02

「……入江はね、やさしいの。…何だかね、びゃくらんも桔梗もブルーベルにはやさしいけど、それとは、なんだかちがうきがするの」
「…………」
「……あったいの。これもね、びゃくらんも桔梗もそうなんだけど、やっぱりちがうし……ブルーベルはあんしんするのに、どきどきするの」

ちいさいけど、ちゃんと女の子なんだなあ…と思いながら、綱吉はブルーベルの言葉を聞いていた。

「ブルーベルは、わがままな子だけど、びゃくらんも桔梗も、それでもブルーベルをかわいがってくれるわ。…でも、入江はすこしちがうの」
「…………」
「入江もおこらないし、ゆるしてくれるわ。でもね、ブルーベルがわるいときでも、入江のほうが“ごめんね”って、こまったおかおをしてわらうのよ。…ブルーベルが、だいきらいっていっても、びゃくらんと真6弔花はほんきにしないし、だれもきずつかないけど、入江はほんきにするし、きずつくのよ」

風が、ブルーベルの帽子の水色のリボンを揺らす。

「……ブルーベルはこどもなのに。入江はほんきにして、きずついて、なのに“ごめんね”ってわらうのよ」
「…………」

綱吉は、ブルーベルの横顔に、切ない後悔を感じた。
きっと、ブルーベルの言うような過去が有ったのだとしても、正一は自分で自分の心の整理が付いたからブルーベルの傍に居続けて、愛情を注いでいるのだろう。

でも、ブルーベルは自分の罪を忘れていない。
ブルーベルは、正一と関わることで、初めて人間の心と命を実感して、大切に思うことを覚えていったのではないか。

(ブルーベルは、ひとごろしはたのしかったわ。びゃくらんにほめてもらえるから、うれしかったわ)

この少女に、「命の大切さ」などという漠然としたものを説いたところで、きょとんとして、そして素っ気なく「わかんないわ」と言うだけだ。

(ブルーベルの、“ゆいいつ”の“とくべつ”は入江にあげたの)
(入江の“ゆいいつ”の“とくべつ”も、ブルーベルがもらったの)

この少女が初めての恋をして、その恋心は正一だけのもので、正一もブルーベルだけなのだということばを贈った、そうして通い合った心だけが、ブルーベルをこの地上に繋ぎ止めた。

「特別で唯一ならね、正一君は何度傷付いても、ブルーベルを許してくれるよ」
「……沢田、入江とおんなじこといってる」
「同じ…?」
「あのね、びゃくらんが、入江にいっぱいひどいことをしたんだって。でも、入江はきずついても、そのままだきしめればよかった、っていうの。びゃくらんのこと、すきなまんまだっていうの。……むずかしいよ。ブルーベルには、入江はやさしすぎて、ときどきよくわかんないの」
「…………」

それは、消え去った未来の話なのだろう。
親友達は、裏切り合い欺き合い、袂を分かった。

正一が勝って、それは世界にとっては望ましく、「正しい」ことだった。
それでも、正一は白蘭の元に留まって、その罪ごと抱き締めればよかったと、何度も悔いたのだろう。

「でもね、ブルーベルは、入江のこと、よくわかんなくていいの」
「どうして?」
「わかんなくたって、すきになれるわ。これからわかれば、もっとすきになるとおもうの。だから、ブルーベルは、入江のわかんないところもぜんぶ、すきっておもっていればいいのよ」
「…………」

空を見上げたブルーベルの横顔はどこか晴れやかで、綱吉に話しているうちに、自分で自分自身の心を確かめられたのかもしれなかった。

綱吉は、自分が幼い頃の事を思い出した。
将来の夢は巨大ロボになることだった自分だ。こんなに大人びた事は考えたこともなかったなあと、女の子の方が大人なのかな…と、小さく溜め息をついた。

「ねえ、沢田」
「何?」
「沢田がいちばんすきなおんなのこはだれ?」
「…………」

ブルーベルが、じとっと綱吉を見た。
「きめられないのは、テスト0てんよりもダメだわ」
「何で、そんなことまでしってんのーーー!!!」
「もっと、しってるわ。みらいで、ユニとはじめてあったとき、あかくなってドッキンしたのよ。沢田だけじゃなくて、ヒバリとクロームいがいボンゴレのしゅごしゃはぜんいんデレッとしてたけど」

……そんなことも、あった!

「だめよ。ユニがいくらかわいいからって、ユニはγのものよ。よこれんぼは、おとこらしくないわ。おんなでもダメだけど」
「わ、わかってるってば!横恋慕してないから!!」
「あと、ラル・ミルチのみずあびを獄寺とのぞきみして、はだかをみちゃったのよ。けっこうサイテーだわ」
「すみません!!」
「ブルーベルにあやまってもしかたがないわ。ラルはコロネロのものなんだから、コロネロにあやまればいいとおもうの」
「コロネロに殺されるよ!!!」
「……でも、それよりも」

そのつぶらな青い瞳が澄んで綺麗だったから、綱吉は言葉に詰まった。

「沢田は、京子とハルと、どっちがすきなの?」


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