Mimosa-黄色

 
「…なんか、さいきん、きいろいまるいおはな、うってるね」
「ミモザの日が近いからですよ」
「ミモザの日…?」

ブルーベルの手を引いて街角を歩きながら、桔梗が教えてくれた。
「3月8日は、国連が決めた“国際女性デー”なのです。もう100年以上前の話ですが、その頃は男性優位社会だったので、女性の政治的自由と平等のために戦う、というデモが起こったことがきっかけで、この日が定められたのですよ」

むー、とブルーベルは眉を寄せた。
「むずかしい…わかんない」
「わからなくてもいいですよ。3月8日が女性の為の日で、イタリアでは男性が女性に日ごろの感謝を込めて、ミモザの花を贈る日になったと、それだけ覚えていれば、今のブルーベルには十分です」
「こどもあつかいー!」
「そうでもありません。贈る相手は、母親でも奥さんでも会社の同僚でもいいのですが、当然に恋人でもいいのですよ」

ハハンと桔梗は流し目で笑った。
「ブルーベルには、入江正一がいるではありませんか」
「にゅにゅーーーっ!なんでハハンなのよーーーっ!!」

それに、微妙。

「ブルーベルは…入江にかんしゃされることなんか…なんにもないもん」
「そうですか?」
「ブルーベルから、入江にありがとうは、いっぱいあるけど……」

俯き加減に、ブルーベルは言った。
「そのことだって、ブルーベルはありがとうって、いってあげたこと、ないもん……」

いつもいつも、正一が優しくしてくれるばかりだと、ブルーベルは思う。
自分はワガママで、素直じゃなくて言いたい放題で、正一はそれでも柔らかく笑って「ごめんね」と言ってくれる、そんな関係。

(…すきだよ。ブルーベル)

「にゅにゅーーーっ!」
急に脳内に正一の声が響いて、ブルーベルは頭を抱えて叫んだ。

「どうしたのですか?」
「な、なんでもなぁいっ!」
「つまり、何かあるのですね」
「うわあああん!!桔梗のいじわるーーーっ」


……そして、3月8日ミモザの日。

「ほら、私の言った通りになりましたよ」
「なんのことよぅ」
「入江正一が来ていますよ」

ブルーベルは、桔梗の脇をパタパタと駆け抜けて、桔梗はくすりと笑った。

「入江!」
「やあ、ブルーベル」

正一は、微笑した。
「これを、君に」
「……リース?」
「違うよ」

可愛らしい、小さなポンポンのような黄色い花で編んだ輪を、正一はそっとブルーベルの頭に載せた。

「…はなかんむり?」
「うん。可愛いよ」

ブルーベルは、ボンと真っ赤になった。

「お…おはなが?」
「君がだよ」

正一が、ブルーベルに手を差し伸べた。
「行こうか」
「…どこ?」
「君が行きたいところなら、どこでも」

ほっぺたが熱いと思いながら、ブルーベルは正一を見上げた。

「きょうは、おとこのひとが、おんなのひとに、かんしゃのきもちをこめて、ミモザをおくるひでしょ?ブルーベル、入江になにもしてあげてないよ」
「……そんなことはないよ」
「じゃあ、どんな?」
「そうだね…」

正一の頬が、微かに染まった。
「外で…言いたいな」
「にゅ。どーして?」
「白蘭サン…(・∀・)ニヤニヤして覗かないでくれませんか?」

ひょこ、と白蘭が顔を出した。
「にゅにゅーーーっ!びゃくらんーーー!!」
「ニヤニヤじゃなくて、(・∀・)ニコニコだよ♪」
「覗いてるのは同じでしょう!!」

にっこにこ(?)の白蘭に見送られて、ふたりは手を繋いで外に出た。

「入江…ブルーベルにかんしゃって、なぁに?」
「僕は、君といられるだけで、幸せだと思うから。君は、いつも僕を幸せにしてくれるひとだから。…ありがとう」
「…………」

正一は、微苦笑した。
「本当は、僕の方が、君を幸せにするよって言えれば格好いいのにね」
「…………」

ブルーベルは、耳まで熱いと思いながら叫んだ。
「にゅにゅーーーっ!入江のくせに、ころしもんくーーー!!!」
「え…そうかい?僕、あまり格好良くないと思うんだけど」
「かっこいいよバカーーー!!!」
「……そう」

正一が、クスクス笑った。

「ありがとう」
「なんでわらうのっ!」
「君が、僕を幸せにしてくれるからだよ」
「〜〜〜〜〜っ」



…ふわふわ、黄色い花が揺れる、ミモザの日。


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