Mimosa-ピンク色

 
「今、ミモザって呼ばれて親しまれている花はね、本当はフサアカシアやギンヨウアカシアっていう名前なんだよ」
「…にゅ。ミモザはまちがいなの?」
「間違いかと言えばそうなんだけど、たくさんの国でそう呼ばれて親しまれているからね、それはそれでいいと思うんだよ。ちょうど3月頃に満開になる花で、いい香りがするし、春を告げてくれる色だしね」
「きいろがはるなの?」
「うん。イースターって分かるかな」

正一は説明した。
イースターは、一度亡くなったとされたイエス・キリストの復活を祝う日だ。

「リ・ボーンしちゃったんだね」
「そ…そうだね。それを象徴する色が黄色なんだ。喜びや幸福を意味する太陽を象徴しているんだよ」
「にゅ。はれぞくせいのほのおだね」
「そ…そうだね。たまたまなのかな…」
「じゃー、もともとのミモザは、どこにいっちゃったの?」
「……ここだよ」

ブルーベルは、ふっと周囲の空気が変わったのを感じた。…暖かい風。
そして気付いた。足元には…

「わぁ、ピンクのポンポンだ!」
「…待って」

ピンク色の丸い花に触れようとしたブルーベルの手を、正一が掴んだ。
「にゅにゅ!何するのよぅ」
「気を付けて。棘があるんだよ」

正一に言われて、ブルーベルはその花の茎をじーっと見た。
「いっぱいトゲトゲーっ!!これじゃ、はなかんむりになんないっ!」
「そうだね。紙で包めば、かろうじて花束にはなるかもしれないけど、枝があっちこっち伸びてるから難しいね」
「せっかくかわいいのにー」

ブルーベルが残念そうなので、正一は種明かしをする事にした。
「この花はね、オジギソウって呼ばれて親しまれているんだよ」
「…おじぎそう?」
「気を付けて葉っぱに触ってご覧」

ブルーベルの小さな指が、オジギソウの葉っぱをちょんとつついた。

「あ…!」

目の前で、葉っぱがパラパラと内側に向かって閉じてゆく。

「動いた!」
「面白いだろう?だから、オジギソウって言うんだよ」
「…うん。おもしろい…」

ブルーベルは、他の葉っぱもちょんちょんとつついては、葉が動いて閉じてゆくのを観察している。どうやら気に入ってくれたのだと、正一はくすりと笑った。

「触っても閉じるけどね、夜にも葉っぱは閉じるんだよ」
「それ、見てみたい!」
「じゃあ、自分で育ててみるかい?」

正一は、ブルーベルの手のひらにぱらぱらと小さなさやを落とした。
「……ひからびたえだまめのちっちゃいやつ…」
「あはは、実際、マメ科の植物だからね。自分で育てるなら、植えるのは初夏がいいかな。発芽に適している温度が、最低でも20度。本当は25度以上がいいんだ」
「にゅ。ブルーベルがんばってみる」

(入江がくれたから、だいじにそだてたいの)

「…?今、何か言ったかい?」
「な、ななな何も、言ってないよっ!」
「そう」

正一は、柔らかく笑ってブルーベルを見つめた。
「僕はね、黄色いミモザも君に似合うけど、ピンク色のミモザも似合うって思うんだ」

ブルーベルは、ちょっと複雑な気持ちになった。
「どーして?ピンクのミモザって、かわいいけど、とげとげだよ。ブルーベルってとげとげ?」
「そうだね」
「さらっといわないでよっ!!」

ブルーベルは正一の胸をぽかぽか叩こうと思ったけれども、高校生になって急に背が伸びた正一とは身長差があって背伸び。

正一は、そんなブルーベルの小さな拳をそっと大切そうに包み込んだ。

「綺麗な花にはね、棘があるんだよ」
「…………」
「誰のものにもならないように」

ブルーベルは、かーっと真っ赤になって叫んだ。

「にゅにゅーーーっ!入江のくせに、ころしもんくーーーっ!!」
「あはは、ごめんね」

正一は、ブルーベルの手を引いて歩き出した。




夏になれば、棘はあるけれど、可愛らしいピンク色の花が咲くよ。

……君みたいに。





〜Fin.〜
 

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