02

「にほんじんって、面白いことかんがえつくのね」

白蘭は、ブルーベルが見ているPCのディスプレイを覗き込んで、苦笑した。
それは、いかにもおどろおどろしい雰囲気にデザインされた、呪いの藁人形のページ。

「まあ、世界中にあるよね。そういう黒魔術の類ってさ」
「黒魔術じゃなくて、呪いよ」
「同じようなものだよ。ヘルリングみたいにさ、リスクが高いんだ。日本には、“人を呪わば穴ふたつ”って言葉があってね、その穴って言うのはふたり分の墓穴のこと。自分も墓に入るくらいの覚悟でやれ、ってことだよ」
「にゅ。しぬきのかくごなのね」
「うん…まあ、そんな感じ?」

ブルーベルは、興味深そうに白蘭を見た。
「びゃくらん。それでもヘルリングを使いこなせるひとはいるんでしょ?」
「いるけど、よほど精神力が強くって、残酷になり切れる人間に限られるね。大抵の人間は、残酷なようでもちょっとは罪悪感を持ったり、心揺れたりする弱さを持っているものだよ。ヘルリングは、そういう弱くて繊細な人間の魂を喰らってしまうのさ。だから、六道骸クンには向いてても、ホントは優しかった幻ちゃんには向いてなかったの」
「ふぅん…」


……だったら。

これっぽっちも悪いだなんて思わないブルーベルは

笑って呪えるのね…?





「ブルーベル」
白蘭の声で、ブルーベルは現実に引き戻された。

「なぁに?びゃくらん」
「呪い殺したい相手でもいるのかい?」
「いっぱいいるわ」

ブルーベルが、可愛らしく唇を尖らせつつ、その表情とは裏腹に物騒なことを言うので、白蘭は目を瞬いた。

「それは、すごいね。一体何があったんだい?」
「学園祭よ」

ブルーベルは、幼い自分では正一の恋人には見えないのだし、自分の本気をからかわれて泣いてしまって、何となく気付いたのだ。

正一は、ブルーベルが思う以上に周囲の人間に好かれているのだと。
あんな風に気軽にからかわれたのも、正一が親しまれているからで、みな正一が優しいことを知っているのだ。

「男は、みのがしてあげるわ。でも、入江のことを好きな女は、全員しねばいいのよ」
「…………」

しばしの沈黙の後、白蘭はぷっと吹き出した。
「にゅっ!びゃくらんっ!どうしてわらうのよっ」
「だ…だってさ、そんなことしなくたって、正チャンはわっかりやす〜く、ブルーベル一筋だよ。正チャンのお姫様はブルーベルだけなんだから、ほかの女の子に告白されたって、全員スッパリ振ってるよ」

…ん?とブルーベルは聞き咎めた。

「全員ふってるって…。びゃくらん…入江がモテるの知ってるみたいにきこえるわ」
「別に覗き見した訳じゃないけど、そこそこモテると思うよ。正チャンは、高校に入ってぐんと背が伸びてさ、女の子ってやっぱり背の高い男の子に憧れちゃうじゃない?あと、ずば抜けて頭がいいでしょ。当然に、将来の成功も約束されてるエリートっていうハイスペックだもん。でも、それを鼻にかけるような正チャンじゃないしさ。正チャンなりに人の好き嫌いはあるんだけど、平和主義者だから人当たりがいいしね。何より、正チャンが優しくって誠実なのは、ブルーベルが一番よく知ってるんじゃない?」

ブルーベルの目が据わった。
「……びゃくらん。やっぱり、呪いたくなってきたわ」
「だーから。そんなステキな正チャンを、独り占めできるたったひとりのお姫様が、ブルーベルなの。ヤキモチやいてふくれっ面してないで、ちゃんと正チャン気持ちを信じて、笑顔をプレゼントしてあげようよ。ね?」

白蘭は笑って、ブルーベルの頭をぽんぽんと撫でた。

「にゅー…。えがおは、入江にあげたいわ。だって、入江はよろこんでくれるもの」

ブルーベルは、ノートCPを閉じて、頬杖を付いた。

でも。りくつじゃないのよ。

入江が言っていたやきもちは、きっと綺麗でやさしい心の中にあるのに。

どうして?
ブルーベルのやきもちは、まるで、胸の中が真っ黒になるようなきもちがするの……


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