01

今日もデートでピクニック。

ブルーベルは、部屋の中をぐるぐる歩きながら言った。

「入江おそいっ!ブルーベルは、とっくによういできちゃったのにっ!」
「遅くもありませんよ。まだ、約束の時間まで30分あるのですから」
「お前も進歩がねーな電波。お前が入江ラヴ過ぎてフライングしまくりなんだろ」
「だ…!だだだだれが、ラヴ…!!」
「あ゛〜、別に、入江がお前にラヴでもいいぜ」
「ザクロ、いい加減にしなさい。ブルーベルの口から魂が抜けそうです」


「逢引の時」


ん?と皆がそっちを見た。妙に重々しく喋ったのはトリカブト。
「トリカブトが時を告げた…けど。あいびき、ってぼくチンわからない」
「あ〜それはね、ズバリ、デートのことだよ♪ちょっと古風な言い方もステキだよね〜」
「そう思いますが、トリカブトまでフライングすることは無いのでは?」

その時、ちょうど来客の知らせが入った。
メイドに案内されて入って来たのは正一。

「あ、来たね正チャン。でも、約束の時間まで、あと20分以上有るよ?」
「はい。フライングだとは思ったんですけど、以前迎えに来たときに、ブルーベルから30分前から待っていたと叱られてしまったので、このくらいがいいのかなって…。早すぎたのなら待ちます」
「その必要はありませんよ」

桔梗の背後から、ブルーベルがひょこっと顔を半分だけ出している。

「やあ。ブルーベル」

正一は声をかけたけれども、ブルーベルはなかなか出てこない。
「おい。王子もフライングで迎えに来たぜ。さっさと出て来いや電波」
「にゅーーーっ!!」

ザクロがひょいとブルーベルの脇を持ち上げると、すとんと正一の前に下ろした。

正一は、ブルーベルを3秒ばかり見つめると、にこりと笑った。
「新しいワンピースと靴なんだね。よく似合っているよ」

そして、ボンと赤くなるブルーベル。

今日のブルーベルの服装は、パフスリーブのブラウスに、総レースのコットンキャミワンピースを合わせて、バレリーナのようなサテンリボンシューズ 。そしていつものお気に入りの水色のリボンの帽子。

ハハン、と桔梗が笑った。
「靴まで褒めるとは、やりますね、入江正一」
「桔梗…あまりからかわないでくれないかな」

正一は、仄かに顔を赤らめつつ、小さく溜め息をついた。
早く白蘭・桔梗・ザクロの(・∀・)ニヤニヤから逃げたい。

「行こうか、ブルーベル。荷物は持ってあげるよ」
「紳士だね正チャン♪」
「外野五月蠅いです!」

そして、手を繋いで公園へ。
特に何があるという場所でもないのだけれども、ブルーベルは、広い芝生を元気に走り回ったり、四つ葉のクローバーを探したり、正一と一緒に季節の花を見るだけで楽しそうにしてくれる。

「入江ーっ!」

小川を橋で渡った向こうで、ブルーベルが手を振る。
「おなかすいたよねっ?」
「…そうだね」

正一はくすりと笑った。その昼食は、屋敷を出てからずっと正一が持っている荷物の中だ。
ブルーベルが待つベンチに正一も座ると、ブルーベルが得意そうに言った。

「あのねー、おひる、ブルーベルがつくったんだよ!」
それは、チキンバスケット。
フライドチキン、フライドポテト、コロッケ、トースト。チキンにはレモンが添えられている。

「美味しいよ」
「にゅ。ブルーベルえらい?」
「うん。上手だね」

きっと、えらいえらい、と頭を撫でてやると、ブルーベルは「にゅーっ!こどもあつかいーーー!!」…と叫びそうな気がするので、正一はそれは避けた。

「全部自分で作ったのかい?」
「桔梗におしえてもらったよ」

……8割は、桔梗が作ったと思う。

そして、ブルーベルはというと、ご機嫌に足をぶらぶらさせながらフライドポテトをつまんでいる。
正一は、その小さな足を見て思う。桔梗は靴も褒めたと言ったけれども、ブルーベルの靴はよく変わるので、気が付くようになったのだ。

無邪気に外遊びするのに、フォーマルシューズを惜しげもなく普段使いする。ある程度は使用人が汚れを取って磨くのだろうが、ほぼ消耗品なのではないかと思う。今日の靴も、サテンのリボンはあっという間に汚れて、あと数回しか履けないのだろう。

「…ブルーベル。その靴やドレスも、自分で選ぶの?」
「んっとねー、いつも、くつもおようふくも、だいたい桔梗がいくつかチョイスするの。それぜんぶしちゃくして、ブルーベルがいちばんかわいいっておもうのをえらぶんだよ」

……ここでも桔梗。

ふぅ、と正一は溜め息をついた。
「……僕は全然ダメだな。料理なんかしたことないから、教えてあげられないし。服や靴も選んであげられないし」
「にゅ?入江、いつもおりょうりって…」

ブルーベルは、はっと気付いた。
……知らない、何も。

正一が、何処で暮らしているのか。
どんな生活をしているのか。何も…

でも、それは訊いてはならないことのような気がするのだ。
尋ねれば、正一は困ったように笑って、ごめんねと言って、森の向こうに消えてしまうような気がして…

「入江。おようふくやくつ、どうしてえらんでくれないの?」
「ん…。ブルーベルにね、どれが一番似合う?ってきかれてもね、僕は多分、どれでも全部可愛いって思うし、そう言うしかないと思うから」
「…………」

にゅにゅーーーっ!と、公園にブルーベルの声が響き渡った。

「入江のくせに、ころしもんくーーー!!!」
「そうかな…?ごめんね」

正一は、困ったように尋ねた。
「僕は将来、桔梗と白蘭サンと、どっちに“ブルーベルを僕に下さい”って言えばいいのかな」
「…………」

ブルーベルが、ぷしゅーと真っ赤になって、何も言えなくなってしまったので、正一はくすりと笑った。

「…すきだよ。ブルーベル」

染まった柔らかい頬に、キスをした。





〜Fin.〜
 

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