01-年齢差

 
頬にキスを受けても。

正一は、そのまま幻騎士の腕の中にいた。

このままで居たくて。そして、跳ねる心臓を持て余しながら、離れるタイミングが分からなくて。

次に視線が合うとき、一体どんな顔をすればいいのだろうか?
……というか、元々パッとしない容姿なのに、思いきり泣いてしまって、絶対に変顔だと思う。

「……苦しいですか?申し訳ございません」

少し身じろぎをしたからだろうか。幻騎士の方から腕を解いて、正一はやっと少しは心臓が落ち着いて、でもやっぱり離れるのは寂しいと思った。

……でも。とにかく。今は。

「すみません!!ティッシュ借りてもいいですか!!」
「はい。どうぞ」

箱を受け取って、垂れないように思いきり鼻をチーンとか、もう小学生を通り越して幼稚園児な感じ……!!

「お…思いっきり子供で、ごめんなさいっ!!」
「そんなに子供でしょうか?大人でも、泣きたいときには泣くのですし」
「……でも、幻騎士は泣かないでしょう?」
「オレは男ですから」

さらりと言うから、正一はどきんとした。
……そういうもんなのかな。子供なら、男の子の泣き虫はいると思う。

「幻騎士は…。男のひとで…大人だから?」
「剣士としては、入江殿の年齢では既に一人前と呼ばれておりました。イタリアの法律としては、一応成人に達しています」
「…………」

 は  い ?

正一は、おそるおそる訊いてみた。
「あの…。幻騎士って、実は何歳?」
「実は、というほど隠してもいないのですが」

幻騎士は答えた。
「18歳です」
「…………」

正一に、落雷した。
確かに…10年後の姿を思い浮かべると、そんな感じかも知れない、けど…!!

「ええぇぇ!?4つ…4つしか、違わないの!?っていうか、高校生!?」
「そうですね。イタリアの高校制度でも、19歳まで高校生ですので、通っていればそうだったと思います。尤も、オレは剣士としても術士としても既にマフィアに浸かっておりましたので、高校進学しておりません。中学校も途中までです。確か、ヴァリアーのスクアーロも同じような感じだったと思います」

僕…!4つしか違わない、高校生的なお兄さんに、わんわん泣き付いて甘えてしまった……!!

「ごめんなさいっ!!」
「謝ることはありませんよ。先程も申し上げましたが、オレは入江殿に甘えられるのは好きなのですから」

……す、すすす、すきとか、簡単に言わないで下さいーーー!!

くす、と幻騎士が笑った。
「年齢のことなら、貴女がオレを身近に感じて下さるのならよかったと思いますが……もっとオレを大人に思っていたかったのなら、オレは少しばかり努力しなければなりません」
「……努力?」

小首を傾げた正一に、幻騎士は答えた。
「大人のオレの方が頼りやすい、…と入江殿が思って下さるのなら、オレはもっと大人の男になりたいと思います」
「どうして…?幻騎士は、僕のことは素直なままでいいって言ってくれたのに」
「オレなりに、素直ですよ?オレとしては、これからも入江殿にはオレを頼って欲しいのですし、遠慮をされては痛恨ですから」

優しいヘイゼルの瞳が、微笑した。
「男は、大切な女性には頼られたいものです」
「〜〜〜〜〜っ」
「……?どうかされましたか、入江殿」

正一がぐらぐらしていると、ふと思い付いたように幻騎士が言った。

「ああ、就職の件は、ご心配なく」
「そ…いえば。語学を教えるとか、普通は大学生以上のような」
「身分を詐称するのは、マフィアの常套手段なので無問題です」
「はいぃぃ!?」

無問題…!無問題なんだろうか!?本当に!!(←常識人正一)

「それに、オレは術士でもありますので、どのようにでも誤魔化しは利きますし」
「そういう問題!?」
「はい。そういう問題だと思いますが?……どうしましたか?入江殿」

幻騎士は、ふらふらしている正一の手を取って、甲にそっとくちづけた。

「ですから、いかなる手段を使っても、オレは入江殿の傍に居りますよ」

ちょっとくらいは手段を選んで欲しい…!!と正一は思ったが、思わず、ぷっと吹き出した。

「何だか…抜けてきても、しっかりマフィアなんだね」
「……よかった」
「え…?」

にこりと、幻騎士が微笑した。
「入江殿が笑って下さったので」

……やっぱり。ほっぺたが、熱い。

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