01-おひなさま

「にゅ…微妙」
「何がだい?綺麗で、立派な七段飾りだと思うんだけど」
「その、りっぱすぎるかんじが、なんだかコワイのっ!!」

つまり、それは、白蘭がブルーベルに買ってあげた雛人形。
その時に、白蘭が、

「この嫁入り道具の箪笥とか、すごく精巧に出来てるの♪引き出しはちゃんと開けられるし、実際に使えるもののミニチュアなんだよ♪」

と言ったらしいのだが。悪ノリが好きな白蘭は、余計なことも付け加えたらしい。

「あんまりリアルで、人形が動き出しそうだよね♪」
「にゅにゅーーーっ!なんでそんなコワイこというのーーー!!!ぜんぜん、プレゼントじゃないでしょーーーっ!!!」

…という次第。

「珍しいね」
「なにが?」

にこりと、正一が笑った。

「ブルーベルが、僕に抱き付いてきてくれるのが」
「…………………………………」

ブルーベルは、じたばたした。
「やだーっ!はなしてよ入江っ!!」
「どうして?僕は嬉しいんだよ」

モヤシと言う割には、正一の方がずっと力が強くて、じたばたするだけで抜けられない。
…のが分かったから、それを言い訳にして、ブルーベルはそっと正一にくっついた。

「まあ、主役の内裏雛は座っているからいいとして、三人官女の両脇は立っているよね。いつでも歩き出せそうだよね」
「いやあああーーー!!!なんてりあるなこというのーーーっ!!!」
「五人囃子は、音楽を演奏するんだよ。いっそ動いた方が楽しそうだよね」
「たのしくなぁぁいいい!!」
「そうかな」

正一は、真顔で言った。
「動くはずのないものが、動くと思うから怖いんだよ。いっそ、中身をロボット的な仕掛けにして、普通に動けるようにしたら、普通に怖くないし楽しいと思うんだよ」
「入江…どこまでも、ぎじゅつやなんだね……」
「人形が、みんな階段から好き勝手に下りたり上ったりできるようにしてみる?」
「イヤーーー!!入江ならできるんだろうけど、ぜったいイヤーーーっ!!!」

そうか…絶対なのか…と、正一はメカニック魂を引っ込める事にした。

「白蘭サンが悪ふざけしたみたいだけど、ちゃんとこの雛人形は、プレゼントなんだよ」
「どの辺!!」
「雛人形はね、ブルーベルを守ってくれる人形なんだよ」
「…どーゆー意味?」

正一は、ブルーベルに微笑みかけた。
「日本には、形代(かたしろ)っていう考え方があってね、人形が、人間が受ける災い…不幸なことを、人間の代わりにひきうけてくれるんだよ」
「…………」
「白蘭サンがプレゼントしてくれたのは、そういう優しい人形たちなんだよ」

……やさしい、おにんぎょう。

そう思って見上げれば、お雛様もお内裏様も、どちらも優しく笑っていてくれるような気がした。

「それにね、“嫁入り道具の箪笥”って白蘭サンはちゃんと教えてくれたんだろう?」
「…にゅ?」

くす、と正一は笑った。
「雛人形は、昔の高貴な人の、結婚式の様子をあらわした人形なんだよ」

……けっこんしき。

「だから、雛人形は女の子の健やかな成長を願うものなんだけど、いつかきっと幸せな結婚が出来ますようにっていう意味もあるんじゃないかな」
「…………………………………」

ブルーベルは、やっぱり正一の腕の中でじたばたした。

「にゅにゅーーーっ!なによーっ!入江の、おもわせぶりー!!入江のくせにーーーっ!!」
「……違うよ」

正一は、桃の花のように染まったブルーベルの頬に唇を寄せた。

「思わせ振りじゃなくて、僕は君の事を想っているよ」








……きょうは、うれしいひなまつり。

 

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