一。ズバリそういうイメージで選びましたから」
「君も、謎の電波を受信しないでくれないかな桔梗!」

正一もブルーベルも赤くなっていると、白蘭がちょいちょいと手招きした。
「じゃ、行こっかふたりとも」

にゅ?とブルーベルは首を傾げた。
「びゃくらんもいくことにしたの?」
「送っていってあげるだけだよ。だって、此処はイタリアで、正チャンの学校は日本だもん。普通に飛行機に乗ってたら間に合わないよ」

それはそうなのだが、正一なら、いつも不思議な方法でどこにでも連れて行ってくれるので、ブルーベルは何も心配していなかったのだ。

「びゃくらんのはねでもつかうの?」
「ん〜、ふたりは無理なんだよね。だからコレ♪」

……シルバーのスポーツカー。白蘭の愛車。

ブルーベルは沈黙し、正一は遠い目になった。

「死ぬ気で行こうか…ブルーベル」
「そうね…。あんがいだいじょうぶだとおもうわ。デンジャラスだけど、びゃくらんもブルーベルも、いちどもしんだことないもの」
「誰でも、1回しか死ねないけどね……」
「ほらほら、ふたりとも、せっかくのデートなんだから楽しく行こうよ♪」



……そして、デンジャラスな白蘭のドライブで、正一の学校の正門前に到着。

「入江、だいじょうぶ?」
「うん…なんとか……。久し振りだよ…大学以来、もう二度と乗りたくないと思ってたんだけどね…」
「えー?僕、テクニックとスピードには自信有るんだよ」
「知ってます。所要時間30分切っていますよね。1時間だったら僕は気を失っていたかも知れません」

え…?と、ブルーベルは車内の時計の表示を見た。
……確かに、屋敷を出てから25,6分だ。

「ちょっとっ!どうやったのよびゃくらんっ」
「さあ、どうやったのかなあ」
「にゅーっ!ブルーベルがきいてるのよっ」
「アハハッ、デート楽しんでおいで」

白蘭のスポーツカーが走り去ると、正一がにこりと笑ってブルーベルに手を差し伸べた。

「じゃあ、行こうか、ブルーベル」


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