02

ブルーベルは、森へと走った。

何処でもよかったのだ。
役に立てないのなら、そこにいたくない。
消えていなくなってしまいたい。

(きえて、しまえば…)


「こんなとこ…みずうみがあったんだ…」

ブルーベルは、斜面を下りていって、誰かいるのに気付いた。

「ことりさん…?」

逆光でよく見えない。
でも、ここは日本なのに、明るい色の髪なのだと思った。

そのひとの、肩や腕には小鳥が止まっていて、懐いている様子だ。そのひとも、小鳥に何か話しかけて遊ばせているようだった。

「きゃ…!」

ブルーベルは小さく悲鳴を上げた。
小鳥たちがみな、バサバサと飛び立ってしまったのだ。

ブルーベルは、泣きたくなった。

「ことりさんも、ブルーベルいらないんだ…」
「え…?」

さっきまで小鳥と語らっていた人物が振り返った。
紅茶色の髪に、眼鏡の向こうの緑の瞳。

「にほんじんの、ひっすあいてむ」
「…………」

そのひとは、きょとんとして、次に笑い出した。
「必須アイテムかぁ。そうだね、日本人はどうしてか、眼鏡率高いよね」

怒るでもなく、笑うのだとブルーベルはそのひと…多分少年…を見上げた。
「おとな?こども?」
「え…僕?」

少年は応えた。
「子どもだよ。中学生だから」
「うそだわっ!ちゅうがくせいならおとなよチビでも!!」
「…………」

ビシィ!とブルーベルが小さい指を突き付けると、少年ははぁと溜め息をつき、でも困ったように笑った。
「うん…まあ、チビかな、今は」

……やっぱり、怒らないんだ。

「ブルーベルがわるいこだからよ」
「何かあったの?」
「いっぱいよ。でも、ブルーベルにできることは、なんにもなかったわ」

ブルーベルは、少年の隣に、ぽすんと座って膝を抱えた。

「ブルーベルがわるいこだから、ことりさんもいなくなっちゃんだわ」
「あの小鳥は、驚いただけだよ。この辺りで暮らしているから、また戻ってくるよ」

少年も、ブルーベルの隣に座った。

「僕でよければ、話を聞くよ。でも、君が言いたくないなら、黙っていてもいいよ」
「なにそれ。あんたはどっちがいいの?」
「…あんた、って言われるくらい、僕は影が薄いんだろうなあ」

やはり、困ったように笑う。
困るのか、笑うのか、どっちかにすればいいのにと、ブルーベルは思った。

そして、気付いた。
眼鏡。紅茶色の髪。緑の瞳。

「……デイジーといっしょにいたひと?」
「うん、そうだよ」

重症の白蘭を治療していた、もうひとりの晴属性。

「びゃくらんの、しんゆう?」
「それは…。どうだろうね」
「ブルーベルがきいてるのよっ!」
「……ごめんね」

どうして謝るのだろう?
どうして、困ったまま笑うのだろう?
どうして、これ以上答えてくれないのだろう…?

「僕は、入江正一」
「イリエ?」
「うん。僕は日本に残るし、君たちはイタリアに行くんだろう?だから、覚えても覚えなくても、どっちでもいいよ」

緑の瞳は、やさしい。

「じゃー、覚えといてあげるわ」

……ううん。ブルーベルが、おぼえていたくて…わすれられないのよ。

「ありがとう。ブルーベル」

やさしく、わらうから。
なんだかブルーベルのほっぺたが、あつくなるようなきがして…

「にゅーっ!なぁによぅっ!入江のくせにーーー!!」
「…え?僕、何か悪いこと言ったかな」
「そんなこと、いってないでしょーーーっ!!!」

叫んで、ブルーベルは泣きたくなった。
……違う。もう、泣いていた。


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