02

(入江、こなければいいのに…)

あいたいけれど、あいたくない。

……でも、きっと入江はくるの。
おとなはうそつきで、入江もときどきうそつきだけど、……でも、それはやさしいうそなの。

(それに…)

ブルーベルは、ベッドに突っ伏した。

(ユニは、おひめさまだから…ブルーベルとはとは、ちがうんだもの)

「ブルーベル、寝ているのですか?」

ドアが開いて、桔梗が迎えに来た。
「そろそろ広間に来て下さい。パーティーが始まりますよ」
「……入江は?」
「まだ来てませんよ。少し遅れるそうです」
「ふぅん…そう」

桔梗に手を引かれて廊下を歩きながら、ブルーベルはぽつんと尋ねた。
「どうして、そんなことわかるの?」
「今朝、ポストにカードが入っていたのだそうです」

ブルーベルは、少しほっとしていた。
正一は、誰かに直接会って伝言したわけではないのだ。

(…ブルーベルが、とくべつだとおもっていたのに)

森の中で会えて、綺麗な花が咲いている場所に連れて行ってもらえるのは。
……正一が、会ってくれるのは。

(でも、パーティーに入江がくるのなら…)
(ブルーベルは、入江の“とくべつ”じゃないんだ……)

広間に着くと、ジッリョネロファミリーの者たちがたくさんいて、他の真6弔花も既に揃っていた。
そして、賑やかに誕生パーティーが始まる。
ユニはその中心にいて、皆からたくさんのプレゼントを貰って、おめでとうございますと大人まで丁寧な言葉で祝福をされて、自然な笑顔でありがとうと答えていた。

(ユニは、とくべつ、だから)

「ほらほら、ブルーベル。ケーキいっぱいあるよ〜♪」
「白蘭様…他にも食事は沢山あるのですから、甘味を子どもよりも独占するのはやめて下さい」

人数が多くて立食パーティーなのだけれども、ブルーベルにはテーブルが高い。
だから、桔梗が皿に取ってきてくれたご馳走を、椅子に座って黙って食べていた。

「ブルーベル……元気ない」
「デイジーより100倍げんきだよ」

子どもだというのに、ふたりでどんよりと料理を食べている様子を見遣って、パーティーの始めから酒しか口にしていないザクロが言った。

「おいおい…デイジーは元々あんなだがよ、ブルーベルの王子はどうしたよ」
「来るでしょう。彼は律儀ですから」
「ん、そろそろだと思うよ〜?」

白蘭は、もぐもぐとケーキを食べながら笑った。
「正チャンはシャイだから、遅く来て早く帰っちゃうかも知れないけどさ。別にユニちゃんに会いに来るわけじゃないんだもん♪」
「あ〜…、聞くだけ野暮ってやつでしたか」
「白蘭様。口の周りに生クリームが付きまくっています」

そして、パーティーもそろそろ半ばだろうかという頃に、メイドにひとりの少年が案内されて広間に現れた。
もう、料理もデザートも食べ飽きて広間の隅っこにいたブルーベルは、はっとした。

「入江!」

ブルーベルの顔が、嬉しさにぱぁっと輝いた。
でも、正一は、真っ直ぐにユニの元へ向かうと、花束を差し出した。

「お誕生日おめでとう。花束なら、たくさんの人に貰ったと思いますが…」
「いいえ、綺麗で嬉しいです。ありがとうございます」

正一が片手で持っていた花束も、小さなユニの手に渡ると、両手にいっぱいな大きな花束に見えて。
笑顔で何か話をしているふたりの姿に、ブルーベルは泣きたくなった。

(なかない…100番目にすきなだけだもん)

(ないてなんか、あげない)

「おい電波。お前の王子が来たぜ」
ブルーベルは、真っ赤になった。
「にゅにゅーーーっ!だぁれがでんぱでだれがおうj「元気そうだね、ブルーベル」

いつの間にか、ブルーベルのすぐ傍に正一は来ていて、ブルーベルに笑いかけた。でも、隣のザクロに対しては、困ったように言った。
「やだな…ザクロ。僕は、王子様っていう柄じゃないよ」
「じゃー、お前が持ってんのは何なのよ」

ブルーベルも、ザクロのひとことで気付いた。
正一は、ユニにプレゼントした花束以外に、別の小さな花束も持っていたのだ。

「はい、これは君に」
「…ブルーベルに?」

それは、綺麗なオレンジ色のチューリップの花束。
ブルーベルは、少し驚いて、どきどきする…と思いながら尋ねた。

「どうして?ブルーベルは、きょうおたんじょうびじゃないよ」
「うん。知ってるけど、せっかく会えると思ったから。受け取ってくれないかな」
「……入江って、いっつもそういういいかたする…」
「何の事だい?」
「おしえてあげないっ!」

あげるよ、じゃなくて、うけとってくれないかな、…って。
入江がプレゼントしてくれるほうなのに、入江がたのむの。

「久し振りですね、入江正一。お元気でしたか」
「うん。君も、白蘭サンのお世話を出来るのなら元気だよね」
「ええ。2度寝以上するので、3度以上叩き起こします」
「ああ…そんな感じだったよ僕も。甘いもので釣ればすぐ起きるんだけど、虫歯だらけになりそうで、あまり多用できない手なんだよね」
「虫歯で済むならいいですが、糖尿病は困ります」
「アレ?正チャン桔梗チャン。どうしてそんなに僕を困ったちゃんにして意気投合してるの?」

ブルーベルは、どうしてか不安になった。

……どうして?入江…
ちゃんと、びゃくらんとも桔梗とも、なかよくおはなししてる……?


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