13-年末年始T

 
「お父さん。お母さん」

もう、此処は直球で行くしかないと思う。

「新年のカウントダウンに行きたいです!!」

あと2ヶ月ちょっとで卒業とは言え、女子中学生に深夜の外出は早すぎる。否、高校生でも早いだろう。女子大生になってやっと、親の言うことを聞かなくなり、飲み会を二次会三次会まで行っちゃって、午前様になるのだ。

「……誰と?」

と聞いた母に、正一はこれも直球で行くしかないと思った。初めは「友達と」と誤魔化す路線も考えた。でも、何人で群れていくにしろ、まだ早いでしょと退けられるのだろうし、本当なのかと友人宅に探りを入れられては、嘘がバレて友人に迷惑がかかってしまう。
そういう訳で、正一は直球で言った。

「彼氏とです!!!」
「「「…………………………………」」」←父・母・姉

「ちょおぉっとーーー!!!」
案の定、沈黙を一番手で破ってくれたのは、姉だった。

「あんた、この間<大切なひと>としか言ってなかったじゃない!?嘘ついた訳っ?」
「あの時には、まだ彼氏じゃなかったんだよ!!」
「正一の癖に、生意気ーーーっ!!ムカツクーーー!!!」
「何で姉さんがムカツクんだよ!!姉さんにだって、彼氏いるだろ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・。

……何とも気まずい、沈黙が落ちた。
正一は気付いた。どうやら地雷を踏んだ……

そこで、いつもは正一的には付いていけないノリの母が、案外常識的な事を言った。
「正ちゃん。正ちゃんがお年頃な感じに成長してくれたのはお母さん嬉しいんだけど、流石に彼氏と夜中のお出かけは、あんまり早過ぎると思うのよ?」
「……それは、僕も分かってるんだけど」

正一は、幻騎士の広いマンションを思い浮かべながら、もそもそと言った。
「だって彼…。日本に来てそんなに経ってないから、まだお友達もいないし。僕が行ってあげないと、独りで年越しすることになっちゃうから……」

 は  い ?

「ちょっと正ちゃん!?今、日本に来たとか言った!?」
「は、はいっ、言いました!!」
「外国人!?何処のひとっ?」
「イタリア人ですっ!!」
「ちょっと正一ぃぃぃ!!アンタ、いつの間に、そんなグローバルなことになってんのよ!!」
「な、何だって、いいだろっ!!」

未来で知り合いましたとか、そんな電波な事は言えない!!
しかし、この質問は、学校で友達にも訊かれた。どう答えるのかというのは、いずれ避けられない様な気がする…!!

でも、この問いに答えられないからこそ、他は全部直球で行こう、と正一は覚悟を決めた。

「何歳!?」
「23歳!!」

・・・・・・・・・・・・・・・。

「ええぇーーー!!8歳も年上!?正一あんた、騙されてんじゃないの?」
「彼は誠実な人だよ!!姉さんを振った彼氏と違って!!!」
「何ですってえええ!!」
「正ちゃん、まさかその、23歳の彼と、ふたりっきり!?」
「カウントダウンだから、街の中でもみくちゃだよっ!!」

……本当は、幻騎士のマンションで、まったり年越しそばを食べたいとか、言わない方がいいと思う。……あ。カウントダウンに行きたいとかいう言い訳自体が、直球じゃなかったよ!!

「と…とにかく!!ふたりきりになるのは、帰りに車で送って貰う時くらいだってば!!だから、夜道を独りで歩くような危険はないし!!」←後半部分だけ本当
「正ちゃん。車の中なんて、更に危険よ?男はみんな狼なのよ?」
「だからーーーっ!!彼は、誠実な人だって……」





「……その男は、本当に正一と、年越しをしたいと言ったのか?」





今まで黙っていた父が口を開いたので、何となく女性陣全員が黙りこんだ。
そして、正一も、言葉に詰まった。

(…入江殿。確かに、貴女と年越しを出来るならば、オレには嬉しいことです)
(年末年始は、恋人や友人などと賑やかに過ごす……それは確かにイタリア流で、ジッリョネロに居た頃のオレもそうでした)
(でも、此処は日本で、貴女は日本人でしょう?)

(年末年始は、家族や親族と過ごす、それが自然な事ならば……)

正一は、泣きそうになりながら、口を開いた。
「彼は…。家族と過ごす時間を、大切にした方がいい……、彼の為に、僕が無理をすることはない…って、言った……」

「……そうか」
父は、静かに言った。

「良い青年だ。……彼の言う通りにしなさい」
「…………っ」

正一は、がたんと席を立って、自室へと走った。
「正ちゃん、ご飯途中でしょ!?」
「いらないっ!!」

背中越しに追い掛けて来た母の声に、正一はそう言い捨てると、自室のドアをバタンと乱暴に閉めた。



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