02

  
  
 


「にゅにゅーーーっ!」

ブルーベル、15年生きてきたけど、自分の叫び声で目が覚めたことは初めてよ。

な…なんて、恥ずかしい夢を見ちゃったの!
夢中で走った、だなんて、まさに夢の中で夢オチだわ!!

……やさしい、

…王子様。

こ…これは、ブルーベルも時々自分で言っちゃってるから、どうにか許容できるわ。
でも…でも!

(おいで)
(僕の、ブルーベル)

「だ…誰が入江のものーっ!!」
「貴女が、入江正一のものでしょう。いつお嫁に行くのですか?ちなみにブルーベル、朝食が出来ましたよ」
「うわあああん!!桔梗、一応ノックくらいしてよーっ!ブルーベルは、もう乙女なのよ!!」



そんな訳で、今日はデート。
ブルーベルは、おしゃれをする段階からぎくしゃくしてしまっていた。
どれを着るか悩む。

「にゅ…。ちょっと、今日は上級者向けよ。バッグ以外全部新品だけど、入江が特別〜な感じに褒めてくれなくても、今日は許せるわ…」

おしゃれをしたいのは、正一に見せたいのもあるけれども、普段からブルーベルはひらひらフリフリした乙女な服が好きだ。
実際に、それは自分によく似合っているのだし、

「ブルーベルの美少女な感じを、引き立てちゃうのよ…!!」
「おい電波。廊下まで聞こえてんぞ」
「ザクロうるさあぁい!!」

悩んだ末に、フレンチスリーブのブラウス。
細かいチェックの生地は、遠目には淡いブラウンに見える、いつもより落ち着いた一品。でも、袖や裾周りには細かいレースがあしらわれているのは、ブルーベルが譲れなかったさりげないかわいらしさ。

スカートは、エアリーなシフォン。重なり合う生地の1枚1枚が薄いので、バラの柄も淡く薄く。

「今日は、ただ“新しい服を買ったんだね”とか“よく似合ってるよ”だけで、許してあげるわ!」

だって、今日は、ブルーベルの「中身」について、知りたいんだもの。

「ブルーベル。まだ約束の時間に早いですが、貴女の王子様が10分ばかり待っていますよ」
「桔梗!いちいち王子様言わなぁぁい!!」

いつもより、服のチョイスに時間がかかってしまったのだ。階段を駆け下りてゆくと、正一がブルーベルの姿をとらえて、にこりと笑った。

「慌てないで。急ぐと危ないよ」
「にゅーっ!」

ブルーベルがヒールを引っ掛けて、階段下へダイブ。
それを正一が受け止めようとしてひっくり返った。

「入江!どーしてひっくり返るのよっ!それに、急ぐと危ないなんて、フラグを立てるから悪いのよっ!」
「順番に答えるよ。ひとつ目は、僕がモヤシだからだよ。白蘭サンや桔梗辺りなら、華麗に受け止めるんだろうけど。ふたつ目は、フラグを立てたつもりはないんだけど、ごめんね」
「ちょっとは体を鍛えて、華麗に受け止めてよばかーーー!!」
「ジム通いでもするのかい?僕の場合、筋力を付けても、運動神経がそれに追い着かないから、とろくさいのは変わらないと思うよ」

ブルーベルは、遠い目になった。

そうよ…
入江はもやしのまんまで、ブルーベルの王子様なのよ……

「今日は遅かったね、ブルーベル」
「今日もマシマロもふもふねびゃくらん。待ち合わせまで、あと10分あるわ。別に遅れてないもん」
「だって、ブルーベルはいつも30分前にはスタンバイじゃない?そっから20分より多く待つと怒っちゃうじゃない?だから、正チャンはいつも20分前には迎えに来てくれるじゃない?今日も正チャンは、20分前に来てくれたから、10分は待ったんだよ」

ブルーベルは、かーっと赤くなった。
「そ…!そんなの知らないわっ!入江が勝手に20分早く来ただけでしょっ」

白蘭に言い返してから、その場に正一も居合わせたことに今更気付いて、ブルーベルは後悔した。

……ブルーベルがもっと小さい頃、「30分前から待っていたのに!」って怒ったから、入江は気を遣って20分くらい前に来てくれるようになったのに。
30分前だと、ブルーベルを急かすことになっちゃうかもしれないし、それよりも遅いとやっぱりブルーベルが不機嫌になっちゃうと思って……

そうやって、小さい頃から何年も、優しい入江は、ブルーベルのわがままを責めずにいてくれたのに。

「ごめんね、気にしなくていいよ、ブルーベル。まだ待ち合わせの時間じゃないのに、階段を走って下りるくらい、君は急いでくれたんだから」

柔らかく笑ってくれるから、胸が痛いとブルーベルは思った。

「白蘭サンも、何年からかうんですか?いい加減に飽きて下さい」
「飽きないよ〜?真剣だったり一途だったりするのって、傍目にはドラマだもん」
「白蘭サンも、少しは何かに対して真剣になったり一途になったりすることを覚えて、自力でドラマを作ればいいと思います。…じゃあ、行こうかブルーベル」

正一は、白蘭と親友らしい遠慮の無い会話をして、ブルーベルを屋敷から連れ出した。


[ 22/100 ]

[*prev] [next#]
[図書室61]
[しおりを挟む]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -