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「あの未来って、あんまり覚えていないんだけど、びゃくらんと桔梗が、ブルーベルのこと“人魚姫”ってよんだの」

本当は、そのように見える魚竜で、人魚ではなかったのだけれども。
でも、その匣の力はこの時代の自分にも受け継がれた。

受け継がれただけで、ブルーベルは使ったことはない。虹の代理戦争でも、桔梗曰く「子どもには危ない戦いですから、隠れていなさい」という理由で。

「桔梗はすきだけど、こどもあつかいはキライ…」
「代理戦争なら、僕も晴属性だけどバトラーではなかったよ」
「技術屋だからでしょ?」
「それもあるけど……僕は、戦いには向いている人間じゃないって、白蘭サンは知っているんだと思うよ」
「ふぅん…」

確かに、正一なら“向いていない”ような気がする、とブルーベルは思った。
バトラーになるのには、正一は優しすぎる…きっと。

「それでね、この時代では、ブルーベルは一度も開匣したことがないのに、小さいころはやっぱり“人魚姫”って呼ばれることがあったの」
「お姫様みたいだからだろう?」

ブルーベルは真っ赤になった。
「にゅーっ!サラッと言わないでよっ!」
「じゃあ、何て言えばよかったんだい?」

……よく、わかんない、けど。

「じゃあ…、白蘭サンや桔梗にとって、ブルーベルは小さなお姫様みたいに大切な存在っていうことなんじゃないかな」
「…………」

今…、微妙にハートブレイクした。

「…そうだよね。入江にとっては、どーせ“みたい”なだけなんでしょ!ブルーベルは、入江のお姫様じゃないんでしょ!!」
ブルーベルは、シロツメクサの上で、膝を抱えた。

「違うよ」

正一が、やはり困ったように笑った。
「僕の方が、王子様っていう柄じゃないんだよ」

一見謙虚にに聞こえるけど。むっかー。

「入江は、ブルーベルにダイヤモンド送ってくれるんじゃなかったのっ!?」
「従者でも、頑張れば大粒じゃなくてもダイヤは贈れると思うよ」
「にゅにゅーーーっ!入江のばかぁぁ!!お姫様を迎えに来てくれるのは、王子様なのっ!王子様に決まってるの!!」
「……ごめんね」

ブルーベルの心臓が、どくんと鳴った。
…このまま、入江はさよならになっちゃうの…?

「柄じゃないけど、君がそう言うなら、努力するよ」
「……うん」

緑の瞳が笑ってくれて、安心する。
どきどき、するのに、安心、する。

「あのね…でもブルーベルは、人魚姫はイヤなの」
「どうして?」
「だって…。人魚姫の王子様は、人魚姫を選んではくれなかったもの。人魚姫は、王子をぶっ殺さないで、泡になって死んじゃったもん。不幸すぎる」
「…………」

正一は、遠い目になった。
ぶっk(ry……

「……あのお話はね、元は民話で、編集したり外国語訳になった時点で色々なパターンがあるんだ。僕が知っているお話では、キリスト教の要素が強く入っていてね、人魚姫は死んでしまっても、キリスト教的にはハッピーエンドなんだよ」
「何それーーーっ!!!意味分かんないっ!」

ブルーベルは、白蘭から聞いた人魚姫のストーリーを正一に話した。


……人魚姫は海の底深くにある、「海の民の国」の王女様。
とても美しい宮殿に住んでいる、6人の王女たちの末娘です。

王女たちは、ずっと海の中で暮らしていましたが、15歳になったら、海の上の世界を見に行くことが許されます。

15歳になった一番上の姉から順に、次々に海の上で見てきたことを話すので、末娘の人魚姫は興味津々で、はやく15歳になりたいと、その日を心待ちにしていました。

そしてやっと15歳。
人魚姫はやっと海の上に出る許しをもらいました。

ちょうど姫が海上へ上って行ったとき、そこには、一隻の船がおり、その船にはイケメンな王子の誕生日を祝うパーティーをやっていました。

そのイケメン王子に、姫は一目ぼれ。

そしてパーティーが夜更けまで続く中、嵐が起きてきて、船が沈没してしまいます。
王子が溺れているのを人魚姫が助けて、砂浜まで運んでいきました。

人魚姫は隠れて、だれか王子を助けに来てくれるのをじーっと見守ります。
人魚には、「人間に姿を見られてはならない」という決まりがあるからです。

そこへ一人の少女が来てくれて、王子は、自分を助けたのはその少女だと思い込んでしまうのです。

王子が助かったのはいいけど、ハートブレイク人魚姫。


「つづく!…でいい?」
「うん、…まあ、僕の記憶している話と大体合っているよ」


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