おとなの事情その1

 
「白蘭様、まだ起きてこないね…」
「にゅ。どーして、びゃくらんっておねぼうさんなのかなー」
「夜な夜なゲーマーやってるんじゃねえか」
「ザクロのでんぱー。どうしてそれで、よふかしになるのよぅ。あさおきて、あさにゲーマーすればいーでしょー?」
「解ってねーなオコサマ電波。夜にやるのがいーのよ。夜だから熱中したくなんのよ」
「にゅーっ!いみふめいよ、ザクロでんぱ!!いいこは、はやねはやおきなのよっ!!」
「……つまり、白蘭様はいい子とは程遠いということです」

桔梗が席を立ったとき、何やらゆらっと紫の炎が揺れたような気がした。
「食事は先にどうぞ。私は白蘭様を叩き起こしてきます」
「また3度目ー?」
「4度目です」

桔梗が食堂から出て行き、デイジーが呟いた。
「今…桔梗、静かに怒ってたよね……」
「にゅ。そうだった?」

ブルーベルとしては、桔梗は静かなる男で、いつも「びれい」な微笑をたたえているイメージだ。
「さっきも笑ってたけど?」
「バーロー。その辺がアイツはこえーのよ」




「白蘭様」
ノックもせずに、面倒なのでドアも開けっ放しのまま、桔梗はあるじの寝室に踏み込んだ。

「さっさと起きて、マシマロ以外の健康的な食事を食べて下さい」
「ん…あと10分……」
「さっきは5分と仰いましたよね」

おまけに、確かにベッドから床に引きずり下ろしたのにもかかわらず、白蘭のベッドはこんもりと布団が丸くなっている。
……いちどは起き上がったのに、わざわざベッドに戻ったのか……未来の入江正一も絶対にイラッとしたのに違いないと桔梗は思った。

「さっさと起きないと、今度は廊下まで蹴り飛ばして差し上げますが?」
白蘭は、むにゃむにゃした口調で応えた。
「桔梗のサド〜」
「サドで何が悪いのですか」
「…うわぁ…桔梗チャン怖いよ」

もぞ、と白蘭が顔を出した。
……口で言うほど怖がっていないばかりか、へらりと笑っていても美形なのがムカつきます白蘭様。

「やっぱ、ここは定番の王子様のキスで♪」
「サドの王子なんているんですか?」
「沖田総悟」
「他ジャンルを持ち込まないで下さい。仮に私が王子だとして、白蘭様が姫ですか」
「どっちも王子でもいいじゃない?」
「世界中の少女の夢をぶっ壊すような発言は控えて下さい」
「いーからー。魔法を解くのは王子様のキスなんだよ〜キス〜」

ふぅ、と桔梗は溜め息をついた。この駄々っ子を起こすには、さっさとふっかいキスをお見舞いして勝負だ。
何が勝負かというと、白蘭が巧いということだ。だが負けられない。サドの名にかけて。

という訳で、桔梗から咬み付く勢いのキス。白蘭がはふ、と甘い吐息を漏らしたので、勝ちかと思ったらそうでもない。ナチュラルな誘い受け。流石は攻でも受でも万能な遊び人。


「にゅ。それってなにー?」

無邪気な声がして、桔梗も白蘭も、ん?と唇を放した。
振り向けば、ブルーベルが不思議そうな顔をして立っている。

「どーしておくちくっつけて、くちゅくちゅなのー?」
白蘭は、ありゃ〜と笑顔で呟き、同じく完璧な笑顔で桔梗が解説した。

「大人のうがいです」


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「ねー入江」
「何だい?」

ブルーベルが、もじもじとしながら言った。
「入江は、ブルーベルのほっぺたに、ちゅってキスしてくれるでしょ?でも、おとなどうしだったら、おくちにキスするんだよね?」
「……。そうだね…」

ということに、しておこう…と正一は思った。
唇は、早すぎると思う。

でもねー、とブルーベルが首を傾げて続けた。
「きょうのあさにね〜、びゃくらんと桔梗がおくちをくっつけてたんだよ。あむあむのくちゅくちゅだったんだよ」
「…………」

正一は、缶コーヒーを思い切りむせた。

「入江、だいじょうぶ?」
「何とか……」

白蘭サン!子どもに何を見せてるんだよ!!

「それなに?ってきいたらねー、桔梗が「びれい」なかんじにわらって、おとなのうがいです、っておしえてくれたんだよ」
「…………」
「おとなって、かわってるねー。だって、うがいだったら、せんめんじょでコップとおみずつかってすればいいとおもうの。ブルーベルも、おとなになったら、あむあむのうがいするのかなあ?」
「…………」

正一は、遠い目になって答えた。

「そうだね…」





うがいじゃないって、いつどうやって教えればいいんだよ、僕!!
 

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