04

「…入江は、さびしかったの?」

問われて、正一は少し驚いた顔をした。
そして、やはり柔らかく笑った。

「さあ…どうだろうね」
「ブルーベルがきいてるのよっ!」
「……ごめんね」

くすりと、正一が笑った。
「元気を、取り戻してくれたのかな」
「…………」

いらないこじゃ、ない。
わるいこじゃ、ない。

……入江が、そばにいてほしかったのなら、ブルーベルはきえちゃわなくても……いい。

最後の3つ目に、やっぱりブルーベルは真っ赤になった。
だから、一所懸命考えて、別の言葉を探してしまった。

「びゃくらんが、ブルーベルをだいすきなんだったら、ブルーベルは、ちゃんといいこだわ!!」
「僕も、そう思うよ」
「…………」

正一は、そのまま笑ってくれているのに、ちょっとさびしい…と、ブルーベルは思った。

「…もう、行こうか」
「どこ?」
「お屋敷に。ここはずいぶん森の奥だから、みんなブルーベルのことを心配しているよ」

差し伸べられる手。
白蘭や桔梗ほどじゃないけれども、やはり大きくて…あたたかいのだと、ブルーベルは何となく心臓がとくんとくんと跳ねた。

思うより曲がりくねった道で、きっと自分だけなら戻る時に迷子になっちゃったんだろうなあと、ブルーベルは思った。

でも…。もりにはいるときには、もどってくることなんか、かんがえてなかったのよ。

かなしくって、きえちゃえばいいのにって、おもっていたから……

「あ…ついた」
「屋敷が見えたね。もう心配いらないよ」

もう少し手を繋いだままでいたかったのに、ぽんぽんと髪を撫でられてしまったのが残念だとか、自分だけほっぺた赤いとか、許せない!とブルーベルは叫んだ。

「にゅっ!なにその、おとなのよゆう、ってかんじっ!!チビのくせに、大人ぶってっ!」
「あと10年経ったらチビじゃないけどね。178cm」
「ムカツクーーー!!!」

あはは、と正一は笑った。
……たのしそうにわらってくれたの、はじめて、みたかも、しれない。

「今度、花を見に行こうか」
「おはな?」
「…うん」

(きみと、おなじなまえの……)

「え…?ブルーベルと……」

ブルーベルも知っている。真6弔花の名前は、みな白蘭が付けた花の名前だ。

「あ…!」

森を抜けた青い空に、バサバサと羽音がした。
「ことりさん…?」

ブルーベルは、手を差し出した。
ぽとりと、小鳥が何かを落としていったからだ。

「……木の実?」

小さな手に受け止めたブルーベルは、振り返った。
「ねえねえ!入江、ことりさんが…」

うれしくて、話しかけようとしたのに。

「入江…?」

そこには、誰の姿も無く。
続く道の先にも、誰もいなくて…

「あ、ブルーベル、そこにいたのかい?」
「……びゃくらん」

ブルーベルは話そうとした。

(さっきまで、入江がいたのに…)

言おうとして、どうしてか、言えなかった。

「あ、それムクノキの実だね」
「ムクノキ…?」
「美味しいよ♪それ」

ブルーベルは、口に放り込んでみた。
「あまい…」
「でしょ?自分で拾ってきたのかい?」
「ううん…。さっき、ことりさんがブルーベルにくれたの」
「へえ。すてきなプレゼントだね」

今度は、白蘭に手を引かれて歩き出す。
歩きながら、ちらりと背後を振り返った。

また、あえるよね…?

(君と、おなじなまえの花を、見に行こうか)


ふたりだけの、やくそくだよ?入江…


…でも、やっぱりブルーベルだけほっぺたあかいのは、ずるいとおもうの!






〜Fin.〜
 

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