01

君は、狡いと思うの。

全部全部、僕の心なんて君の掌の上。
このからださえ、僕自身の意志には従ってくれずに、君の愛撫ひとつで暴かれる雌の本能に狂うばかり。

最強とか孤高とか、そんな僕の肩書きは、君の前では一切無力で無意味なものでしかなかった。
だって僕は、不良の癖に淀みない敬語を礼儀正しく、そして他人行儀に紡ぐことが出来る君から、委員会の仕事の書類を受け取った時、偶然に君と手が触れ合っただけで、この頬は熱を持つ。

あたたかい、大きな手。
すぐに、君との情事を思い出してしまう僕のからだは、悲しいほどに淫らになった。

この頬が火照るのは、僕の不器用な初恋のときめき。
でも、からだが疼くのは、君という男にいいようにされて悦ぶことを知ってしまった、一匹の雌のもの。

「……ありがと。退出していいよ」

僕は、椅子に座るとデスクの上で書類のファイルを開いて、君に一瞥もくれない無表情な顔と声でそう言ったのに。

「恭さん」

仕事中なのに、君は僕を委員長とは呼んでくれない。僕の「退出していいよ」は「退出しろ」という命令と同義だと言うことを、君は知っていて従わなかった。

近付いてくる君の靴音に、僕の手は無駄に書類をめくるだけで、僕の目からはちっとも文章が入って来ないまま、大柄な君の逞しい腕の中にすっぽりと包み込まれる。

「…恭さん」

そんな風に、耳元で僕の名前を囁くだなんて、反則だと思うの。
僕を抱き寄せる君の手を感じながら、僕の手はトンファーを取り出せなかった。その時点で僕の負けなのに。

負けを認めた僕に、君はとどめを刺したいの?

低い、少し甘みを含んだ君の声は、まるで大人の男の人みたい。
そんな声で名前を呼ばれて、微かに耳にかかった君の吐息に、僕はキュッと目を瞑ったのに、体はビクンと誘うように反応する。

「恭さん…」

どうして、何度も僕の名前を呼ぶの?
僕が、黙ったまま返事をしないのが、気に入らないの?

する必要も、無いのに。
僕は、抵抗ひとつ出来ずに、君に捕らわれているのに。

こうして、僕の許可も無く、礼儀正しいけど不良らしく強引な君に、唇を奪われても。
君の大きなあたたかい手が、勝手に僕のセーラー服の内側に入り込んできても。

角度を変えて、何度も繰り返すディープキス。
かつての僕は、キスなんて唇を合わせるんだと思うだけでドキドキして、深いくちづけは外国映画の恋人達だけのものだと思っていたのに。

君は、キスが上手。
尤も、僕は君しか知らないのだから、比較の対象はいないのだけれど。でも、長い間僕の口内を味わい尽くすような君のキスに、僕はいつもすっかり蕩けて、身も心もフワフワと、すっかり頼りない小娘になる。

(あ…)

唇を封じられたままだから、背中のホックを慣れた仕種でぷちんと外されても、僕の声はくぐもるだけ。

「あ…ぁ、や…っ」

本当は、イヤじゃない。イヤなのは、恥ずかしいのは、淫らに堕ちた僕自身。
でも、そんな僕は、君の大きくてあったかくて、巧みな手が好き。

戦闘術を不断の努力で高めてきた僕のからだは、余分な脂肪は削ぎ落とされた、細いばかりで女らしいまろやかさも一緒にどこかに落として来てしまったはずなのに。
どうしてか、体全体のバランスとしては不格好でいやらしいほどに、乳房だけは大きく育った。

見かけだけじゃなくて、感度もいやらしいのだと、知った時の僕のショックは大きかった。

むにむに、タプタプと揉まれ揺すられれば、僕は羞恥を上回る快感と期待とに、吐息が乱れる。
気持ちが良くて、なのに焦れて、どうしようのなくて、君の名を呼ぶ。

「哲…、ぁ…っ、て、つ……」
「へい。オレは此処に居ます」

……狡い、狡い、狡い。
君は、もう僕の望みを知っている癖に。
僕の口から言わせたがる。

知ってる。君は、僕の乳房を弄ぶ時には、好きなだけ揉んで手触りを楽しむ癖に、僕の乳首だけは触れないように、わざと避けているの。
乳輪だけくるりと指で撫でてなぞって、僕のからだが期待に震えても、僕がおねだりをするまでは決して乳首を摘んではくれない。

僕のそこは、触れられないままツンと硬く勃起して、まるで一層の快楽に誘うスイッチのように自己主張してる。
本当にスイッチボタンのように、指で押し潰されても、つまみのようにキュッと捩られても、僕は感じて甘ったるい声を放つのだと、君は知っているのに。

「もっと…、僕が気持ち良くなるトコ、触って……」

僕は、いつものように恥ずかしいおねだりをした。
学校の一室で、からだを男に与えて、こんな事を言うなんて、誰が風紀委員長?誰が良家のお嬢様?

「…ひぁ、あぁんっ……ああ……!!」

本当にスイッチ・オンするように、双の乳首を一度に圧迫されて、僕は歓喜に打ち震えた。

もう戻れないと、崩れ去りそうな自我の隅っこで、そんな事を思う。
でも、スイッチの入った雌の体は貪欲。

君の手で、唇で、全身の肌という肌に触れて貰って、君の熱くて太くて硬い雄をあそこに挿れて貰って、貫き尽くされるまで、僕は止まることが出来ないの。

「恭さん、…そんなに、気持ちがいいですか?」

知ってる癖に。君は狡い、狡い、狡い……

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