03

ぽろぽろ、大粒の涙があふれて。
でも、膝を抱えたまま、それ以上泣きたくはなかった。
わるいこが、なくなんて、もっとひどくって、もっとわるいことなのよ。でも…

「ブルーベルも、はれぞくせいなら、よかったのに」
「どうして?」

雨属性なら、泳ぐのが大好きなブルーベルにぴったりだと思っていたのに。

「ブルーベルは、こどもだから、たたかっちゃダメっていわれて、やくにたたなかったの。でも、こどもでもデイジーははれぞくせいだから、入江みたいにびゃくらんをたすけられたのに。…ブルーベルは、なんにもできなくて“やくたたず”だったわ」
「…………」
「それに、ブルーベルは、びゃくらんがげんきになっても、かなしかったのよ。よかったねってわらってあげられなかったのよ。ブルーベルがなんにもできなかったから、かなしいっておもったのよ」

ブルーベルは、泣きながら気が付いた。
正一は、話しても話さなくてもいいと言ったのに、いつのまにか、たくさん話していることに。

どうしてだろう?
白蘭でも桔梗でも、ブルーベルには優しいのに。
分からないまま、ブルーベルは泣いて叫んでいた。

「いらない!こんなブルーベルは、いらない。きえちゃえばいいんだ!」




「……そう」

いっぱい泣いたのに、入江反応うすい…とぼんやり思っていたら、ブルーベルは正一に抱き締められていた。

「君は、悲しかったんだね」
「…………」
「白蘭サンの為に、何かしてあげたいって、いっぱい思っていたのに、助けてあげられなかったのが…君は、つらかったんだね」
「………っ」

これ以上泣くのは、もっと「ひどい子」だと思っていたのに。
ブルーベルは、うわああん、と大きな声を上げて泣いてしまった。

ブルーベルの周りにいるおとなは、やさしい。ブルーベルが何か言えば、すぐに、異口同音に「そんなことはない」「気にすることはない」と言って、すぐに話を終わらせてしまうのだ。
優しいから、そうなのだ。

でも、正一は違った。
ブルーベルのことばを、否定しなかった。

「かなしかったんだね」「つらかったんだね」と抱き締めてくれた。
それは、ブルーベルが知らない優しさだった。

「君は、白蘭サンが大好きなんだね」
「……うん」
「白蘭サンもブルーベルを大好きだと思うよ」
「…どうして?ブルーベル、やくにたたなかった」
「きっとね、傍にいてくれるだけで、よかったんだよ」

正一の緑の瞳が、柔らかく微笑んだ。
「今、僕がそう思っているみたいに」
「…………」

ブルーベルは、少しの沈黙の後、かーっとほっぺたが熱いと思った。

「にゅーーーっ!な、ななななぁによぅっ!きゅうにっ」
「だって、僕は独りだったから。でも、君が来てくれて、僕は独りじゃなくなったから。君は悪い子じゃないし、要らない子じゃないよ」
「ひとり…?」

ブルーベルは、不思議に思って聞き返した。
「さっき、いっぱいことりさんがいたよ。ブルーベルがきたら、びっくりしてにげちゃったけど…」
「僕も鳥は好きだよ。……でも、僕は鳥にはなれない」
「…………」

ぼくは、ひとりだったから。
きみが、きてくれたから。
ひとりじゃなくなったから。
きみはわるいこなんかじゃないし、いらないこじゃないよ。

繰り返された言葉は、ブルーベルにはとても優しくて、でも、すこしかなしいような気がして。


[ 77/100 ]

[*prev] [next#]
[図書室60]
[しおりを挟む]


×
「#甘々」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -