02

「だぁ〜れが乙女だ電波。寝巻きのまんまでメシかよ」
「寝巻きじゃなくてネグリジェよ」
「同じじゃねえか。恥じらいの欠片もねえだろが」
「ちっちゃい頃からこうでしょ。今更、ザクロに見られたって何にも減らないわ」
「じゃー、入江はどーなのよ」

ブルーベルは、もぐもぐしていたトーストを噴いた。
そして、ザクロは顔にかかったトーストを拭きながら言った。

「きったねーなあ。どの辺乙女だよ」
「ど…!どどど、どーして、ここで入江が出てくるのっ!!」
「お前、そのうち入江の嫁じゃねーかよ。寝巻きでメシ食うのか?それとも、ベッドが一緒だから今更なのか?」
「その辺で止めて置いてあげなさいザクロ。ブルーベルが眩暈を起こしているでしょう」

ブルーベルは、ぐらぐらしていた。
実際、ネグリジェも同じベッドも前科(?)があるからだ。

オレンジ色のチューリップもろとも、正一に「大嫌い」と言ってしまって、それ以来正一が姿を見せてくれなくなって、夜の森にひとりで捜しに行ったとき。

正一にもらったヘブンリーブルーという青い西洋朝顔が満開になった早朝。ブルーベルは外にネグリジェのまま飛び出して、正一に出会った。

ネグリジェにプラスして、同じベッドだったのがお泊まり会。
この時は、夜中に怖い夢を見たような気がして、正一の部屋に枕持参。一緒のベッドでくっついてねんね。
どきどきして、余計に眠れないかも知れないと思ったけれども、正一のぬくもりは優しくて、安心して寝入ってしまった。


(僕のブルーベルから、手を放せ)

(ただ、僕の名前を呼んでくれればいいよ)
(そうしたら、僕は君を助けに行くから。必ず、君を守りに行くから)

「にゅにゅーーーっ!!!」
「アハハハッ、あれは何かあったね♪」
「白蘭様。深追いしないであげて下さい」





誤作動したブルーベルだったが、今日は殊更に食事の前に着替えたくない理由があったのだ。
つまり、正一とデート。

コットンの、総レース柄キャミワンピース。柄だけではなく、幅広スカラップレースを肩、胸、裾にあしらった、乙女なチョイス。ワンピースの内側には、やはりレースのペチコートスカートで、当然に裾からレースがチラリ。

ブルーベルは、鏡の前で前、横、後ろ全ての姿を確かめて、くるりと1回転した。
「完璧よ…!完璧だわ、ブルーベル!」

この服装が純白だったので、間違っても食事のシミなど少しでも付けたくはなかったのだ。

トントンと階段を下りてゆくと、白蘭がにこにこと笑った。
「あ、今日は真っ白のお姫様なんだね」
「びゃくらんは、何もしなくても真っ白ね。お姫様じゃないけど」

ブルーベルが、白蘭から貰ったマシマロをもふっと口に含んだとき、桔梗に案内されて正一が現れた。
ブルーベルは咳き込んで、後ろを向いてからごっくんした。

今のは…もふもふは、お姫様じゃなかったわ…!!

「どうしたんだい?ブルーベル」
「な、何でもないっ!」
「そう」

正一は、にこりと笑って、ブルーベルに手を差し伸べた。
ブルーベルは、お姫様な服に気合いを入れていただけに、ノーコメント!?とショックを受けて、「にゅにゅーーーっ!入江のばかーーー!!!」と叫ぶこともなく、半ば茫然として屋敷を出て行った。

そのふたりの後ろ姿を見送って、アハハと白蘭がもうひとつマシマロを口に放り込んだ。

「正チャン律儀だな〜。ずーっと、絶対20分くらい前には来るじゃない?」
「ハハン、あのふたりの場合、待ち合わせ時間は無意味です。お姫様が30分前にはスタンバイでそわそわしていますからね。それ以上待たせると癇癪を起こします。苦労人の王子様・入江正一じゃないと無理でしょう」



正一は、クシュンとくしゃみをした。
「入江、風邪?」
「ん…違うよ、多分」

白蘭サンと桔梗辺りが、噂話をしているような気がする……

「ブルーベル。ふたりになったら、言いたかったことがあるんだよ」
「なぁに…」

せっかくおしゃれしたのに…と、とぼとぼした足取りのブルーベルは、生返事をした。

「花嫁さんみたいだね」
「…………」

ブルーベルは、俯いたまま正一の言葉を聞いて、そろりと顔を上げると、正一と目が合ってボンと真っ赤になった。

「……っていうの、流石に僕も、白蘭サンたちの前じゃあ言いづらかったんだよ。ごめんね」
正一も照れた様子で癖のある紅茶色の髪を掻いた。


(…そうなの)

(ブルーベルは、まだウエディングドレスを着られないから)

(白いワンピースを着て、入江に見せたかったのよ)

「…?何か言ったかい?」
「な、何でもなぁいっ!」

心と心がつながるのは、うれしいの。


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