01-おでこに絆創膏

 
友人が、感心してるんだか呆れてるんだか、微妙な口調で呟いた。
「よく続くよね……」
「何とか料理に見えるようになってきたもんね……」

つまり、正一の弁当だ。不器用とはいっても、本来は努力家の正一だ。毎日死ぬ気で自作のお弁当を続け、それなりの形になってきている。
だが、問題は正一がその弁当の為に、朝5時半起きだということだ。それ以前は、もっと時間がかかるので5時起きだった。

「正一……お箸が鼻の穴に入りそうだってば」

連日の睡眠不足で、正一はぐらぐらしていた。もう、食べながら眠っちゃいそうだ。

「うん…早く食べて寝なきゃ……」

正一の睡眠不足を補う場所は、もう学校しか無い。休み時間の殆どを、正一は机に突っ伏して過ごしている。そして実は、授業の最中でさえ、
<○><○>カッ!! …と目を見開いたまま寝ていることもあるらしい。

「勉強にプラスして、睡眠も器用になれたんだね……」
「そのうち、その中に料理も加わるんだよ。正一は真面目だから、恋愛=結婚でさ、絶対ダンナ様への手料理まで死ぬ気で辿り付いちゃうんだよ」

正一が、もぐもぐしていたおかずをブーッと噴射したので、友人たちは全員お弁当の蓋でガードした。

「だ…!だだだ誰が、ダンナ様…!!」
「あんたの彼氏でしょ」

サラッと、友人は鎌をかけてみた。すると、正一は眠気の所為なのか、簡単に引っかかってくれた。

「け…っこんなんて。そんな先のこと…彼には何も言われてないし」

・・・・・・・・・・・・・・・。

「……この間は、<彼>じゃなくて<あのひと>とか呼んでたよね」
「結婚までは言われてなくても、今は彼氏と彼女だって言う線で収まっちゃったと」

がぁん、と正一の寝惚けた頭でも、言っちゃった感に何かをくらった。

「な、何だよ!!からかうなよっ!!」
「別にー。からかってないけど〜」

友人一同がハモった。
「リア充爆発しろ」
「えええ!?何で?応援してくれたんじゃなかったの!?」

わたわたする正一を見て、けらけらと友人たちは笑い出した。
「応援してるよ〜?みんなで乙女服をコーディネートしてあげたじゃん」
「う…うん。ありがとう……」
「そーいえば、あの服って彼氏に可愛いって言って貰ったの?」

(オレの目には、貴女はいつも可愛らしいひとですけれども、今日の装いの貴女は、いつまでも見ていたくなります)

「……うん。口から魂が抜けちゃう感じに、甘〜く褒めて貰っちゃったことは分かった」
「この際、どんだけロマンチックに告られちゃったのか知りたいんだけど」

友人は、ぐらぐらしている正一のほっぺたを、ぺちぺちと叩いた。
「ねーねー。あれだけgdgdしてた癖に、何言われちゃったの?正一が告れる訳ないから、彼氏から言ってくれたんでしょ?」
「…………………………………」

正一の脳内に、幻騎士の部屋のソファの上で囁かれた言葉がよぎった。

(ならば…今お伝えします。入江殿、オレは…)→ほっぺにキス→(貴女を…愛しています)

「わああああ!!!」

また、正一が誤作動したよ……年上彼氏に、どんだけロマンチックに口説かれたんだ。

そこで、休み時間終了の鐘が、キーンコーンカーンコーンと鳴った。
「ちょっとォォォ!!みんなが色々言うから、僕寝られなくなっちゃったじゃないかーーーっ!!」
「別にいーじゃん。正一って、最近目を開けたまんまでも寝られるんでしょ」

斯くして、次の数学の時間、正一は
<○><○>カッ!! …と目を見開いたまま寝ることになった。

大抵は、これで済む。というのは、正一が教師に当てられるのは滅多に無いことだからだ。つまり、才媛・入江正一に回ってくる問題というのは、「クラスの誰も答えられなかった問題」に限られる。
が、その「滅多に無い」が、今日来てしまった。

「入江。問3を解いて板書」

当然、目を開けていても寝ている正一には聞こえていないので、後ろの席の友人が、トントンと正一の肩を叩いた。
(正一!板書だよ板書!!)

そして、目は見開いたまま、正一はぼや〜んと立ち上がり、通路を歩こうとして……そのまま、前のめりにびったーんと転んだ。
……正一やっちゃったぁぁぁ!!と友人一同は焦ったが、流石に正一もこれで目が覚めた。

「あの…。僕は何故、倒れているんでしょうか……?」

……入江正一、記憶喪失!?(←クラス一同&数学教師)

「え…えぇと、問3なんだが」(←教師)
「あ…はい。問3……」

正一は、眼鏡をずらして目をこすりこすり歩を進めると白墨を取り、即興でカツカツと回答を板書した。

「……正解。模範解答だ。皆、ノートに書き写すように」

寝ていても、入学以来テストは不動の1位・入江正一。確かに、授業中寝ていても、何ら問題は無かった。

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「入江殿。その、おでこの絆創膏はどうしたのですか?」
「えっと…。何だか、教室でこけちゃって」←まさか寝ていて転んだとは言えない

幻騎士は、車の信号待ちで助手席の正一を引き寄せると、絆創膏の近くに、そっとキスをした。

「オレとしては、貴女には小さな傷ひとつでも付けたくないんですよ」
「〜〜〜〜〜っ」

……幸せで。
やっぱり、爆発しろと言われても、仕方が無いのかも知れない。

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