01

ふんわりとした黄色い花を摘んで、茎を真ん中から左右に分ける。そして、ほっそりとした手首に結びつけた。

「にゅ。ナニコレ」
「ブレスレットだよ」

正一の答えに、ブルーベルは、むーんと難しい顔をした。
「…何か、腕時計っぽい」
「ごめんね」

ブルーベルは後悔した。
柔らかく、正一が笑ったから。

いっそ、「気に入らないのなら捨てれば?」…とでも、不機嫌な顔をしてくれたなら、喧嘩できるのに。
白蘭は「正チャンの逆ギレって面白いんだよ♪」と言っていたけれども、ブルーベルはそんな正一は知らないのだ。

ただ優しくて、ブルーベルがきついことを言ってもやっても、少し困った顔で笑って「ごめんね」というのだ。

(入江が、わるいわけじゃ、ないのに)

「…入江」
「何だい?」
「たんぽぽ、かわいいから、すき…」
「そう」
「…って、それだけっ?反応薄いっ」
「そんなつもりじゃなかったんだけどな。ブルーベルが気に入ってくれたのなら、僕も嬉しいよ」

にこりと、眼鏡の向こうの緑の瞳が笑う。
ブルーベルは、ふと気付いた。ただ、「そう」と答えただけの正一も、こうして笑っていてくれていたのではないかと。

「にゅ。次からはちゃんと観察する」
「何の事だい?」
「ひみつだよーだ」
「…そう」

正一は、微笑していて穏やかに答えた。
……やはり、そうなのだ。素っ気なく聞こえる返事でも、その瞳は笑っていてくれていた…いつだって、きっと。

「ブレスレットよりも、指輪の方がよかったのかな」
「どうして?」
「色が黄色だからイメージと違うだろうけど、大きいダイヤモンドじゃなきゃダメなんだろう?」
「…………………………………」

ブルーベルは真っ赤になった。
「にゅにゅーーーっ!何で知ってるのよーーーっ!!」
「桔梗から聞いたんだよ」
「うわあああん!!桔梗ってば口が軽いぃぃぃ!!」

100番目に好き、もバレてたし!!

「そ…そのほかに、何か聞いてる…?」

プロポーズとか跪いてロマンチックにとかーーー!!!

「ううん、何も」

ブルーベルは、ホッとした。
子どもの自分に、プロポーズなんて先だと思うのだ。……思っていたいのだ。

ユニは、14歳でγの花嫁になってしまったけれども、いくら法律で許可されているとは言っても、実際にその年齢で結婚する女の子なんてそういないはず。

(ユニは、特別なの。お姫様だから……)

ああ。でも。
雨属性で、人魚みたいに見える匣を使うブルーベルを、白蘭や桔梗は時折“人魚姫”とも呼ぶ。

人魚姫の王子様は、人魚姫を選んではくれなかったのに……

「宝石みたいに、透明な花はないけれど…、白い花なら好きかい?」
「わぁ…!」

森を抜けると、そこは見渡す限りのシロツメクサの野原。
まぁるい可愛らしい花が、柔らかい風に触れている。

なるべく花を踏まないように、気を付けて歩く。
「にゅにゅーっ!、踏んじゃったーーーっ!」
「あまり気にしなくていいよ」
「……入江、今日はざんこく…。いつもは、お花は踏まないようにするのに」
「シロツメクサはね、生命力の強い植物なんだよ。牧草や果樹の下草に使われるくらいだから、踏まれても摘まれても、何度でも強く咲いてくれるんだ」
「…………」
「それに、人に多く踏まれたところの方が、四つ葉のクローバーが出来やすいんだよ」
「そうなの!?」

ブルーベルは、膝を付いて四つ葉のクローバー探ししようと思ったのに、正一はそのまま歩を進めてゆく。
「にゅーっ!勝手に、どこいくのよーっ」

正一は、野原に1本だけ大きな日陰を作っている木までゆくと、その根元に寝転んだ。
「入江、何してるの?」
「同じようにしてみれば分かるよ」

ブルーベルは、正一の隣にころんと寝転んでみた。
……木漏れ日が、

「きれい……」
「うん。宝石じゃないけど、きらきらしてて、いいかなあって思ったんだ」
「…………」

きらきら綺麗なダイヤモンドは、女の子の夢。
でも、宝石じゃなくたって、いいのにな…

(ほしいのは、入江の心で)

(ほしいって思って貰いたいのは)
(ブルーベルの心なんだもん…)

「…?今、何か言ったかい?」
「な、何にも言ってない!」

すき、っていう言葉と同じ。
男のひとから、先に言ってもらいたいんだもの。


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